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「いい加減に止めろ。」

シキに咎められたが、そんなことは上の空。全く聞く耳を持たずグラスにまた酒を注ぐ。


「今日はー、大丈夫だから、シキに迷惑かけないからー」

何がどう大丈夫なのかわからないが、アキラは楽しそうにグラスを持って立ち上がった。…が、その瞬間、


「あ…」

「アキラ!」


アキラがフラッとよろけて倒れそうになった。グラスを犠牲にしてシキは間一髪のところでアキラの身体を支えた。

音を立てて割れるグラスが夜の静まり返った部屋に響いた。


「…全く…だから止めろと言ったんだ。」

「…ごめん」

アキラは伏し目がちに謝った。


「お前は座っていろ。グラスは片付けておく。」

そう言ってシキは新聞紙を取りに行った。


「…俺が割ったんだから片付ける…」


座っていろと忠告されたのにアキラは割れたグラスを拾い集めていた。
暫くしてシキが戻ると、先程とは様子が違うアキラに気付く。


「どうした」

「指…切っちゃったかもしれない」

「切っちゃったじゃなくて切れてる。何だ、座っていろという約束も守れんのか、お前は。」

まだ酔った様子のアキラを呆れた顔で見る。


「すぐ片付けるから切れたところを押さえていろ。」


すぐに片付けないと今度は破片を踏みかねない。


シキは手早く処理すると、直ぐにアキラのところに戻ってきた。


「血は、止まったか」

「…止まんない」


見せてみろと言いながらシキがその指をくわえた。


「…っ…」

咄嗟に手を引っ込めようとしたが阻止され、執拗に舐められた。

傷口に舌のざらついた感触を感じ、ゾクリとする。


「…大丈夫だからっ…」

声が上擦る。
シキはわざと音を立てながら指を舐める。
静かな部屋に広がる水音にアキラは興奮を覚えた。だが、そんな素振りを見せたらシキに何をされるかわからない。
頭ではそう考えるも、身体は本能に従順で、身体をモゾモゾと動かした。


「…どうした」

クツクツと笑うシキを涙目になりながら睨んだ。わかって聞いているのだから質が悪い。


「…何でもない……ッ!」

不意にシキが指から口を離し、包み込むように抱きしめてきた。

「酔っ払いは怖いな、そんなに煽ってくるとはな…」


耳元でそう囁かれ、アキラは観念したかのようにシキの首に腕を回した。


「…酔ってるのはアンタだって同じだろ?」

「…そうかもしれんな」

シキはアキラを横抱きにすると寝室に向かった








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