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我慢出来ない!
「アキラ様、」
昼の休憩時間のこと、一人の兵士に呼び掛けられ振り向いた
「…?何だ?」
目をキラキラさせてアキラの前に立つ彼は昔の友人に似た雰囲気を醸し出している。…昔の友人…?名前は……忘れた。
シキに忠誠を誓った日から昔の記憶は全て捨て去った。だが名前を忘れようとも容姿は何となく覚えていて…
そのせいか、他の兵士とは少し違った接し方をしていた
「…髪型変えたのか?」
「!!」
いつもよりもさっぱりした彼の髪を見て言ってやると、頭を掻きながら照れ臭そうに笑った。
「そうなんです!!嬉しいなぁ…アキラ様は俺みたいな下級の兵士のこともちゃんと見てくれてたんですね!」
似合っていますか?と聞かれ、アキラは頷いた。
「悪くない。」
アキラが言うのと同時に午後の仕事が始まるベルが鳴り、彼は一礼していなくなった。
アキラはよく兵士のことを気にかけてやっていた。シキの機嫌が悪い時は小さなミスでも切り捨てられることがあるため、時にはシキの機嫌取りも行ったりする。
それは別に兵士に好意を抱いているわけではなく、ただ単に無駄に兵士の数を減らすのはよくないと思っているだけだ。
アキラがそう思っていても、兵士は違う。
アキラは女神のような存在であって憧れている。容姿端麗であり、憧れを通り越して恋を抱く者も少なからずいた。
……シキはそのことをよく思っていなかった。広い廊下を通るたびに聞こえる『アキラ様は〜』という会話。
この不快感が募り……爆発した………
***
ある日の昼休み、また聞こえてきた会話。
シキは苛々しながら兵士のほうに歩み寄り、無言で殴った。
一瞬にして穏やかな食堂が凍り付いた。
いきなり殴られた兵士は意識を失い大の字に倒れた。
この不可解な行動に反論しようと何人かの兵士がシキを見たが……できなかった。
いや、何か言おうものなら腰に刺さる愛刀で斬られるかもしれない……
シキの怒りは収まらないようで、一緒に話しをしていた兵士も遠慮なく殴った。
食堂の異変に気付きアキラが駆け寄る。
そこは…地獄絵図だった。
兵士たちの輪を潜り囲まれた中心にいた人物を見て何が起きたのか悟った。
「総帥!!」
アキラは3人目の襟首を掴み殴ろうと右手を振りかざすシキを取り押さえた。
「何があったのです!?この者達の失敗ならば俺の責任で…「違う!!」
恐ろしい形相で睨まれアキラは言葉を無くした。
これ以上怪我人を増やされてはたまらないと思い、他の兵士達をこの場から退くように目配せした。
シキに殴られた2人の兵士はすぐに救護室に運ばれた。
アキラの腕を振りほどき、シキが手首を掴んだ。
「来い!!」
殴られるのかと構えたアキラだったが、どうやら違ったようで、シキは手首を掴んだまま自室へアキラを連れていった………
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