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「あー、熱中症ですね…。あと風邪も併発してますね。」

「お前、風邪もひいていたのか」

「…知らなかった。」


数日前から熱っぽい気もしていたのだが、外が暑いから体温も上がっているのだろう、そんな気持ちで軽く放置していたので、医師からの言葉にびっくりした。


「どうされますか?今日は病院で様子を診てもいいと思うんですが」



入院…?



「え、大丈夫です。帰りm「そうしてもらってもいいですか」


シキに遮られどもる。


「シキ、大丈夫だって。俺、帰りたい」

「駄目だ。一日の辛抱だ。」

嫌がるアキラを説得し、その日は病院で休むことになった。






『アキラ入院』の情報はどこから漏れたのか、たちまち広がり、ケイスケを筆頭に、務め先の店長、リン、源泉、しまいにはアルビトロも来る始末…

来客応対で中々休めないアキラの体調は家にいたときよりも悪くなった。…そんな気がした。


ケイスケの時は…というと…




「アキラ!!」

病院にもかかわらずケイスケが勢いよく病室に入ってきた。
大人数部屋は患者で満員だったため、個室になったのが幸いだった。


「アキラ、大丈夫なの?シキさんに何されたの!?」

「貴様!」

「変な病気うつされちゃったの?」

「いや、そうじゃない。」

「人を性病持ちみたいに言うな駄犬が」


シキは大層機嫌を損ねたようで、隣のケイスケの足を踏んでいた。


アキラはため息をつくと、事の経緯をケイスケに話した。

「熱中症かぁ…。俺は未経験でわからないなぁ…」

「馬鹿は熱中症にはかからんのだ」


フンとシキが鼻で笑う。


「そういうシキさんは熱中症になったことあるんですか!?」

「俺はそんな軟弱な人間じゃないもんでな。」




『さっき馬鹿は熱中症にならないってシキ言ってたよな…』



ケイスケはそのことにまったく気づいていないようでカッカしていたが、冷静に会話を聞いていたアキラは心の中でそう思った。


「ケイスケ」

アキラに呼ばれ、尻尾を振って喜んでいるかのような満面の笑みでケイスケが振り向く。


「何?どうしたのアキラ」

「悪いけど帰ってくれ。風邪もひいてるんだ。うつったら悪いし、うつってほしくない。」

最後の言葉はとっさに出たのだが、「そうだね。」というとケイスケは少し肩を落として病室を出て行った。









滞在時間は圧倒的にケイスケが長かったのだが、他の人は空気を読んですぐに帰って行った。


今までは騒がしかった病室だが、急にシキとアキラだけになったので部屋がシーンとなった。



「シキ」

アキラがシキの服を引っ張ると、その手を握り返すように優しく包み込んだ。

「どうした?」

「今日は…シキも帰ってほしい。俺の風邪、うつったら大変だし…。もしシキが風邪ひいちゃっても、俺、お粥とかあんまり上手に作れないから…」

「可愛い事を言う。俺は大丈夫だ。それに、俺はお前と一緒に居ることを望んでる。」


普段とは違う、シキの優しい口調にどうしたらいいかわからないアキラはシキを見つめた。


柔らかい時間が流れる。だがそれを断ち切るように流れるアナウンス……






『面会の時間が終了になります 明日の面会は 午前9時からです』







「なんだと…もう夜か。」

シキが苛立った様子で立ち上がるとアキラには何も言わず病室を出て行った。



しばらくしてシキが戻ってきた。


「今晩はここに泊まることにした。」

「泊まれるように恐喝したんじゃなくて?」

「人聞きの悪い…。あくまでも『説得』したんだ」

「随分とオブラートに包むな…」



アキラが呆れたように笑う



「ところで、具合はどうなんだ?」

「具合は…少し寝たらだいぶ楽になった。シキ、せっかくの休みなのにごめん」

「気にするな。」


シキがアキラの頭を優しく撫でた



「でもさ、泊まるっていってもどこで寝るんだ?布団ないぞ」

「布団?ここにあるじゃないか」

「え、ちょっ!」


急にシキが布団に入ってきたのでアキラは飛び起きた。



「だめだって!シキ!風邪うつる!」

「俺は『馬鹿』だからな、風邪などひかん」

にやりと口角を上げるとアキラの言葉など完全に無視して布団に納まった。







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