A


Side→Keisuke



俺が家の中に入るなり、アキラは俺の顔を見て首を傾げた。


「なんか…」

「どうした」

「…いや、なんとなくいつものシキと雰囲気が違うなぁ…と…。いや、気のせいだよな。」


アキラの勘は鋭かった。
でもアキラがこの事態に気づくわけがない。
今はとにかく何としてでもシキになりすまさなければ……


「…どうしたんだよ、シキ。昨日朝食作ってくれるって言ってただろ。早く頼む」

「あ、あぁ…。」


あのシキがそんな事を言うのは意外だった。
俺の中であの人は何でもアキラにやらせていると思っていたから驚いてしまった。


「な、何が食べたいんだ?」

「…いつものやつ。」



(いつものやつってなんだよ…!!)



いつものやつ…そういえばいつもパンを焼いていた気がしたけど…




適当に俺は食パンを焼き、卵焼きとサラダを作った。
…『いつものやつ』というのがこれでなければ俺はバレる危険性がある…。




「んじゃ、いただきます………」


数回噛んだところでアキラの口が止まった。
そして俺を見る。…やっぱりバレてしまったのか……


「なんか…違う。」

「いつものやつと言ってもいい加減飽きるだろ?たまには違う味も食べたほうがいい。」


…我ながらナイス言い訳だと思った。
アキラは「確かに。」と言うと再び食べ始めた。



食べているとき、アキラは何も言わない。
美味しいのだろうか?そればかりが気になって仕方なかった。
俺がさりげなく聞くとアキラは首を縦に振った。


「…いつもより美味しいかも…。」

「ホント!?」


ハッと慌てて口を押さえる。
シキはこんなにハイテンションにはならない。
アキラは急に怪訝な顔をして俺を見た。

「…どうしたんだよ…今日のシキはおかしいぞ。」

「い、いや、気のせいだろう。いつもどおりだ。」

「…まぁ…いいけど。」



このときばかりはアキラの執着のなさに感謝したのだった………





それから数分後、朝食も食べ終わり片付けを始めた。
ふと俺はアキラを見た。アキラの口の端に卵焼きに付けたケチャップが付いている。本人は全く気づいていないようだ。

「アキラ、こっちを向け。」

「…ん?こうか?…っ!!」


俺がケチャップを指で取り舐めるとアキラは顔を真っ赤にさせた。

「…やめろよ…口で言えば済む話だろ…」

決して嫌がっているわけではなさそうだ。ただ、単純に恥ずかしいのだろう。アキラは俯いた。


余程恥ずかしかったのだろうか、アキラはの動作が遅くなっていた。
俺は少々強引ではあったがアキラに早く準備をするように促した。

ちなみに、家に入る前シキが「今日は俺は仕事がない」と言っていたので俺は比較的マイペースに食器洗いをしていた。



「準備できたか?」

「あぁ。大体は。」

「本当は一日中お前と一緒に居たいが…仕方ないな。…今日は早く帰って来い。」

「…わかった。早く帰る…から…その…夕飯は一緒に食べよう…」


(…な、なんて可愛いこと言っているんだアキラ!!こんなの…反則だろ…!)


思わず鼻血が出そうになり慌てて上を向く。
可愛いアキラを毎日見ているシキをこんなに羨ましいと思った日はないくらいだった。

アキラは出るために玄関で靴を履く。


「…行ってくるから。」

「あぁ、気をつけてな。」

「……?『いつもの』は?」


『いつもの』とはなんだろう、流石にリビングは見れたとしても玄関での行動までは見たことがなかったのでさっぱりだった。


「『いつもの』とは何だ?」

「…っ…」



アキラはシキがわざと口に出して言うように誘導しているのだと思い口ごもっている。


それに…どうして顔が赤くなるのかがわからない。
アキラを虐めるつもりは全くないが、本当に分からなかった。

俺が黙っているとアキラが急に俺のほうを向き少し背伸びをしたかと思うと、頬を両手で掴み軽く口付けてきた。


「…馬鹿っ……行ってくる…」


アキラは走るようにして家を出て行った。

俺は今起きた出来事が信じられなくて固まってしまった。


(いつもこんなことしてんのか…)


ドキドキしていまい、俺は思わずヘナヘナとその場にしゃがみこんでしまった…。







アキラが外に出るとケイスケが庭でしゃがみ込んでいた。


「…ケイスケ、何してるんだ…?」


ケイスケ(中身シキ)が覗きをしていたのは言うまでもない。
あまりにショックで何もいえなかった。


「…ケイスケ…?」

「…早く行けよおォォオ!!!」

「!!!」


いつもとは違うケイスケの様子に驚いたアキラは不思議なものでも見るかのような目でケイスケを見ると走っていった。




アキラの姿が見えなくなり、ケイスケ(中身シキ)はズカズカと家に入り、しゃがみこみ放心状態に陥っていたシキ(中身ケイスケ)の胸ぐらを掴み恐ろしい形相で睨みつけた。


「貴様、死にたいのか?」

「ちょ、ちょっと待って!別に俺からしようなんて言ってません!!…というか…あなた達、朝っぱらから俺の知らないところでこんな甘いことしてたんですか!?」

「貴様に迷惑かけてないだろう。…違うか?」

「……。」


言われれば確かにそうだ。


「…なんか…」

「何だ」

「あのアキラがあなたなんかを好きになるとは思ってなかったから…結婚してるとは言え、もっと浅い関係なのかなぁ…と思ってました…。」

「…俺は俺なりにアイツを大事にしているつもりだ。」


シキが真面目に答えたので、ビックリしてしまった。



「そういえば、」

「…なんですか?」

思い出したように急にシキが話し始めた。


「貴様が作った朝食の卵焼き、アレ、何を入れて作った…………」






シキが真剣に聞いてきたので俺は思わず吹き出してしまった。
それに腹を立てたシキが俺のことを殴ったのは言うまでもない………







To be continued...



はい!まさかのシキとケイスケ入れ替わり話ですよ皆様!!
キャラの崩壊具合が既にカオス(笑)
書いてて想像しながら笑ってました!!
だって…だってシキのツラで『シュン』ですよ!!
ケイスケの姿で『ぶっ殺す!』ですよ!!
や、ヤバイ…かなりツボにきてます!!

では、多分続くと思われますので、次回をお楽しみに!!



2009.07.24




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