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「何だ…これ…」



イヴの誓い



今日は12月24日
そう、クリスマスイヴである。

たまたまアキラは仕事が休みだったため、大掃除を始めた。

小一時間ほど経った時、アキラは寝室のクローゼットの中に大きな段ボール箱を見つけた。


「…何だこれ。」


別に危険な物は入っていそうにないが、警戒した手つきでその箱を開けた。


「……あ…」

現れたのは150センチほどあるクリスマスツリーだった。

そういえば…とアキラは去年のことを思い出す。



***

車椅子に座ったシキ。
虚ろな瞳は何も映さなかった。
それでもアキラはシキを看病し続けていた。

12月下旬。アキラは一人で買い物に出掛けていた。
外はクリスマス間近であったため、夜になっても昼間のように明るいイルミネーションで輝いていた。

「…クリスマス…か…。」

目の前のカップルが身体を寄せ合い愛を育んでいる光景を見てボソリと呟いた。

ふと、玩具屋に飾ってあった一つのクリスマスツリーに引き寄せられ、足を止める。

ツリーは1番上に大きな星が付けられており、光を反射してキラキラ輝いていた。

「…これ…欲しいかも…」

理由はわからなかった。
しかし何故だかアキラはそのツリーが欲しくなった。

「…すみません、このツリー頂けますか?」

「はい!……―――」






***

そうか、あの時の…
鮮明にその記憶は甦ってきた。

ツリーを買って来たものの、それを飾ることはなく、片付けられていたのだ。
あの時はおそらく「一人でこれに飾りつけをしたところで楽しくないだろう…。」と思ったに違いない。
それなら今年は?…シキが復活し、初めてのクリスマスにこのツリーがあれば一層華やかになるだろう。

「…よし、飾ってみるか。」

開けてみると去年見たものと同じものがあった。
段ボールに入っていたため、全く汚れていない。

本物の木ではないため、軽そうに見えるが、実際持ってみるととても重い。
明日は筋肉痛を覚悟しておかないといけないか…と思いながらひとまずリビングにツリーを持っていったのだった。





ツリーをリビングに運んだ後、なんやかんやで時間は過ぎていき、気がつくと既に日が堕ちていた。
夕飯の準備を一通り済ませ、いよいよツリーの飾りつけに入る。

初めはシキと一緒に飾りつけをするのもいいかと考えたがやめた。シキは「くだらん。」の一言で参加してくれないような気がしたからだ。

アキラは赤、青、黄の3色の発泡スチロールでできたキラキラした玉を適当な位置に取り付ける。
それだけでも随分とツリーらしくなってきたものだ。
それから電飾を取り付け始めた。

確か、これは去年購入したときに店員に「そんなにツリーに電飾はいらない」と言われたが何故かたくさん買ってしまった電飾だ。
あの時は余程外のツリーの電飾が綺麗だと思ったのだろう。アキラは自分の行動に苦笑しつつ手を進めた。


…それから1時間…ようやく飾りつけが終わった。


「…意外に時間がかかったな。」

時計を見ると20時を回っていた。
今日はシキは遅くなると朝から聞いていたので夕飯を待つことはない。さっさと食べてしまおう…。そう思い、早めに夕食を摂ることにした……



それから風呂にも入り何もすることがなくなった。

「ツリーの電飾…点けてみようかな。」

本当はシキが帰ってきたら点けようと思っていたのだが、やはりこの数の電飾が一気に点いたらどんな感じになるのかが気になって仕方がない。
アキラは全ての電気を消して、電飾の電源をONにした。


ピカッ!!


眩い光に驚く。しかし光ったのは一瞬で、今は点いていない。



「…あれ?」


部屋の電気を点けようとしたが今度はそっちも点かなくなった。


「…もしかしてブレーカーが落ちた…?」

おそらく大量の電流が一気に流れたのだろう。前にも電子レンジとクーラーとトースターを同時稼動させた瞬間ブレーカーが落ちたことがあった。


「…あ」


アキラは小さく声を漏らした。


「ブレーカーってどこにあったっけ…?」


そうなのだ。前の時もその前の時もシキが真っ暗な中でブレーカーを上げに行ってくれたのでアキラはどこにブレーカーがあるのか知らなかった。
というか、真っ暗過ぎて何も見えない。これじゃあ目が慣れるどころの話じゃない。

そのまま身動きが取れなくなる。
別に焦ることはないのに何故か鼓動が早くなるのを感じた。
アキラはこのままシキを待つしかなかったのだ………



その時、家の電話がなりビックリする。
どうやら他のブレーカーのようだ。
この時間の電話は必ずシキからのものなので、急いで電話に出た。


「シキ!」

『…どうしたそんな声して』

「実は…ブレーカーが落ちたんだ。」

『ブレーカーが落ちた?』

「あぁ。」

『今から帰るから待ってろ。怖かったら先に寝てろ。』


それだけ言うと電話が切れた。

…怖い…?シキのその言葉にはっとする。
そうか、鼓動が早くなったのは自分が不安で怖かったからそう感じたのかもしれない。


シキの会社から家までは30分以上あるので、アキラは一人、待つことしかできなかった…



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