伝わらない感情【土銀】
万事屋の事が気になりだしたのはいつ頃だろうか。
アイツに会った時…そう、建設現場の仕事をしてるアイツに勝負を挑んだ時か…?
俺は呆気なく刀を折られ、屈辱的な負け試合になった。
…もしかしたら……その時から俺は『坂田銀時』という男が気になって仕方なくなってしまったのかもしれない。
これが『好き』という感情なのか……?
その男が今俺の隣に座っている。
まぁ、ここは飲み屋だからたまたま隣に座る事はあるだろう。
「土方、何ぼーっと俺を見てるわけ?金なら貸さねぇよ。」
「馬鹿か、万年金欠のテメーに金を借りるようになったら俺はもう終わりだ。」
「何だそれ!ひでーなぁ…。」
たわいもない会話。
銀時はつまらないといった表情で酒をチビチビ飲んでいる。
俺より前に来ていたため、銀時の頬は酒によって紅潮している。
それが妙に色っぽく見えてしまう俺は、もう末期かもしれない。
「何でさぁ、土方って女作らねぇのー?モテんだろー?」
「…別に…。必要ないからな。」
「いやー、モテる男は違うよなー。俺にその要らない女を回せよー!」
「何言ってんだか……。そういう万事屋は好きな奴いるのかよ。」
「……えっ?何言ってんのー?いねーよ。」
微かに見せる動揺
目が泳いでいるからすぐにわかった。
「嘘バレバレなんだよ。……んで?その女はどんな奴なんだ?」
「あれー?今日はやけに口数が多いんじゃねー?」
気になって当然だ。
いつも自分のことを明かさない銀時だから、酔ってるのをいいことに聞いてやろうという戦法だ。
「うーん…そいつはスッゲーモテるんだ。俺がいくら気になってても手が届かない感じ。」
「上玉だなぁ、そりゃ。んじゃ相手はその気ない感じか。」
その言葉を聞いて何故かホッとしてしまう自分がいた。
「そーだな…。それに、想い人がいるな…。」
「あー…んじゃ確実にないな。」
「…そーだな。」
急にテンションが下がるもんだから驚いた。
聞いてはいけない質問をしてしまった気がする。
「…あ…じゃ、俺帰るから。あんまり飲み過ぎんなよ。」
俺は居心地悪くなって飲み屋を出ようと席を立った。
その時、温かい手が俺の手首を掴んだ。
「…銀っ「なんか…ムカツクんですけど…。」
言葉は怒っているように感じるが、声には刺がない。
「…初めて会った時から……気になってたかもしんねー……テメーに。」
…何を言われているのか瞬時に理解出来なかった。
俺がポカンとしていると、銀時は俺をまっすぐ見据えた。
「…土方、アンタが好きかも…。」
「好き?」
「…でもよー、どこでもテメーはモテモテで俺には無いものたくさん持ってて、いつも余裕な感じでさ…。…グスッ…」
返す言葉が見つからない俺に対して、泣き始めた銀時。
「…俺さ、ろくな人生歩んでねぇからテメーが羨ましくって…。いつも普通に会話してぇと思っても、つい喧嘩口調になっちまって……」
「お前、そんな事考えてたのか…。」
「…土方は好きな奴いないんだろ…?必要ないって言ってたじゃねーか……グスッ…」
「…そんなに泣くな…」
あんまりひどく泣くもんだから周りがコチラを見てくる。
ここはひとまず場所を変えるべきだ、と思った俺は泣きじゃくる銀時を連れて外に出た。
冬の外気はとても冷たい。
いくら酒を飲んでいたからといっても、その酔いは寒さですぐに覚めてしまう。
「…じかたぁ…寒ぃ…」
俺も寒いんですけど!…と思いつつも、何だかいたたまれなくなって、上着を一枚脱ぐと銀時に掛けてやった。
このまま行く宛てもなくさまよっていたら本当に凍死しそうだったので、ひとまず万事屋に行くことにした。
「銀ちゃん…どうしたアルか!マヨ!銀ちゃんに何したアルか!!」
「まぁまぁ…神楽ちゃん…。僕たちしばらくどこかに行こうか。」
「嫌アル!銀ちゃんが心配ネ!今までこんなに銀ちゃんが泣いてた事はなかったネ!」
「ほら!銀さんは大丈夫だから!!それじゃあ姉上の所にでも行ってみようか!」
そういいながらチャイナの腕を引っ張り出ていく新八君。
「悪いな……」
「…銀さんを…泣かせないでくださいよ…土方さん…。」
すれ違いざま、そんな事を言われてしまったもんだから思わず苦笑いしてしまった。
ソファーに座らせると鳴咽も治まってきたのか、幾分見れる顔になった。
「…まさか万事屋が俺をそんなふうに思ってるとは知らなかったから…。」
「……。どうなんだよ…。土方はそれについて何かないのかよ…グスッ…」
「…もう…泣くなよ。ほら、涙拭けって。」
そう言いハンカチを手渡すと、手でパシッと弾かれてしまった。
「…に……そんなに優しくするなよ…。土方は俺の事なんてどうも思ってねぇんだろ…。それなら…そんなに優しくすんなよ……」
「俺は!!!…俺も…万事屋が好きだ…!」
「…土方…」
我ながららしくない台詞だった。
でも、はっきり言わないと何も伝わらないような気がしたから……
「…好きだ…。」
「…でも土方はミツバさんが…」
「死人にいつまでも好きでいるわけにはいかない。…それに、アイツはいつまでも俺の心の中にいるから大丈夫だ。」
「…でも…俺、男だから気持ち悪いとか言わねーの?」
「性別なんて関係ねぇよ。好きなものを好きと言って何が悪い。」
「…じかたっ!!!」
急に飛び付いた銀時。
俺の胸に顔を埋めたまま、『ありがとう』と言ったのが聞こえた。
そのまま俺たちは唇を重ねるだけのキスをした。
それだけでも銀時の温もりを感じるようで、俺には大満足だった。
これが『好き』というものなのだろう。
大切な人だと感じるから『護りたい』と思うのだと思った。
言葉は口に出さなきゃ伝わらない。
これは銀時が一握りの勇気を振り絞って俺に言ってくれたからある現実だ。
「銀時…俺さ……………」
end
〜一言〜
なにこれ…。
書いてて情けなくなってきました。
うわー…恥ずかしい(//△//)
今回は二人に告白がさせたくて書きました。
どこまでも一生懸命な銀ちゃんが大好きです。
さぁ、幸せになるがいいさ。←
お読みいただき、ありがとうございました
2009.01.08
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