冷たいキスでいいから



敵に見つかる
逃げる
戦う………

俺は何をしているんだろう…
あの時から、シキはわかっていたんだ。自分がこうなることを……

だから俺を突き放した


今、こうして光を失った赤い瞳は何も映さない。
白を通り越し青白い肌を見ていると思ってしまう。



こうなる前に俺は何もしてやれなかった…



ただ後悔だけが自分の心に深く突き刺さる。


今日も空き家を使い、疲れを癒す。
車椅子に座り、ただ一点を見ているその瞳が俺を映すことはない。

そんなことはわかってる…でも…


「シキ……」

名前を呼んでそっと頬に触れる。
でもシキは返事をすることも振り向くこともしない。

以前のような俺を所有物だと言い、散々屈辱を与え続けた所有者が、今ではもぬけの殻だ。


「…いつまでアンタは俺を一人にさせる気だ…」

いつしか涙が零れていた。
シキのズボンにシミを作り放射状に広がる。
涙は拭いても拭いても流れ続けた。
涙腺が壊れてしまったのだろうか
泣きたくなくても鳴咽が漏れる。



シキの生きる気力が全く感じられない
こうして見ていると生きているのかさえわからなくなってくる。


無性に体温を感じたくなって俺はシキを後ろから抱きしめた。
ほのかに感じる…シキの体温……


「…戻ってこいよ…」

俺の呼びかけに応えは帰って来ない。
それでも俺は待ってる。
またあの赤い瞳に火が灯るまでずっと……



目をつむり、そっとシキの唇に自分のものを重ねた。


……冷たい……


冷たいキスでいいから…少しの間、俺にアンタを感じさせてくれ………








end


お疲れ様です。
暗くて涙が出てきそうです。
シキが廃人になっても諦めないアキラ。
くじけそうになりながらもアキラはシキを待ち続けていると思います。


2009.10.01

お題:確かに恋だった


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