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一足早く工場に着いたアキラは、工場長に声をかけられた。
「おっ、アキラ。今日は早いな。」
「…おはようございます。」
「…あっれ?ケイスケはどうしたんだ?いつも一緒に出勤してくるのに…珍しいな。」
「……。」
「…アキラ?」
「っはい!…あぁ、ケイスケとは今日は別で来たんです。」
「…そうか。んじゃ、その分早く今日は帰っていいからな。」
アキラの表情を見て何かを察した工場長はアキラにそう言うと奥に行った。
アキラ自身、自分の発言は大人気なかったと思っている。
(…ケイスケがわかってくれなきゃ意味がないんだ。)
自分がケイスケに怒っている態度を見せれば、少しは反省してもらえるかと思ったのだ。
それから暫くして、ケイスケが出勤してきた。
アキラはケイスケを一瞬見たが、すぐに視線を逸らし、自分の仕事をし始めた。
今日は何かが違う、と工場の仲間が見ていたが、二人が醸し出す空気に誰も足を踏み入れることができなかった。
昼休みになり、ケイスケはアキラの元に向かった。
しかし、そこではアキラが他の仲間と楽しそうに話しており、声をかけることができなかった。
遠くでアキラを見ていたケイスケは段々不安になってきた。
(アキラ…俺のこと嫌いになっちゃったのかな…。もし、今日家に帰ってアキラが居なかったらどうしよう…)
アキラが居なくなる=『死ね』と言われているのと同じことであるケイスケは、更に不安になる。
アキラもケイスケが近くにいることに気づいてはいたが、こちらから声をかけるようなことはしなかった。
甘やかせてはいけない
自分は怒っているんだ…
そう自分に言い聞かせ、ケイスケをチラッと見るが、無視をしたのだった………
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