笑う雑食動物

 「この学園でどうやって生き残るかオレが教えてやってもいいッスよ」と監督生に言った結果、ラギー・ブッチはオンボロ寮の防犯コンサルタントに就任した。

 監督生は、優秀な選ばれし魔法士のみが通える男子校ナイトレイブンカレッジにおいて、唯一魔法が使えず、唯一スカートを履きこなす女生徒である。
 入学したての頃の彼女は、男子校の風紀を乱さぬようにと自己判断に基づいて男装していたが、鼻の良い獣人も通う学園では無意味な事と諦め、今では髪も伸ばして平然と女らしいままの振舞いで暮らしている。無論、男子校の中で女子が一人で暮らすリスクは大きい。エリート校といえど、テストで楽をしたいだけで一生奴隷の身になりかねない契約にサインする愚か者が三桁もいたり、カルボナーラの卵が割れただけで因縁を付けるような血の気の多いも輩もいたりする、独特の治安の悪さを誇るのがナイトレイブンカレッジである。
 その環境下で、監督生はスカートを履きこなして一年が経とうとしていた。今年の新入生はまず彼女に驚き、彼女の相方のモンスターに驚き、その扱いを生徒自治に丸投げする学園の経営方針に驚く。ついでに何割かは彼女に邪な感情を抱く。
 三年生になったラギーは、その様子を愉快な気持ちで眺める事ができた。防犯コンサルタントには、コンサル料とは別に、不審者確保の際の成功報酬が出るのである。だからラギーは建付けすら怪しかったオンボロ寮のリフォームを監修し、スラムで培った自衛知識を総動員したセキュリティを用意した。その堅牢さはラギーが一番良く知っている。あの狡猾と卑怯を褒め言葉に適用するレオナ・キングスカラーが「犯罪者の手口を一番よく知ってんのは犯罪者だしな」と引く程によくできている。ちなみに、ラギーはスラムで生存の為に家屋侵入の手口を学んだ事はあるが、女に手を出す為にその知識を使った事はない。腐っても女性優位社会で生きるハイエナ獣人なので。


 そして本日明朝、不審者用のトラップは見事に作動し、寮監に回収される不届き者を横目にラギーは成功報酬をせしめた。監督生が危険な目に遭うのを喜ぶ趣味は無いが、臨時報酬は嬉しい。
 加えて、その不届き者がオクタヴィネル生であったお陰で、モストロ・ラウンジの昼食まで付いてきた。情けは人の為ならずとはよく言ったものである。


 昼休み、モストロ・ラウンジの二階席に案内され、ラギーは通路側のソファに座った。
 監督生とグリムがその対面に座ったところで、給仕のフロイドが皿を運んでくる。新メニューの洋梨とバジルソースのラビオリだった。監督生の横に座るグリムには、小皿に載せたツナフレークが置かれた。
「つか二人とも食ったらホール入ってくんね? アズールもジェイドも来れなくなったから、オレ忙しーし飽きてきたぁ」
フロイドの対応は気安い。監督生もラギーも、ラウンジには客ではなくスタッフ側として馴染んだ顔である。かれど今アズールとジェイドが同時に抜けているのは、恐らく不届き者の寮生に然るべき始末を付けさせているからである。ラウンジを忙しくさせた間接的原因の二人は、顔を見合わせる。
「臨時出勤って特別手当出るんスか?」
交渉は決裂した。フロイドは去り際にケチと文句を垂れた。吝嗇家はしっかり者の証左、ラギーは褒め言葉ッスと返して手を振った。そもそも本当に深刻な人員不足なら支配人のアズールがそれなりの条件で人を手配する筈なので、特に心配は必要無いのだ。

 二人の前に置かれた陶製の白い皿の上には、緑のソースのかかった平たい生成色の紡錘形が積まれ、胡桃が散りばめられていた。フルーツとチーズの香りが、二人と一匹の鼻を擽る。
「つか、アズールくんが昼までかけるって、多分サクッと退寮なり退学にはしない方が絞れる身分なんでしょうね」
これだから権力者は嫌いッス、と舌を出したラギーに、監督生が口元を押さえて笑った。エリート校において後ろ盾が無い者同士の彼等は、貴族気取りの学生に思うところが無い訳ではないのだ。
「まあ、奢っていただいたのも口止め料ってところでしょうし。別に私はそれで構いませんけど」
ラビオリに舌鼓を打ちながら、二人は不届き者の身に起きている展開を予想し合う。学園長に報告しないにしても金銭交渉に抜け目無いアズールならば示談金なり慰謝料なりをたんまり絞ってくれるだろうという信頼があったので、二人の間では既に笑い話だ。


 監督生も随分逞しくなったものだ、とラギーはラビオリを咀嚼しながら一年前を懐かしんだ。
 一年前、ラギーがマジフト大会で有利に立てるよう工作していた頃、監督生はサバナクロー寮に初めて脚を踏み入れた。まだ彼女が彼だった日だ。屈強な男に取り囲まれる華奢な背中に、誰か勇敢と蛮勇が異なる事を教えてやれと思った。

 だが結局、彼女は無茶を通したし、同情だけで動くラギーでもなかった。ラギーが彼女のコンサルになったのは、三度目のオーバーブロット騒動が起きてからだった。
 その頃にはもう、彼女の同級生の人間達にも露呈していたらしいが、彼等は彼女を上手く庇ったり隠したり出来る程器用な訳でもなかった。そもそも、獣人は鼻が利く上に勘も良い。ラギーを含めたサバナクローの大半は、とうに彼女の正体に気付いていた。ジャックを筆頭に男という事にしておきたい彼女の事情を慮って男扱いをしていただけの生徒もいたが、そういった意図で彼女を男扱いしていた者は実のところ少なかった。男友達という体面があれば、彼女が近過ぎる距離感を拒否できないだろうという下心が殆どだった。
 彼女の顔を触ったり肩を組んだり、猥談に巻き込みたがったりする輩は多かった。傍目から見ても、結構な気持ちの悪さだったとラギーは記憶している。大事に至らなかったのは、彼女の幸運とジャックの尽力と、サバナクローの寮監が女性優位社会で育ったレオナ・キングスカラーだったからが大きい。
 ラギーの祖母いわく、秘密は抱えている方が不利なのだ。

 アズールを出し抜く作戦を立てるなど、彼女が案外頭が回る上に悪意と折り合いを付けていける事に気付いた時、ラギーは思わず「もう男のフリすんのやめたらどうッスか」と声をかけていた。
 彼女はマジフト大会で、醜態を晒しつつも意気地があるところを見せた。サバナクロー寮監かつ第二王子のレオナ相手に交渉を持ちかける度胸も見せた。変な食い潰され方をするには、少々勿体無かった。ラギーはタダで他人を助けてやれる程のお人好しではないが、持ちつ持たれつになれそうだと思えば人脈をキープしておきたくなる性質だった。多様性と社会性に価値を置いたその判断は、ハイエナが群れる生き物だからだろう。
 その結果が、防犯コンサルタントである。ラギーはあの手の性欲の発露があまり好きではなかったし、幸運にもどう立ち回るべきかを知っていからだ。馬鹿な野郎が寄って来るなら、食い物にしてやればいい。そう言って彼女の側に立つのは爽快感があった。
 狙われ続ける弱者のままでいるのは愚かな事だ。
 彼女が擬似餌で、ラギーが狩手。捕らえた獲物と搾り取った慰謝料は仲良く分配。そして馬鹿は骨までしゃぶれ。それがハイエナの流儀であると、ラギーは草食動物だった彼女を強かな雑食動物にプロデュースした。
 流石にトラブルの元になるから美人局のように積極的に仕掛ける真似はさせられないが、魔法も使えない上に身寄りも無い非力な女子であれば甘く見て突っ込んでくる輩は少なくなかった。何せ、高等教育機関の中では最悪の治安を誇るナイトレイブンカレッジなので。

 現状、それは中々に成功し、ラギーと監督生は良好かつビジネスライクな師弟関係を築いていた。


 最後のラビオリをグリムの小皿に載せてやった監督生は、紙ナプキンで口元を拭った。
「ふなっ、さすが子分! 気前が良いんだゾ」
「ええ。分け前は仲良く分配、でしょ」
グリムが御機嫌に礼を言う。この猫のようなモンスターは、美味しい物を食べると妙に堪能なレポートをするので愛嬌があった。梨と青黴チーズの相性が以外にも抜群なんだゾと頬を押さえたグリムに、監督生がクスクス笑った。
 監督生はラギーの実家周辺の子供達に比べて大きいし育ちも良いが、この一年の擦り込みで彼女を新しい妹分のように思えてしまうようになっていた。何せ、ラギープロデュースの小さなハイエナなので。
「ラギー先輩にご紹介したい人が居るんですけど、今良いですか?」
「しょーがないッスね」
そう言いつつも、ラギー聴覚は既に背後に人が来ているのを捉えていた。

 監督生が紹介したのは、小柄な一年生の獣人だった。綿雪のような白い兎の耳が生えている。肌も透き通るように白く、赤い眼は大きくて特に意味も無く潤んでいる。その儚い美貌はポムフィオーレの者かと思いきや、ハーツラビュル生らしい。ラギーは同じ部の後輩に当たるエペル・フェルミエを思い出した。けれど、彼はエペルようなギャップは特に持ち合わせておらず、ただ声の小さい成長期前の少年だった。
「彼、私と同じ悩みがあるんです。お力を拝借できませんか」
監督生と彼は、ハーツラビュルの何でもない日のパーティーで知り合ったらしい。男の身だが、多分その辺の女より可愛いことは頷ける。そういう類の男はヴィル・シェーンハイトを筆頭にポムフィオーレに掃いて捨てる程居るが、彼には圧倒的に迫力が足りていなかった。結果、可愛いという要素は侮られる符号にしかならず、邪な連中に眼を付けられてしまうのだろう。
 ラギーは平べったい眼をして、兎獣人を見て唸った。どこからどう見ても草食動物。それも小動物。
「元お化け屋敷のオンボロ寮と違ってハーツラビュル寮ならセキュリティしっかりしてるっしょ。あそこ規範意識高いし、リドルくんはそういうの絶対許さない人ッスから」
監督生に手を貸したのは、あくまでラギーにも利益があるからだ。規範意識が高い上に常に満員御礼の人口過密なハーツラビュル寮では、ラギーの不審者用トラップが必要になる可能性は少ない。そもそも防犯目的とはいえ、個人的なリフォームが許されるかどうかも分からない。護身術や振舞い方を仕込むくらいは出来るが、手間と取り分が釣り合っているかといえば、微妙だ。兎獣人の常から潤んだ瞳や日焼けを知らない細腕からは、筋が悪そうな予感しかしない。その程度なら、彼に割く時間をモストロ・ラウンジのシフトを増やす事に宛てる方が確実に稼げる。
「僕、肉食動物になれないでしょうか」
兎獣人が、小首を傾げて上目遣いに問う。媚びるには最適な顔だが、肉食動物になりたいと願う者の仕草とは遠かった。
「そもそもハイエナは雑食ッスよ」
素気無く指摘してやれば、兎耳が申し訳無さそうにヘニョと垂れた。グリムが半眼で「弱い者イジメしてるみたいなんだゾ」とぼやく。弱肉強食の掟に従って強さこそが正義を掲げるサバナクローなら、鬱陶しがられるであろうタイプだ。

 だが意外にも、兎獣人は食い下がった。
「ウ、ウサギだからって揶揄われるの嫌なんです」
小さな握り拳を胸の前で震わせて、顔を真赤にして声を絞り出した。
「知ってるでしょう、ウサギは、ま、万年、発情期って、そんな、馬鹿みたいなセクハラ」
変声期前の声には、羞恥と悔しさと屈辱が滲んでいた。馬鹿みたいな事言う奴が居るのね、と監督生が眉根を寄せる。人間には馴染みのない種族差別だが、獣人の間では鉄板と言うべきネタだった。ハイエナにも、その類の因縁の付け方はある。
「サ、サバナの先輩が、そういうの、黙らせたかったらラギー先輩に聞けって、おっしゃったんです……その、先輩、ハイエナだし、」
サバナクロー生にしては華奢で小柄だし、と続く気配を感じ取ったラギーが小兎を黙らせる。ハイエナには昔、雌雄同体と信じられていた時代があった。それはハイエナの雌の生殖器が男性器が備わっている状態に似ている為に雌雄の区別が付けづらい事に由来するが、今では専ら小柄な男を女の子扱いして揶揄する弄り方として使われていた。入学当初のラギーは今よりうんと背も低く痩せていた上に非力だったので、その話題に関しては全く良い記憶がない。
「言っときますけど、オレはナメてかかってきた奴は全員後悔させてやっただけッスから。ウサちゃんに出来るかどうか」
ラギーが挑発的に笑う。生え揃った白い歯が健康的な愛嬌を醸すが、それを開閉させるのは陸生哺乳類でトップクラスの咬合力を持つ顎だということを忘れてはいけない。
 確かにスラム育ちの欠食児だったラギーは、入学時は同年代よりうんと細くて発育も遅れていた。しかし、意地汚さとサバナクローに選ばれるだけの不屈の精神が備わっていた。寧ろ、苦労した事のない甘ったれた同年代より、過激な生存競争を生き抜いたラギーは闘争心と狡猾さが強かった。相手の牙を叩き折る為に手段を選ばなかった。ラギーの個人的見解ではあるが、多少骨が折れようが歯が抜けようが、養護教諭まで優秀な魔法士が揃っている学園なら、致命傷すら掠り傷だ。だから多分、嘗てラギーが散々に金的をお見舞いした上級生も、かち割ったオイルランプで人相が変るまで殴った同級生も、校舎の最上階からコードレスバンジーさせた他寮生も、未だ死んだ事はない。血で血を洗うスラムのイズムに従えば、手を出せば無事では済まない事を身体に叩き込んでやる事は、自衛手段の一つなのだ。
 そして、強くて賢いものが偉くなれるサバナクローにおいて、手段を選ばない事と物理的な強さを証明する事はこの上なく有効だった。ついでに、そんなハイエナを面白がったレオナにだけは尻尾を振っておくなど、身の振り方も決して間違えなかった。
 いずれにしても、吃音気味の小兎には向かない手段だ。
 

 ところが監督生は、サバナクロー流が彼に向かないのは百も承知だと言い切った。
「乱闘はしません。決闘を私的に開催します。勿論、彼はハーツラビュル生ですから、校則に則って魔法は使わずに」
小兎が、首が千切れんばかりに頷いている。この二人の間では既に決闘の条件については打ち合わせが済んでいるらしい。魔法無しの決闘となれば、手段を選ぶ分だけ体格が劣る方が不利である。小兎には最悪の選択ではないかとラギーは思ったが、喋っているのが身内なので取りあえずは最後まで聞く事にした。
「目的は、やられっぱなしの小兎じゃないと証明する事。そして万年ナントカとかいう侮辱を撤回させる事。そこでラギー大先輩へのご相談が三つあります」
マッチョイズムと性欲の悪魔合体したハラスメントに晒される理不尽さを実体験として理解している分、監督生の口調には熱があった。ラギーもその手の劣情が生み出す悍ましさには共感するが、他人の事情に首を突っ込むかは報酬次第という賢いドライさも持ち合わせていた。
「一つ、決闘はモストロ・ラウンジで中継して賭けの対象にします。よって私とラギー先輩は、従業員として機材の搬入と撮影の仕事をしなくてはなりません」
監督生が人差し指を立てた。小兎が、モストロ・ラウンジのポイントカードを三枚ラギーに見せる。そして、この賭博で得る報酬は、モストロ・ラウンジとラギーで分配してほしいとの事だった。取りあえず、これなら支配人のアズールは了承するに違いない。
「二つ、草食動物に戦い方を教えてください。私に護身術を仕込んでくださったみたいに。あと、できるならカメラ映えする派手な技も」
これにはコンサル料を払います、と小兎。監督生は得意気に二本指を立てていた。とはいえ、ラギーが知る限り、監督生が男子生徒を相手に有効な体術を行使している様子は見た事がなかった。大抵はその手段に至る前の予知防犯スキルが役立つか、異様に早い逃げ足を披露して終わるからだ。
「それで勝てる体格差なんスか?」
「いいえ、まったく。でも大勢の前で戦うからにはインパクト重視のジャイアントキリングを狙います」
決闘には不届き者達の中で一番大きく逞しい男に果たし状を送ると宣言する監督生。特徴を聞けば、猪の獣人だと明かした。益々勝ち目が薄いが、監督生はラギーが協力すると信じて疑わない眼差しで喋った。そして彼女は、三本目の指を立てて笑う。

 「三つ、勝たせてください」
監督生の唇が、これ以上なく吊り上る。口を押さえて笑う彼女には珍しい、歯の見える笑い方だった。それはラギーにユニーク魔法で報復に笑顔を強制されたレオナの表情によく似ていた。
「……何が、ハーツラビュル生ですから校則に則って魔法は使わずにッスか」
監督生が今度こそ本当に笑った。

 要は、決闘の場所に中継係として自然に近付き、ラギーのユニーク魔法で相手の体の自由を奪って負けさせろというのだ。正攻法もあったものではない。
「つか全部オレ頼みじゃないッスか」
「ラギー大先輩ならできるでしょう?」
少なくともマジフトの有力選手を一人一人怪我させていくよりは簡単だろう、と言われてはラギーも笑うしかない。
「成功報酬も出るんスよね?」
小兎が出します! と跳ねるように返事をした。
「アンタ運動神経良い方ッスか?」
「は、反射神経と跳躍力なら」
「目潰しとかできそうッスか?」
「や、やります!」
「金的蹴ったりは?」
「が、がんばります!」
「あと、上目遣いだとか小首傾げんのだとかは油断させる手段として使うんスよ」
「はい!」
妙に威勢の良くなった小兎の返答に、ラギーは合格を出した。
 そして、自身の制服のポケットから折り畳みの財布をだして、小兎に押し付けた。
「じゃあ、コレは成功報酬ってことで。一旦返すッス」
僕の財布、と小兎が怯えた声を出す。ラギーは、くだらない相談でも手間賃くらいは頂戴する予定でいたのだ。だが、小動物の見せた狡猾な闘争心に免じて紙幣を一枚抜いただけで返却する事にした。

 ラギーの手癖の良さを知らなかったらしい小兎が、まるで手品でも見たような素っ頓狂な顔をしていた。
「おやおや、ラギーさんにお近付きになるなら、ポケットにも鍵をしなくてはなりませんよ」
昼休みも終わろうかという頃、漸く事の始末が終わったらしいアズールがテーブルに挨拶に来た。いつかの事を根に持っている。けれど、次の瞬間にはいつもの接客用の笑みで空いた皿を下げ始めていた。その手袋は新しいが、ラギーは彼の腕から落とし損ねた血の匂いを感じ取っていた。
「そうですね、中継がしたいのなら機材はイデア・シュラウドと交渉しては?」
「ちょっと、何処から聞いてたんスか」
そういう話はもっと一目に付かない所でした方が良いですよと微笑まれ、悪党としてマウントを取られた。だが寧ろ、その悪どい微笑は彼等に安堵を与えた。タコとハイエナは拝金主義同士、利害が一致する限りは仲が良いのだ。計画は上手くいくだろう。

 この学園で生き残りたいなら、ハイエナを敵に回さないことだと、小兎は悟った。



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