同居パロ/ひさぎ/



ごう、とひときわ高くひびいた風が、ばたばたと雨音を騒がせながら窓に叩きつけられる。初めのうちは無視していたそれがあまりにも騒ぐから、僕は思わず読んでいた文庫本から目をはなした。

ウォークマンの充電が切れて、しかたなく音楽なしで読書をしようと思ったら、これだ。
どうしてこう、どいつもこいつも静かにしていられないのか。

思わず息を吐きながら窓の外を見ると、電信柱からにょきにょき生えた電線が、からまるんじゃないかと思うくらいに踊り狂っていた。そしてその電線の手前、狭いベランダにぼーっと突っ立っているばかがひとり。

僕は立ち上がって、窓をわずかにひらく。
「ちょっと、王様。いい加減ぬれるよ」

開けたすきまから腕をのばして、惚けた顔で空を見つめるその肩をひく。にじむようにぬるい体温が指に染みて沈む。

「……おう、そうだな…」

どこか浮ついたままの声が僕へ向く。
どこか浮ついたままの眼が僕を射る。

瞬間。断裂。雨音は消える。
影山のぎんいろの眼が、テレビで見た稲光とダブる。短く乾いた、きびしい音が爆ぜる。ような錯覚。
影山の目線が僕の脳天につき刺さる。飛び散る僕の鮮血。
一瞬の残光。

「……オイ、月島、」
「………っあ、うん。ほら早く入って」
床まで濡れちゃうでしょ、僕は嘘をつく。
おとなしく部屋に戻った影山の眼が、それでもまだ名残惜しそうに曇天を射る。いつもと違う空をはげしく警戒するように、あるいは執拗に嬲るように、観察する。
夏の嵐は、影山の琴線に触れたらしかった。
なんてことしてくれるんだ、暗い空を恨めしく思いながら見晴るかす。おまえのせいでいころされるところだった。ばかなんじゃないのか。


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