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現在、午後0時半




シキの職場までは二人の家から歩いて30分くらいのところにある。
書類には会議の開始時間が午後二時と表記されていたので余裕で間に合う。

アキラは1時間半前に会社の前に到着していた。


「…憂鬱だな…。」


溜息をつき高くそびえ立つ建物を眺める
初めて見たがまさかこんなに立派な会社に勤めていたとは…

シキにはただ『貿易関係の仕事』としか聞かされていなかったため、どうせ小さな会社だろうと思っていた。


…にしても…
何故この会社は誰もロビーに人が居ないのだろう…

目的のフロントには女性が一人いるので関係はないが、少し妙だった。


この会社の隣にはこれまた大きな製薬会社があるのだが、そちらはこことは正反対で人の出入りが多い。




(こっちが普通だよな…)


製薬会社を見ながらボソッと呟いた。
人の出入りが多ければ、それだけアキラを集中して見る者は少ない。
しかし、シキの会社は人がいなさすぎて別な意味で緊張する。



「仕方ないな。」



こうしている間にも刻一刻と時間は迫ってきている。

アキラは深呼吸をすると決心したように堂々と中に入っていった……









「すみません」


アキラの中の限界のキーでフロントの女性に話しかけた。


「…どうなされましたか?」

「…これを…シキ…さんに渡していただけませんか?…今日の会議で使う書類みたいなんですが…」

「え…」



アキラがシキというワードを口にした途端、女性の顔が強張った。


「…頼みます…「あの!!」


もしかしてバレたのではないかと緊張が走る。
しかし、違うようだ。


「シキ様とはどのようなご関係で…?」

「あ…えっと…その…」

アキラが変装していることに関してはノータッチだが、ここにしてまさかの関係確認…
正直に言ったほうがいいのだろうか…?


返答に困っていると、女性がフロントに備え付けてある電話でどこかにかけ始めた。
暫くすると真面目そうな男が一人現れ、アキラをじっと見た。



「暫くコチラでお待ちいただいてもよろしいでしょうか!」


そう言ってアキラの腕を強く握りエレベーターのほうへ向かおうとする。


「ま、待ってください!お…私が何かしましたか!?」

「シキ様はこの会社の社長の次とも呼べる上層部の方です、申し訳ありませんが一般の方には特別な場所でお待ちいただき、その間に我々がシキ様に確認を……「…ま、待てよ!…あ…待ってください!私は…その…」


自分はシキの配偶者だ…
そう素直に言えたらどんなに楽だろう…
アキラはやるせない思いに唇を噛んだ。

それに、まさかシキがそこまで出世しているとは思ってもみなかったので男を納得させることの出来るいい言葉が全く思いつかなかった。

アキラはエレベーターに乗せられ『B5』と書かれたところに連れて行かれたのだった………









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