Calling


会えないのはわかってる。でも……





Calling





シキが出張に出掛けて1週間が経とうとしていた。
始めは明るく送り出したものの、2日3日と時間が経つにつれて会いたいという気持ちが強くなっていった。


「はぁ…」


無駄にため息をつく。
今日一日で何回ため息をついたものか。


その時、タイミングよく電話が鳴った。
もしかしたら…という期待を募らせ、勢いよく受話器を取る。


『アキラか。』

聞き慣れた低音。
受話器ごしに聞こえてくる声に、不覚にも泣きそうになってしまった。

「シキ…」

『元気か』

「…元気。…というか電話の一つもなくて謝罪は無しかよ。」

『…悪かった…』


あっさりと謝られたために調子が狂う。


「シキは?元気か?」

『あぁ。疲労は半端ないがな。』

確かに、声だけでも疲労を感じ取ることができた。


『寂しくないか?』

「…っ……」


アキラはその問いに黙ってしまった。
本当は寂しくて仕方がないが、アキラの性格上そんなことをすぐに口に出すような人間ではなかった。
あくまでも平然を装って返す。


「あぁ、大丈夫。…大丈夫…」

大丈夫…と自分に言い聞かせるアキラ。
そうしないと電話越しで泣いてしまいそうだったから。


「シキ、あと何日くらいそっちに滞在するんだ?」

『本当は明日にも帰れそうだったんだが、思うように交渉が上手くいかなくてな…。はっきりいつになるかとは言えないがもうしばらくかかりそうだ。』

「そっか…。」

それを聞いて更に気分が落ちていく。
大変なんだ、と同情しつつもその口調はつい刺々しいものになってしまった。


『怒ってるのか』

「別に怒ってない。…けど……」

『けど?』

「…何でもない。」

危うく本音を漏らしてしまいそうになり、慌てて話題を変えた。


「今日、オムライスを作った。」

『ほう。珍しいな。『惣菜を買ってくる』から『作る』になったか。』

皮肉を言いつつも口調は穏やかだ。

「いつもは二人分だから作らないだけだ!」

『俺はお前の手料理を楽しみにしているんだがな。』

「…っ…。…わかった。今度作る」

『それが実現するのはいつになるやら…』

シキが笑いながらアキラをからかう。

『オムライスか。俺も今日の夕飯はオムライスにした。』

「…アンタ、好んでオムライス食べる奴だとは知らなかった。」

『…何となく…オムライスを食べるとお前を思い出すからな。……寂しいのは俺のほうかもな。』

シキの言葉にアキラは少し驚いた。シキの口から寂しいと聞くのは初めてだったからだ。


「俺も!俺も何となくオムライスを食べると、シキを思い出すんだ。」

『ほう。』

「…やっぱり寂しい。電話越しでシキの声が聞けてもやっぱり物足りない。」

受話器を握る手が強くなる。
涙を堪えてアキラはシキに言った。


「シキに会いたい……」


その時、鍵が開く音がした。
振り返るとそこにはいるはずのないシキがいた。

「…シ…キ…」

強く抱きしめられ頭をグシャグシャと撫でられる。

「お前が可愛いことを言うものだから帰ってきた。」

「嘘つけ…」


シキは早く家に帰るために、予定よりも早いペースで仕事をこなし、帰ってきたのだ。

アキラの反応が気になり、近くの公衆電話から出張先と装ってアキラの気持ちを聞き出したのだった。

「…でも…電話をくれなかったのは正直寂しかった。」

「本当は毎日でも電話するつもりだった。」

「じゃあ…何で」

「お前の声がオカズになるのは嫌だろう?」

含みのある言い方をされ、一瞬ポカンとするが、意味を理解した瞬間、かぁーっと顔が赤くなった。

「ばっ!馬鹿じゃないのか!?」

「…というわけで溜まっている状態だ。今夜はたっぷりと愛してやろう。」

耳元で囁くように言われ、背中が粟立った。


強引な導きでベッドに組み敷かれ、どちらからともなく口付ける。
飲み込みきれなかった唾液を気にも留めず、獣のように互いの舌を貪った。


しばらくして唇が離されると息を乱したアキラが不敵に微笑んだ。






「…今日はたっぷりと愛されてやるよ……」







end


シキアキ夫婦強化週間1日目

甘々って素晴らしい!
愛されてやるだなんて言葉はアキラの口からは聞けないと思います。そしてシキがどこまでも変態です←
ただ「溜まってる」と言わせたかっただけです(笑)

よろしければ感想お聞かせください。





2009.12.19







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