#スカイクロラパロ





//もう、いつからカゲヤマと飛んでいるか、そんなことは忘れてしまった。必要がないから忘れるのだろう。ならば思い出す必要だって、きっとないのだろう。

ぼくたちは、戦闘機のパイロットにしては長く一緒にいる方だと思う。なんでかって、パイロットはすぐに堕とされて死んでしまうからだ。
そう考えればすぐにわかることだけれど、ぼくもカゲヤマも、わりあい腕の良いほうなのだと思う。自分についてはあまりよくわからない。ただぼくは生き残って、死んだ奴より長く飛んでいる。それだけのことだ。

けれど、まぁ、カゲヤマは、ひょっとすると天才というやつなのかもしれない。
誰よりも滑らかに動き、誰よりも速く飛び、そして誰よりも多く敵を堕とした。そして自分は、機体に傷ひとつ付けずに帰還するのだ。

「……それがさ、憶えてねんだよ、空にいるあいだのこと。」
尖らせた唇とうつむいて、カゲヤマがそう言ったのはいつだったか。ぼくはそれを聴いて恐ろしく、戦慄したのだ。
憶えていないというのは、集中しすぎているからではないのか。目の前の空域に目を見ひらき、どうせ呼吸も忘れかけているのだろ?

パイロット同士なら、地上で、よくわかりもしない自分のことを無理にしゃべるよりは、一度でいいから一緒に飛べばいい。そしてぼくは、何度もカゲヤマと飛んだのだ。
カゲヤマが空で獣に変身することなんて、とっくに知っている。

飢えて、やせた土壌に嫌気がさして空へあがる黒い獣。それが空でのカゲヤマだった。


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