/葉月




僕の手は冷たい。

と言っても、この「冷たい」というのはあくまでも影山と比較したときの体感温度だから、別に僕の手が異常に冷えているわけではない、と思う。ここまでは僕の見解。けれど、影山いわく、自分のほうがよっぽどあたたかいから、僕の手は冷たいということになるんだとか。なんだその謎理論は。「きみってほんとう斜め上の考え方するよね」、しかも影山本人は至ってまじめに言っているらしいから余計にたちが悪い。

「おまえ、冷え性?」
「さあ?知らない」
「…毛布出すか」
「いやいや、誰も寒いとか言ってないデショ?バカじゃないの?しかもこの真夏に毛布って、きみは僕を熱中症にさせたいわけ?」

矢継ぎ早にそう言うと、影山が口をもごもごさせて、唇を固くむすんだ。なんでそこで黙るの、普段ならうるさいくらい言い返してくるくせに。怒るわけでも悲しむわけでもなく、よくわからないいろを乗せた表情の影山が僕を見て唇を震わせた。「だって」、なんでそんな目で見るの、ねえ、やめてよ。

「おまえの手が、つめたい」

これ以上僕から熱を奪わないで。



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テーマ「人外ファンタジー」
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