面妖、奇怪。
その言葉がこれほどにまでしっくりとくる様もそうそうあるまい。薄膜の中で猫のように丸まっている幼子はこんな状況だというのにスヤスヤと眠っている。それが妖しさを助長しているような気がした。


人には興味ないと関係ないと怯えることもないと自分を、脅かすことも出来ない矮小な存在だと。そう言っているような寝姿だった。

自分の思い込みかもしれないが、そう考えるとこの幼子がとても危険なモノに感じた。


今すぐに斬ってしまおうか。逡巡の後、小さく刀を鳴らすだけに留まる。斬って捨てるにしても調べてからでもいいだろう。まずはこの幼子を起こすべきか。


そう考え、触れられるかは分からないが幼子を包む薄膜にそっと手を伸ばしてみればパチンと小さな音を立てて弾けて消えた。支えを失った幼子は当然のように地面へと落ち。

あぁこれで起きるかと思ったが存外神経が図太いのか尚も幼子はスヤスヤと眠ったまま。そして光を放ち続ける。
起きないことに苛立ちはしたが、あの膜自体が光っていたワケではないと知れた。一つ知れたならまぁいいだろうと鼻を鳴らして下を見る。

固い地面の上。
決して寝心地が良いとは言えないそこで気持ち良さそうに眠る摩訶不思議な子供。腰を下ろし不躾なまでにジロジロと眺め観察する。


月のような色合いの髪に睫毛。着ている着物は真白く、目で確認する限りでは縫い目がないように見える。篭手を外し、少しばかり土で汚れてしまったそれにそっと触れてみればサラサラ、つやつやとした手触り。光沢があることからこれが絹なのだと気付く。そんな中々手に入れられない高級品、どうして子供が着ているんだ。

見れば見るほど、触れば触るほど、調べれば調べるほど、疑念が疑問を呼ぶ。けれど答えが出ない。
これは何なのか、どうして光っているのか、降ってきたのはコレなのか。


あまり時間は掛けられない。あんな大きなものが降ってきたんだ、きっと他国も感づき探るようにと忍を送り込んで来る頃だろう。

しかもご丁寧にこんなにも煌々と輝いているのだ。見つけやすいにも程がある。


ギリ、と歯を噛みしめ刀を地面に突き立てる。次いで白と藤色を合わせた陣羽織を脱ぎ、多少雑ではあるがそれで子をぐるぐると包む。
光が漏れていないのを確認すると、最早何か分からなくなった布の塊を脇に抱えるようにして担いだ。

持ち帰るという選択が吉か凶かはまだ分からない。

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