架空長身生徒

 シジマの新たな扶養者が見付かったのは、同期の殆どが扶養者と進路を相談し終えている最高学年の秋だった。

 クラスメイト達が文化祭の準備に忙しなく動く放課後、シジマは職員室で担任と新しい扶養者と形式的な面談を行った。
 面談だの契約だのと言っても奴隷である生徒に人権など無いのだから当然意見を許される筈も無く、それはただ扶養者が学校からシジマを正式に買い取る為の契約に過ぎない。面談の主な話題は、今後の調教プランや購入金額と保障サービスの話ばかりである。おまけにシジマは、愛玩用の少年というには武骨に成長し過ぎていた上、元々主人が居た為に処女でもなかった。不良在庫を出したくない学校と安く買い上げたい主人の利害が一致したばかりにシジマは値切りに値切られ、己の尊厳が如何に無価値かを突きつけられていた。

 職員室の来賓用ソファは無闇に柔らかく、シジマは居心地の悪さを感じながら書類を見詰める。
 破廉恥なセーラー服に包まれた彼の身体は、そこらの大人より大きく、筋肉で張り詰めている。同年代の生徒達が可愛い小型犬なら、シジマは闘犬と称する方が相応しい体躯だ。もし在学中に主人がつかなければ、その手の見世物として更に安く惨めに売り払われるであろう事は目に見えていた。だからシジマは、屈辱的な面談も膝の上で拳を作って耐えた。
「在学期間が延びても構わないんだが、もう少し躾け直す事は可能かな?」
新たな主人が、シジマにとって全く有り難くない提案をすれば、教員は間髪入れずに肯った。シジマの新たな主人を探すのに随分と苦労した担当教員は、何としてもここで契約を成立させたいらしい。
「それは良かった。具合は良いんだが、少々堪え性が無いのが気になっていてね」
主人はシジマの太腿に手を置いた。小太りな主人の蒸しパンのように福々とした指が、内腿を這って短過ぎるスカートの中へと潜り込む。
「確かに。前の主人には甘やかされていましたからね」
相槌を打つ教員の前で、シジマは陰茎が緩慢に扱かれる。シジマの陰茎が大きいのも相俟って、勃起すると学校指定の薄く小さなパンツは簡単に意味を成さなくなってしまう。
「へえ。可愛がってもらってたんだ?」
シジマは荒くなる息を抑えて、低い呻き声を奥歯で噛み潰した。
「こう見えても、シジマは去年までは小柄な美少年だったんですよ。それはもう花よ蝶よと可愛がられてて」
答えられない生徒に代わって教員が彼の過去を明かした。主人はシジマのペニスを捏ね回す手を止めぬまま雑談を続ける。
「成長期って残酷ですよね」
「ええ全く。しかしお陰で良い買い物が出来ましたとも」
教員と主人が笑い合う。シジマの射精欲が高ぶってくると、主人はすかさず手を離した。逞しい肢体を震わせて呻くシジマだけが、只管に惨めだった。


 それからシジマは、契約が正式に纏まって職員室から出ても、射精を許されなかった。
 硬く立ち上がったペニスが多量の我慢汁で汚れたスカートを持ち上げた無様な状態のまま、シジマは廊下を歩かされた。教室では生徒達が文化祭の準備で盛り上がっているというのに、シジマは歩く度に淫靡な音をたてる濡れた股間が気になって仕方が無かった。動く度に亀頭に擦れるスカートも、酷くもどかしい。脚を伝って流れる我慢汁で、太腿を覆う靴下まで濡れていた。
「シジマの学年の展示は?」
教室を遠目に覗きながら、主人が世間話を振った。
「……競馬、です」
「ついに文化的な要素も捨ててきたな。で、どんなルールかな」
文化祭といえど、性奴隷を養成する学園の催しだ。有志の展示や発表以外は性的かつ屈辱的なものだと相場は決まっている。
「木馬に跨った騎手が射精する順位を賭けられます」
今頃シジマのクラスメイト達は、学年ぐるみでディルドの付いた木馬を作らされている筈である。
「ふうん。早く教室に戻って準備に参加しないといけないね」
主人の指が、悪戯にシジマのペニスに絡んだ。丸い指先が、血管の浮いた陽物の輪郭を辿る。
 それが、シジマの堪忍袋の緒を切った。


 散々に焦らされて張り詰めた性欲が、シジマに敬語を忘れさせた。
「いい加減にしてくれ!」
教員が聞いていたなら懲罰は必至であろう。しかし文化祭準備中の多忙な時間帯のお陰か、彼を諌める者は居ない。純粋な腕力とて、小太りな主人よりも若く逞しいシジマの方が強かった。
「……好き勝手しやがって」
シジマの大振りな手が、主人の腕を引っ掴んだ。力と体格の差が金銭契約で作られた主従関係を反故にした瞬間だった。
 堪え性が無いと揶揄されたシジマのペニスは、凶暴に脈打っていた。


 シジマは教室には向かわず、無人の資料室に主人を引き摺り込んだ。
 主人のスラックスからベルトを乱暴に引き抜き、下着ごと摺り下ろす。脂肪でたるんだ尻だが、肉厚で征服の甲斐はある。シジマは己が嘗てされてきたように、主人の尻朶を指で割り開いた。
「ひいっ、や、やめっ」
主人は藻掻くが、膝の辺りに引っ掛かったスラックスが絡んで碌な抵抗になっていなかった。これ以上の抵抗をされては厄介だと感じたシジマは、衣服を引き戻そうと足掻く主人の腕を取って、スカーフで縛り上げる。
「ムぐぅっ」
騒がれても困るので、シジマは主人の口に己のソックスを詰めた。学校指定のソックスは薄くとも長いので片足だけでも充分な量になるが、念の為に両足分の布を突っ込んだ。男子生徒の上靴の中でほぼ一日蒸れていたソックスは、饐えた匂いがした。口に詰められた汚物に拒否反応を示して嘔吐く主人は涙目だった。
「……アンタは今から俺に犯されるんだ」
シジマは、主人の菊門に濡れそぼった陰茎を擦り付けた。夥しいカウパーが、尻の割れ目を滑る。
「妥当だよな、俺の方がチンポでっけえしさ」
菊門の皺を引き伸ばすように亀頭を押し付けたり、尻朶に挟んで陰茎を扱いたりと、シジマは怯える主人に己の男性器の存在を認めさせた。
「ンむぐっ」
尻の割れ目に溜まったカウパーを指で掬ったシジマは、その指をアナルに押し入れた。優しく時間をかけて慣らそうなどとは決して思わなかった。尻穴を暴く指は直ぐに増やされていく。屈辱を教え込むようにシジマの指が主人の前立腺を揉み込めば、悲鳴とも嬌声ともつかない吐息が轡代わりのソックスに吸われていった。
「ほら、二束三文で買った奴隷に犯される気分はどうだ!?」
「〜〜ッンンヴゥッ!!」
遂にアナルに潜り込んだペニスに、主人が豚じみた濁音を発する。首を振って拒否を示す主人だが、それで止まる筈もない。
「お前等ゴシュジンサマは、嫌っつったらやめてくれたか?」
シジマが主人の耳元に口を寄せて、恨み言を囁く。まだ未成年とは思えぬドスの利いた低音は、凶暴さの中に隠しきれぬサディスティックな愉悦が滲んでいた。シジマの怒張が、優位性を身体に教え込むように前立腺を小突く。その刺激に生理的な反応で臀を締め付けてしまった主人は、目を白黒させて震えた。前立腺刺激で強制的に勃起させられる屈辱と恐怖は、奴隷だろうと主人だろうと共通なのだ。
 鼻水も出てきて本気で窒息の危険を感じたらしい主人は、次第に嘔吐いたり声をあげようとするのを止めた。ただ口に詰められたソックスを、啜り泣き混じりの嬌声が湿らせる。


 元々シジマは、可愛らしい美少年として目を付けられて誘拐され、この世界に放り込まれた。
 一度目の主人には、確かに甘やかされた。それなりに可愛がられてきた。けれど成長期を迎え縦にも横にも大きくなっていったシジマは、可愛くなくなったと捨てられた。主人は所謂少年性愛だったのだ。成長する生き物を飼っておきながら、それが気に食わないなど勝手にも程がある。けれど、その我儘は圧倒的な立場の違いによって罷り通った。主人にとって、ここの生徒を飼う事はペットショップで犬猫を買う事と変わりはしないのだ。

 シジマは、己の下で無様な姿を晒す新たな主人を睥睨した。
 新たな主人を探すのは骨が折れた。何せ、美少年を名乗れた前回とはまるで勝手が違った。その上、逞しい大きな男を愛玩したがる男というのは、厄介な性癖を抱えている者が多かった。厚い背中になら鞭の痕も映えるだろうと、嗜虐趣味の男に声をかけられる事も少なくない。いっそその方向性で売り込もうと提案する担当教員と揉めたの記憶に新しい。

 漸く得た今の主人も、やはり随分と好色で、勝手だった。

 シジマの下で不自由な身体を捩っていた主人が、一際身体を震えさせる。
「勝手にイきやがって。奴隷にレイプされて悦ぶなんざ変態かよ」
尻を犯された主人は、太ましい陰茎から白濁を漏らしていた。達したばかりで過敏になったの主人の身体を気遣う事無く、シジマは一層抽挿を激しくした。
「ムブブブッ、ンムグゥッ」
それは抗議か懇願か、主人が首を振りながら不明瞭な音を出した。すっかり濡れたソックスから、涎が滴っていた。
 シジマは荒い息を吐き、太い腰を掴んで腰を振りたくる。その度に、皮下脂肪に包まれた主人の腹が波打つように揺れた。手入れされていない会陰に、シジマの脱毛済みの睾丸が幾度も押し当たる。
「あぁ俺ももう出るっ」
シジマの睾丸が競り上がる。勝手に陰茎を扱く事すら禁じられている学校では、久しい雄の悦びだった。奴隷の精液が、勢いよく主人の直腸を汚す。


 射精後の冷静さがシジマに戻ってくる頃、最終下校の放送がかかった。
 生徒は学校を出て寮に戻らなくてはならない時刻である。時期に、教員が学校各所を見回るだろう。この資料室とて例外ではない。
 シジマは、己の行いの始末の悪さに深く息を吐いた。
「あー……、ゴシュジンサマ平気?」
シジマが雑な所作で主人の口に突っ込んでいたソックスを引っ張り出した。やはり両足分のソックスは嵩があり過ぎたようで、主人は背を丸めて咳き込んだ。
「口の中がしょっぱくて最高」
「変態じゃん、いや変態だった」
次いで、腕を縛るスカーフを外す。シジマの新たな主人は、奴隷に犯される事に興奮する被虐嗜好の変態だった。
「君はもっと下品でオラついた言葉をお勉強しようね」
行為が一段落付くや否や反省点を述べる主人に、シジマはゲンナリと溜息を吐く。シジマは、このようなロールプレイに慣れていなかった。寧ろ、以前の主人には能動的に攻めるなど、茶番であっても決して良い顔はされなかっただろう。

 両腕が自由になった主人は、シジマの股間に顔を埋めて陰茎をしゃぶる。とことん淫乱な好事家なのだ。
「あの、そろそろ出ないと先生来ちゃうかも」
シジマのささやかな抵抗など意に介さず、主人はわざと下品な音をたててペニスを舐った。
「誰かさんが早漏だから足りないんだよ」
堪え性がない、と揶揄しながら主人はシジマのアナルに指を滑らせた。学園や前の主人によって開発されきったそこを刺激されると、シジマは堪らない。一度萎えた陰茎も、再び硬さを取り戻してしまう。つい甘い声を漏らしてしまうシジマに「可愛い子ぶるな」と辛辣だ。
 犯される為に躾けられていたシジマだが、この主人相手にはその経験則が一切通用しないから厄介だ。それでも漸く得た主人だ、要望には答えねばなるまい。シジマは諦めて、茶番の続きに付き合う事にした。
 シジマは意を決して主人の髪を掴み、頭を揺さぶって陰茎で激しく喉を突く。此処で気の利いた罵倒の一つも言うべきだろうが、シジマは要領が良くなかった。喉奥を犯されて、主人は嘔吐きながらも愉悦の表情を浮かべていた。


 結局、シジマは日が暮れるまで主人の我儘に付き合った。
 主人が分厚い尻でシジマの精液を三回搾り取っても、見回りの教員は資料室に来なかった。正しくは、シジマの担当教員が見回りを買って出てくれたお陰で事なきを得た。彼が主人の楽しみの為に人払いをしていたのだ。
「他の生徒や扶養者様には秘密にしますとも」
担当教員は主人の悪癖を知っていたらしい。口止め料を含む袖の下を涼しい顔で受け取っていた。そもそも、無骨に成長し過ぎたシジマをこの主人に売り込んだのも彼なのだから、全ては計算済みと言えよう。
「勿論、監視カメラの記録も消しておきますとも」
生徒のプライバシーを一切考慮しない学園には、至る所に監視カメラがあった。生徒が隠れて自慰をするのを罰する為でもあるが、自傷や逃走に対応する為でもある。つまりは、職員室に居る教員のほぼ全員がシジマの下手な茶番セックスを監視していた訳である。その事に気付いたシジマは、顔を赤くして俯いた。

 擦れ違いざま、教員は馬にでも接するようにシジマの尻を叩いた。
「下手糞め」
シジマの耳元で、教員は声を潜めるでもなく酷評した。聞こえていたであろう主人だが、特にフォローはない。シジマは当面の補修を覚悟した。
 新たな主人を得た生活も、やはり困苦に満ちていた。
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