架空文化祭-開会

 性奴隷を養成する学園であろうとも、文化祭は行われる。
 有志発表として当たり障りの無い催しもあるが、性奴隷としての性的なパフォーマンスを発表するのがメインだ。体育祭同様、扶養者がいない生徒にとって、出資者に自身をアピールして飼い手をつけるには格好の日である。

 文化祭当日、ビップ待遇で学園に招かれていた出資者、藤堂は廊下で生徒を犯していた。
 校則によって短過ぎる丈に指定されたスカートは、捲くるまでもなく尻を突き出すだけで簡単に性交を可能にしていた。壁に手を付かせ、背後から腰を掴んで揺すってやれば、日々男を喜ばせるための調教を受けている生徒は簡単に甘い声を出した。
 学園は、扶養者のいない生徒と出資者の性行為には寛大だ。こうして身体の相性を確かめた事が切欠で生まれる縁もあるからだ。
「ああんっ悦い、ああっ」
 窓越しに見える体育館では、既にオープニングセレモニーが始まっているらしく、歓声と熱っぽい拍手が聞えていた。
「悦いっ、おしりっしゅごひぃっ! おちんぽ様ゴリゴリしてるっあああんっ……さいこぉれすぅっ!」
生徒のあまりにあけすけな声に、藤堂は苦笑する。
「こら、過剰なリップサービスは萎えるよ」
「あんっほんとれすぅ! あっああっソコ、もっと悦いよぉっ! ごしゅじんさまっさいこぉ!」
お喋りが過ぎると諌めながら、強めに乳首を抓んだ。けれど大した効果は無かったようで、生徒は大仰に喘ぎ続けた。
 この生徒は、タツキといった。学園側か藤堂にコンパニオン兼案内役として付けた生徒だった。書類上のプロフィールでは、3年C組の学級委員長で、素直で真面目な生徒であると記載されていた。最高学年にして未だ主人がついていない事もあって、焦っているのかもしれないが、この子の場合は単に頭が良くないようであった。
「もうハンカチ噛んでなさい」
藤堂は、タツキにハンカチを噛ませて黙らせた。タツキは、彫りが深く中性的な顔立ちで、とろりとした垂れ眼がベルニーニの聖テレジアの彫像を思わせる容姿をしていた。白く滑らかな膚も相俟って、神聖さすら感じる荘厳な美しさがあったが、口を開けば台無しだった。舌足らずで、情緒を感じさせないあけすけなお喋りだ。ソファの上なら楽しいだろうが、ベッドで飼うには向かない。これが恐らく、タツキに未だ主人がいない理由だろう。
「ンンム〜〜ッ」
奥までペニスを突き入れて緩慢に引き抜けば、雁首が悦いところを擦っていくのだろう、タツキの膝が踊る。鼻から荒く漏れる吐息が甘い。色っぽい造形の垂れ眼が、快楽に蕩けて目尻に涙を溜めていた。耳まで赤くして、壁に付いた手を震わせる姿は艶めかしい。尻の締まりも素晴らしい。やはり、喋らなければ完璧だった。

 藤堂は、タツキの尻の最奥に射精した。
 その間にタツキも何度か達しており、スカートの内側を汚していた。藤堂はタツキの口からハンカチを引き抜き、床に垂れた精液を舐め取らせた。タツキは素直に尻を上げ、犬のような四つ這いになって床を舐めた。人権を剥奪された者としての作法を叩き込まれた、従順な態度だった。
「もう良いよ、立って。文化祭を案内して」
まだ開閉している肛門にハンカチを捻じ込んで精液が漏れないようにしてやり、藤堂はタツキを立たせた。
 尻に異物を詰められた彼は、落ち着かない顔で膝を擦り合わせたが、従順に返事をした。体育館では、とうにオープニングセレモニーも終わった頃だろう。


 藤堂は、長らく飼っていた男を逃がしたばかりだった。
 プラチナブロンドの癖毛が美しい、性の奴隷として犬同然に可愛がってきた男だった。数えてみれば十年近い付き合いになるが、その男も最初はこの学園に通わせて奴隷の作法を学ばせたのだった。購入費も教育費も、決して安くはなかった。けれど、藤堂は彼が居なくなった事を寂しく思えど、惜しくはなかった。
 逃げられたのではなく、藤堂の方から手放したからだ。
 その男があまりに従順で賢く、健気だったから。男が毎朝淹れてくれる珈琲が素晴らしかったから。男が、バリスタになりたいという夢を零したから。
 藤堂は、彼の人権と戸籍を買い戻してやり、ヴェネツィアの一等地に洒落たバールを建ててやったのだった。後腐れも無く、寧ろ希望のある別れ方だったように思う。
「悔いは無いんだが、生活にハリが無くなってしまってね。やはりペットロスの侘しさを埋めるのは新しい子犬だろう」
体育館に向かう道中、藤堂はタツキに新たなペットを探す動機を打ち明けた。
 しかし、どのような生徒を所望しているのかと問われて、答えに窮した。購買意欲はあれど、肝心の選考基準が全く定まっていなかったのだった。
「……まあ、珈琲好きの子は暫くいいかな」


 藤堂が体育館に脚を踏み入れた頃には、有志発表の部も後半だった。
 軍服風のコスチュームに身を包んだ男達が、軽音バンドを披露している最中だった。
 有志発表に関しては、一般の文化祭と同様に健全な出し物が多い。そういう余裕のある生徒は既に扶養者が居て、今更性的なアピールをする必要も無いからだ。けれど、普段の制服が露出し過ぎている事も相俟って、男らしい格好をしている彼等の方が淫靡に見えた。
「あのヴォーカルとキーボード、うちの子なんですよ。良い音を出すでしょう」
隣の席に座った男が、藤堂に話しかけた。藤堂の隣に控えたタツキも、会釈を返した。
「そうですか。いや残念だ、あのブロンドのヴォーカルに艶っぽい声を出させたらさぞ楽しいだろうと思っていたのに」
そう返事をした藤堂は、隣の客が国際的交響楽団の常任客演指揮者を務める偉大なマエストロだと気付いた。しかし、その事に触れるのは止した。この学園の客として来ている今、身分や仕事を話題にするのはナンセンスだと心得ているからだ。
「歌える子も良いですね」
藤堂は手持ちのタブレット端末で、売り出し中の生徒のデータから音楽の得意な生徒を検索した。
「ええ、いいものです。多頭飼いは音楽性の違いで解散するリスクもありましたけど」
「流石にそれは貴方だけでしょう」


 軽音バンドが終われば、漫才、手品と来て、あっと言う間に有志発表は最後の演目を迎えた。
 照明が暗転して、艶かしい桃色のライトだけが舞台中央を照らし出す。スポットライトを浴びて輝くのは、すらりと伸びた一本の鉄棒と、客席に背を向けて立つ少年の姿だった。衣装は、黒いサテン地のベビードールで、レースのあしらわれた腿上スカートのサイドには深いスリットが入っていた。ガーターベルトとストッキングが、白い太腿とよく締まりそうな尻を強調している。
「ポールダンスか。まさか有志発表で見られるとはね」
片手に持ったポールを支点に、少年が長い脚を見せ付けるようにステージ上で一回転する。足元を飾るピンヒールは、華奢な上に極めて踵が高い。女性でも履きこなすのは至難であろうが、彼の所作は猫のようにしなやかだった。
「あっ、ミサキ君はダメですよ。彼、主人持ちですもん」
とんだ積極性だと興味を示した藤堂だが、すかさずタツキが口を挟んだ。舞台上の少年、ミサキは校内でも有名な淫乱らしい。主人に出場するよう強制された訳でもなく、本当に自主的に自身の淫靡な姿を見せ付けることが楽しいのだろう。ミサキは蕩けた笑みを浮かべてポールに絡み付いていた。

 ミサキは片手で器用にショーツの紐を解くと、脱げたショーツを足首に引っ掛けたまま片足を上げた。ショーツはほぼ紐と言って差し支えない形状だった。体を覆う布よりも、レース装飾の方が面積が大きいのだ。そのまま流れるような所作で脚を蹴り出せば、下着は客席へと放られた。軽過ぎた投擲物は飛距離こそ無かったが、観客席は大いに沸いた。その反応に、ミサキは挑発的に笑ってみせた。これではまるで、ミサキの方が主人だ。
「ミサキのエッチなとこ、見たぁい?」
声が甘い。この男は、性的な関心を向けられる事を心底愉しんでいた。ノリの良い観客達が、彼を一時の熱烈に拍手を送る。
 それに応えてポールを後ろ手に持ったままのミサキがゆっくりとしゃがみ込めば、外側に向いた膝が広がって、蹲踞の姿勢になった。その中心で、そそり勃った陰茎がサテンを押し上げている。腰を突き出した姿勢のまま前後左右に身をくねらせれば、陰茎も瑞々しく弾んだ。
 ミサキは腰を揺すりながら立ち上がり、ポールに陰茎を添えたまま身をくねらせる。兜合わせでもするかのように腰を振り、陰茎で遊んでいる姿を見せ付けた。腰を前後させる度に締まる尻の動きも、何処も彼処も淫靡だ。藤堂も気を良くして拍手に加わった。
 拍手を受けて、ミサキは愛想良く微笑んだ。両手でポールにぶら下がると、緩慢な速度で回りだす。よく手入れされた陰茎が全方位余すところ無く晒された。細身だが皮は完全に剥けていて、亀頭は熟れたプラムの色をしていた。
「おまんこも見たいでしょ?」
ミサキはポールにぶら下がったまま、片足を上げて誘った。器用にも、片手で股間を抑えて局部を隠して焦らしている。当然、観客の反応は決まっている。
 体幹の逞しさと柔軟さを併せ持つ身体が、蠱惑的に撓る。あの身体はさぞ愉しいセックスをさせてくれるのだろうと、誰もが連想したに違いない。ミサキ自身、そう思われる事で官能を得ていた。欲情を隠さない熟れたプラムの先から、蜜が滴っている。

 ミサキがゆっくりと、片手を股間から離す。
 そこは、黒い小さな板で塞がれ、肝心の粘膜部分を隠していた。黒い板は、ディルドの土台だろう。そんな物を食んだままパフォーマンスをしていたのかと感心すると同時に、予測を超えた淫売ぶりに観客達は一層彼を気に入った。
「でもダメでぇす。ココはゴシュジンサマ専用なので」
ミサキが明るく言い放った。悪戯が成功した悪餓鬼ような、陽気な顔だった。先程までの淫靡な艶はすっかり引っ込められて、まるで夢から醒めたみたいに一気に熱気が逃げていく。
 当然、期待させられた観客からはバッシングの嵐だ。轟々の批難を浴びて、教員達が舞台を大急ぎて暗転させた。
「……面白い子ではあるんだけどね、ミサキ君だっけ」
暗闇になった舞台の上で、教員に引きずられて舞台袖に回収されるミサキのシルエットが藤堂の眼に一瞬だけ映った。タツキが血相を変えて首を振る。
「ダメですっダメっ」
観客席の前方だけ、一部だけが大いに笑っていた。体格の良いスーツ姿の男が、周りからしきりに肩を叩かれて揶揄われている。その男がミサキの主人なのだろう。
 確かにあの生徒の主人は楽ではあるまい。けれどやはり、若い男を飼っている男は皆、藤堂の目には愉しそうに映るのだった。


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