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お前がそれを望むのなら



「…疲れた」

自分の肩を手で解しながら、重い身体をフカフカの椅子に沈めた。

今週は忙しかった。シキとは違い、実際戦地に乗り込んだりと肉体的な疲労はなかったが、精神的に疲れ果てていた。

「…全く…」


月曜日の早朝ミーティングで兵士の一人が大変なミスをしてしまい、そのことでアキラは睡眠時間を返上しながら頑張っていたのだった。
それがようやく終わり、今に至る


未だに重役と会議中のシキよりも先に自分が自室に戻ってもいいものか、とアキラは悩んだ。
…そんなことが許されるはずがない…それは分かりきっている。
でも鉛のような身体を再び起すことは不可能だった。

たかが一週間、働き詰めだったところでまさかここまで疲れるとは思っていなかった。



ガチャッ…



自室のドアが静かに開けられる
目を瞑っていたアキラは見なくてもそれが誰であるかわかった。

この人が部屋に入るだけで空気がピンと張る


「随分と疲れているようだな、アキラ」

表情はわからないが怒ってはいないようだ。

アキラはそっと目を開いた



「…総帥…申し訳ありません…貴方よりも先に…」

「構わん。お前も大変だったな。先程話しは聞いたぞ。」

哀れむような目で見られ、頭を撫でられた。


「…この6日間、睡眠時間が1時間だったので、流石に身体に堪えました…。ダウンしてしまうのではないかと思いました…」

「珍しいな、お前がそんなに弱気になるとは。無理をするなといつも言っているだろう?」

「…そうですが…。離れた所で総帥も働いていらしたのですから、俺もここでへこたれてはいけないと…」


語尾が最後まで聞こえないくらいの声でアキラは話していた。
話すのも辛いようだ。


「あぁ、もういい。何も言うな。…今日はゆっくり休め。…そうだ、俺が留守の間代わりに働いていたお前に一つ褒美をやろう。」

「…褒美…ですか?」

「お前の頼みを一つだけ聞いてやる。」

アキラはその言葉を聞いた瞬間、ガバッと身体を起した


「そ、そんなことはできません!俺が貴方に頼みごとなど!!」

「そんなに声を張り上げるな。…俺がいいと言っているんだ。」

ピシッと言いくるめられ、言葉を無くす。

アキラは数秒考えた後、シキの顔をじっと見た。
アキラの顔は赤みが差していた。

「本当によろしいのですか?」

「あぁ。俺にできることであればな。」

「…ス…」

「…?」

「…キス…してください」

アキラはそう言うと黙って俯いてしまった。


「…キス…」

「俺…一週間近く貴方のお傍にいられなかっただけで気が狂いそうでした。
…貴方の声、仕草…それが見られないだけで俺は…貴方が不足しています…」

「身体を求めるのではなく、キスを欲しがるのか。」


予想外の頼みにシキが少し驚いていた。


「…そんな…貴方のお体の負担になるようなことはしたくありません…。」

「…わかった。それがお前の頼み…だな。」

「はい。」

「それならここではなく、隣の寝室へ行け。」


寝室…という言葉にビクッと反応したが、アキラは黙って頷くと言われたとおり自分の寝室に向かった。




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