( 久木/phantom//くだらない同居パロ )
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「あ〜〜〜〜だめだ死ぬ。あっちぃ…」
「いくら疲れたとはいえ真夏に湯船で寝るからデショ。っていうか下手したらマジで死んでるからね王様。ねぇやっぱり馬鹿なの?湯船で寝ちゃいけませんって教わらなかった?それとも教わった上で忘れたの?お湯熱いのによく寝れたね?そりゃ暑くもなるよね?馬鹿なの?」
正直クソ暑い。
普段より長い気がする月島の説教さえ、いまの暑さを煽っているように思う(こいつ今バカって何回言った?)。たぶん、たぶん心配されているのだと思うから黙ってはいるけれど。それからこいつの王様呼びはただの嫌がらせじゃないってことにも気づいたので黙る。不安ならそう言えばいいのに。こいつも大概不器用なのか。
それにしても相変わらず腹立つ言い方。こいつは言い方で人生を損していると思う。まじめに。それと暑い。
お湯に温められて巡る血が、おれの体温をどんどん上げていく。とうとう床に突っ伏したおれを見下ろして、月島は心の底からあきれたふうにため息をついた。腹立つほんと。暑いんだよ。
クーラーの風に晒されていたフローリングは、おれに必要なつめたさを持っていた。心地がよくて、フローリングに頬を押しつける。月島はそんなおれを足蹴にせんばかりの勢いでまたぎ、そのまま向こうへ行った。
おれの頬にくっついていたフローリングがあっという間にぬるくなる。あーークソ、暑い。いっそ湯冷めしたい。
……と、横たわったおれの鼻先に、なにかひどく冷たいものが当てられた。
「はい。アイス。暑いんでしょ?」
月島が無表情のまま屈んで、おれに棒アイスを差し出していた。表情が固まる。
なんだ。普段は頼んだって自分で取りに行けば?とか言ってくるのになんだ、おい、「どうした月島」
「ハァ?!暑い暑い言ってるから持ってきてあげたんだけど?そーですか庶民には礼もいらないってことですか、ねぇ溶けるから早く取ってくんない王様。」
一気に言いたいことをまくし立てた月島は、あらためてアイスをずいと突き出した。やや面食らいながら受け取って、ひとくち齧る。今日はご機嫌ななめなんだろうか。
「サンキュー月島」
「はいはい」
月島は礼を聞くなりさっさとおれに背を向けて、自分の部屋へ戻った。この前からずっと読んでいる本の続きを読みたいんだろう。きっとヘッドホンを持って戻ってくるはずだ。
そうだ月島もアイス食うかな。気づいて覗いた冷凍庫に、アイスはなかった。おれが持っているので最後だったらしい。
月島相手にひとくちやるよと言っても、結果は目に見えている。日向や山口ならまだしも、あの月島が齧りかけのアイスを食うわけがない。
仕方ないからこんどコンビニでケーキ買ってってやろう。一番安いやつ。
考えていると廊下の扉ががちゃりと開いて、ヘッドホンと本を持った月島が戻ってきた。予想通り。
おれは二人分の飲み物を用意するために、台所へ向かった。