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その中々に印象的な状態を薄いものとしているのは他でもない。この光を放つ源だ。
半円形状に凹んだ地面、その中にある光源。
目を凝らさなくても分かる。光を放っているのは人だと。それもまだ幼い子ども。光によって染められているのか、それとも元からなのか光と同じ髪色をし見たこともない着物を纏っていた。
南蛮のものだろうか。
それだけに過ぎず、あろうことかその幼子は薄いしゃぼん玉のような膜に覆われ宙に浮いており。
言い伝えや怪談、所謂迷信じみた話を深く信じ込み畏怖する時世の人間にはその光景が酷く恐ろしく神々しく見えた。
恐れおののく兵士たちをそのままに小隊長を務める青年は恐れも戸惑いもなく颯爽と馬から降りる。
それにより一層兵士たちがどよめいた。
「三成様!」
「お止め下さい危のうございます!」
「黙れ。近付かなくては調査も何も出来んだろう」
「それはそうでございますが…っ」
小隊長を務める青年は三成と呼ばれた。声を張り上げ心配の意を表すも誰一人として追いかけるどころか、馬から降りすらしない。
反吐が出る、と三成は舌打ちを一つした。
そうやって勝手に“心配しています”とわざとらしく表現していればいい。媚びへつらったところで自分はそんなものに目を向け、汲み取ってやることなどしない。能力の無い者が出世する必要などないのだ。
未だ恐れおののき何とも言えない空気を醸し出す兵たちを余所に、ずんずんと光源である幼子の元に近付いていく。
飛び散った土や木片を踏み潰し、随分と凹んでしまった地面の間際へと立てばより光を強く感じる。
けれど目を潰すような刺激はなく、どこか柔らかく思えた。そしてどこか暖かい。
すぅ、と目を細めると滑るようにして窪みの中心へと降りる。その挙動にまた兵士がざわつくがどうでもいい。
今は何より調査の命を下された半兵衛様のご期待に応えるだけだと。いつでも刀が抜けるようにして一歩、また一歩と幼子に近付く。
「(…面妖な)」
騒々しい兵たちではないが、目前の様子に確かにそう思う。
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