生まれて初めて見る、発光する子どもを前に思わず言葉を無くしても無理はない。
普段滅多に柔和な表情を崩さない半兵衛であったがこれには流石に、と言ったところか。


布団一枚も敷かれていない、畳の上に転がされた幼子を驚愕の眼差しで見下ろす。光る子どもなど生まれてこの方見たことがない。

軍師という職に就き、一般兵や農民なんかよりは変わった体験をするほうではあるだろう。
けれどそれはあくまで戦や政関係。こんな物の怪染みたモノ…。初めて見聞きするものに戸惑うのは当然であった。


「…半兵衛様?」

「っ! あぁ、すまない少し驚いてしまってね。この子…が星が落ちたと思われる場所にいたと?」

「はい。衝突により抉れた土、折れた木々… 状況からしてコレが落下物と推測致しました」

「うん…」


考えるようにして顎に手を当て未だ目を覚ますことなく眠りこける幼子を見、チラリと一瞬三成を見る。
こう言ってしまっては何だが、三成が不振人物に属する者を連れてくるとは思わなかった。
彼の性格や気性からして斬って捨ててくると踏んでいたのだが。何者かが絡んでいればきっと今回も、と。


真面目が過ぎる三成のことだ、調査に行ったのに原因とも取れる物体を亡くして報告に詰まりたくなかったというところか。容易に想像がついて半兵衛は小さく笑った。


「如何なさいましたか?」

「いや、何でもないよ。…そうだね、この子から色々聞かない限り真相究明は難しい、かな」

「起こしますか」

「うん。三成くん、刀で殴って起こさないようにね」

「…はっ」


行動を予期してかすぐに言葉を掛ける。
半兵衛の言葉通り刀で文字通り叩き起こすつもりだったのかグッと刀を握り締めた手から力を抜く。


石田三成という男は忠誠を誓っている秀吉や上司の半兵衛、そして唯一の友人・大谷吉継以外にはこうして時折躊躇いも罪悪感もなく人に暴力を振るう節があった。
それが悪いかと聞かれたらやはり悪いのだろうが正すよう言いつける気もなかった。それが“彼”だからだ。

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