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シキは17時に店の予約を取っていた。
10分ほど早かったが用意はできていたようで、二人は店の一番上の階に連れて行かれた。
エレベータの中でアキラはシキに耳元で呟く。

「こんないいところ連れてくるなんてアンタ一言も言わなかったじゃないか!俺…こんなことならもっといい格好してきたのに…」

「クリスマスプレゼントだ、これくらい奮発することくらい想像つかなかったか?」

「奮発するにしてもこれはし過ぎだ。なんか俺…浮いてるから…。」

「浮いてる?俺はそう思わないが。それに、一番上の階はフロアで使えるから他の客と会うことはない。」


さらりと凄いことを言われ、ガチガチに緊張したアキラの身体はますます固くなったのだった………



***

確かに、エレベータでシキが言っていたフロア貸切は本当だった。
カフェで言っていた『部屋』も何となく理解した。

「店と部屋、一緒だったんだな。」

「あぁ、説明が悪かったな。この店の一番最上階は部屋になっていてな、このとおり、食事をするところと別に風呂や寝るところもある。」

「これって、かなり偉い人とかが泊まる『スウィート』ってやつか?」

「偉い人…まぁ、それなりの奴が泊まるところだな。」

「…なんで俺達がこんなところに泊まれるんだよ。金、大丈夫か?」

「それは心配しなくていい。」


アキラが聞いたのは、シキが働く会社の社長とこの店は関わりがあるらしく、そのツテで安く泊まれたという……



「さぁ、食べよう。フォークとナイフは使い慣れていないだろう?どうせ俺とお前の二人きりだ。普通に食べればいい。」

「…ありがとう…。」


フォークとナイフを使って食べる食事なんて今まで一度もしたことがなかったのでそれを心配していたのだが、それも配慮したシキなりの思いやりだった。
それにアキラは感謝した。




「それじゃ、乾杯。」

カチンとワイングラスがいい音を立てた。
アキラは一口それに口付けるとシキを見て一言言った。


「…こんなクリスマス…最高かもしれない。」

「喜んでもらえてなによりだ。」

そう言ってシキもワインに口をつけた……




見たこともない料理が目の前に広がり、これ以上入りきらないというほど食べた。
食事中もシキの仕事の話をしたり、アキラのペットショップでの失敗談などを和気藹々と話した。
結婚してからも時間が合わず、なかなかこうしてじっくり互いの話を聞くことがなかったので、とても嬉しかった。




***

食事が終わり、ベットに座り、焦点の定まらない目でアキラはぼんやりシキを見ている。

「大丈夫か?」

「…平気。…あぁ、ホント、部屋を取ってくれてよかった…。」

そう言ってアキラはヘニャっと笑った。


「そういえば…お前は俺に何をくれようとしていたんだ?」

「へっ?あぁ、コレ。」

緩慢な手つきでアキラがポケットから小さな箱を取り出した。

「開けてもいいか?」

「あぁ…。」

シキが箱を開けると、中にはネックレスが入っていた。


「十字架のネックレス…。シキってトシマにいたときから装飾品付けてただろ…?その中でも一番鮮明に覚えてたのが十字架のネックレスだったから…」

「アキラ、お前…」

「でね、このネックレス、ペアなんだ。後ろに…名前を彫ってもらった。」


アキラはそのうちの一つを取り、シキに付けた。


「…やっぱりこれにしてよかった。…似合ってる。」

「それじゃあ、俺もつけてやろう。」

そう言ってシキも同様にアキラにつけてやった。


「白い肌に銀の十字架か…。そそられるな…」

シキはアキラには聞こえないほどの小さな声で呟いた。


「ペア…、指輪はしてるけど、十字架って何かの誓いって感じがするんだ。」

「誓い、か。」

「…俺は、この先もずっとシキと共に生きていきます!みたいな?」


いつもと違う声色でアキラはそう言った。

「誓い…そうだな、俺は、この先もずっとアキラを愛し続ける。…俺らしくない。」

シキはそう言いながらアキラの頬に軽く触れ、キスをした。
すぐ離れた唇に今度はアキラから口付けてきた。

アルコールの匂いとアキラの匂い。
そっと背中に腕を回してきたアキラの髪に顔をうずめた。


「…アキラ」

「…いいよ。」


それを合図にシキはアキラの身体をゆっくり倒した……










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