それはまるで


早朝、アキラは激しく咳き込み目を覚ました。


「…ゴホッ!……風邪…か…?」

何だか身体がだるい

喉は痛く、頭も痛い。


アキラはおぼつかない足取りで自室を出ると、医務室に向かった……





それはまるで…





数回ノックをすると、中から小太りの医師が出てきた。


「アキラ様…」

アキラを見るなり医師は慌てて中に招き入れた。
まだ一言も話していないのに、アキラをすぐにベッドに横たわらせ、体温計を渡した。


「…具合が悪い」

「仰らなくてもわかります…体調が悪くなったのはいつ頃ですか?」

「…わからない…」


もしかしたら…と医師は声を大きくした


「昨日の大雨…シキ様とアキラ様が城に戻られたとき、雨に濡れませんでしたか?」



…そういえば…この医師が言うとおり、昨日は外に出ることが多く、歩いての移動も多かった。
午前中は晴れていたのに、午後になって急に雨が降り出したのだった

アキラもシキもびっしょり雨に濡れたが帰還してすぐに会議があったため、着替える暇もなかった。



体温計を見ると、38度5分。


「私が付き添いますので、一度お部屋に戻りましょうか。ここよりもゆっくりおやすみになれるでしょうし。」

「あぁ」

立つのもままならないアキラを支えて、2人はアキラの自室に向かったのだった






自室に戻り、自分のベッドに横たわると、ドッと疲れと眠気が襲ってきた

「アキラ様」

『3日分』と書かれた紙の中に薬を入れながら医師ははっきりと言った


「3日間は絶対安静にしていてください。」

「3日間…」


冗談じゃない、そんなことはできない!と声を荒げて上体を起こすと頭痛がして、力なく倒れた。


「3日間です。本当ならば3日ではなく一週間と言いたいところですが、無理でしょう?」

「3日だって無理だ。」

「風邪がさらに酷くなってシキ様に迷惑をかけるのとどちらがいいですか?」


酷なことを言う。

シキというワードを出されると何も言えなくなってしまった。


「私のほうからシキ様のほうには伝えておきますので、ゆっくり休んでください。」

「…わかった…」


医師は微笑み一礼すると部屋を出ようとドアのほうに歩いていく。
ドアノブに手を掛けてアキラのほうを振り向くと、少し表情を険しくさせた


「おやすみになられている間、激しいことは避けてください。」


回らない頭で何となく医師の言いたいことを理解して、顔を真っ赤にさせると、追い出すように手をヒラヒラさせた。




「…全く…」


たとえシキがそういうことを望んだとしても、今回ばかりは首を縦に振ることはないだろう…。

明日、シキに何と言われるのだろう…などと考えているうちに、いつしか夢の中へ堕ちていった………












「おい」


頬に冷たい感触…

目を開けると片眉を吊り上げたシキが覗き込んでいた


「…総帥…」

「医師から話は聞いた。…全く、お前という奴は…」


呆れられているのが表情から見て取れる。

上体を起こそうとしたらシキに止められた


「寝ていて構わん。…どうだ、具合は」

「…あまり…良くありません…」


関節が痛く、身体がとにかくだるい。


「…こんなに頬を赤くして…。熱も高そうだな」


冷たい手が再び頬に当てられる。


「昨日の雨…か…。」

「…おそらく…。それと、自分の体調の管理を怠ったためかと…ゴホッ」



そういえば…とアキラは総帥を見る


「今日は大事な会議があったはずです。」

「急遽、取り止めにした。お前にも参加してもらわないといけないからな。」

「自分のせいで総帥にも、他の方にも迷惑をかけてしまって…ゴホッ…すみません。」

「構わん。とにかく、その風邪を治すことだけを考えていればいい。」



それに…とシキは続けた


「おかげで3日間、暇になった。まぁ、暇というのはおかしいかもしれないが、たまには人の看病をするのも悪くない。」

「…総帥…」

「医者にも言われたが、3日間は激しいことは避けるように…だそうだ。全く、あの医者は…斬ってやろうかと思ったがやめておいた。」

「すみません…」

「まぁいい。3日経てばと考えれば…な。」

「…ですね」


何を意図しているのか悟ったアキラは更に顔を赤くした。
その反応が楽しかったのか、からかうようにアキラの耳元で囁くように言う。



「食事は口移しでもいいらしいぞ」

「!!」

「冗談だ。全く、お前の反応を見るのは本当に楽しいな。」


シキは笑いながらアキラの髪を撫でた。





機嫌のいいシキの傍らで、アキラの熱は高くなっていた。
シキに起こされたときよりも具合が悪い。

「先程よりも顔が赤いぞ。本当に大丈夫か?」

「…大丈夫です…。ゴホッ、問題ないです…。」

「その言い方は最近の流行りか?城内の兵士もこの前そんな話し方をしていたな」

「…気のせいです。おそらく。」


シキは首を傾げながら、持っていたスプーンで器に入ったお粥をかき混ぜた。


「食わなければ薬が飲めないらしい。」


そう言うと、一口分のお粥を掬うと息を吹きかけて冷ました。
何だかその光景がおかしく思えて、アキラはクスッと笑った。こんなシキの姿、他の兵士が見たらどういう反応をするのだろう。



「ほら、口を開けろ」

「そんな、総帥に食べさせていただくなど…」

「嫌だというのか?」

「そうではありません」


ならば、と口を開けさせたシキは素早くお粥を口に含ませた。

熱があるせいか、味覚がおかしくなっているようで、味がついているのかさえわからなかった。


「総帥、やはり自分で食べますので」

「ダメだ。」



きっぱりと言うと、シキは一口口に含み、アキラの唇に重ねたのだった。
突然のことに動揺するアキラを無視し、お粥を口移しで流し入れた。

小鳥が母鳥に餌をもらう光景をイメージしたアキラは戸惑いよりも羞恥のほうが勝っていた。






「…っ…総っ…帥…」


器に入っていたお粥はすでにないにも関わらず、シキはアキラに口付けた。
舌を絡めると更にわかるアキラの熱の高さ。

「…熱いな」

「…っ…風邪が…うつりますからっ…」

「これごときでうつるような身体ではない。」


そう言って角度を変えながら何度もキスをする。
静かな部屋の中で二人の水音だけが響く。
それがダイレクトに脳のほうにまできて、頭がクラクラし始めたアキラは静止の意志を伝えるためにシキの服を掴んだ。


「ハッ…そうすい…駄目です…」

「どう駄目なんだ」

「…頭がクラクラして…おかしくなってしまいそうです…」

「本当にそれだけか?」


アキラが首を傾げると、おもむろにズボンの上からアキラのものを触れるように触った。



「ッ…」

「やはりな…」


クスクスと笑いながら顔を見られたので、恥ずかしくなって顔を背けた。


「キス以上のことを求めてしまいそうになる自分が許せないだけだろ?」




図星だった。何も言い返せない




熱によって潤んだ目で見られたシキは衝動的に求めてしまいそうになったが、自分に言い聞かせるかのように言いながらアキラの頭を撫でた。

「3日は激しいことはするな…ではなかったか?…俺も悪ふざけが過ぎた」

「何をおっしゃいますか。……総帥、たかが3日ですよ?」

「…されど3日だ。お前が煽らなければ大丈夫だ、問題ない。」



アキラは少し笑うとこう言った







総帥、その言い方は最近の流行ということで間違いないですか…………―――






end


強化週間にしようかと思っていた作品です、が、やはり強化週間は自身のスケジュール的な問題で無理そうです><
(毎日更新が無理そう…ということです><)
口移しで食べ物をもらう、熱が出て総帥に看病?してもらう、なぜかエルシャ●イという緊急アンケート結果を元に書かせていただきました(●´ω`)
熱、口移しとはすぐに思い浮かんだんですが、エルシャ●イをどうしたらいいのかわからなくて、最終的に本編のようにしちゃいましたw
でも、総帥が【大丈夫だ、問題ない】を言っても全然違和感がなかった件www

たくさんのアンケートへのご参加、本当にありがとうございます!!

よろしければ感想などをお聞かせください!!

(感想などを書いてみる?)



2010.10.30

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