転校生3
高杉が来て一週間が経った。初めは全てのものを拒絶してきた彼であったが、この頃少しずつ話すようになってきた。
確かに見た目は怖いが顔立ちは非常によく、女子にモテた。
だが、別にそれを喜ぶわけでもなく、常に平然とした表情を見せている。
ある日、高杉に興味深々の沖田は彼に声をかけた。
「なぁ、高杉。お前って何かバイトしてんのかィ?」
「してないけど。」
「へぇー。てっきり何かやってるのかと思ってたんだけどなァー。」
「俺は部活だけで十分だ。」
そう、高杉はギター部に所属している。
腕前のほうはわからないが、河上万斉と一緒にやっているのは確かなようだった。
全てが謎めいている高杉をどのように万斉が勧誘したのかがとても気になる沖田だったが、敢えて触れないことにした。
*****
校舎裏側の小さなプレハブ小屋、そこにギター部の部室はある。
「高杉、今日は遅かったでござるな。」
「沖田に捕まってな。…あれ?そこで寝てるのって……」
「あぁ、コイツはお前が来る前からちょくちょく此処に来てはゴロゴロしていくのでござる。」
「銀八っ……」
そう、ギター部の部室に来てはゴロゴロしていく男は銀八であった。
「何でまたコイツは此処に来てるんだよ。」
「何でって…銀八はギター部の顧問だからでござる。」
「楽器とか出来るのかよ!」
「…出来ないが、ノリはいい。」
「……いらないと思うぜ、この顧問…。」
ガサッ……
「あれ?……高杉じゃねぇか。お前ギター部に入ったのかぁ。」
ムクッと起きた銀八が寝ぼけ眼で高杉を見た。
「…そうだけど。」
「そういやお前、自宅の住所が書いてなかったぞ。どこに住んでんだ?」
「…えっ…?ココだけど。」
ビックリして目を大きくする銀八。
「はっ?じゃあ一週間ずっとココを住まいとしてきたのか!?」
「悪いかよ!俺は身内が誰も引き取ってくれなかったから住むところがねぇんだよ!…それに、別にいいだろ!ココなら水道も台所も風呂もあるんだから!」
「いや、俺が言いたいのはそこじゃなくてよォ……俺もココに住んでるんだけど!」
「マジかよ!じゃあ何で一週間も俺はココで寝泊まりしてたのにお前と遭遇しなかったんだよ!」
高杉…焦る焦る…
「…まぁ…俺にも色々と理由が「毎晩どこかで酔い潰れて寝ているからでござる。だから俺は毎晩銀八を担いで夜中にココまで寝かせに来ている…しかも、銀八はココを住居にしている事がバレたら学校を辞めざるを得なくなるから朝早くに職員室に行くからお前と出くわす事はない。」
「…万斉…お前は銀八の執事か何かか!?どこまで保護者なんだよ!」
万斉の意外な一面を知った高杉は少々うろたえたのであった……
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