架空宗教施設

 防砂林に隠され、俗世とは隔絶した宗教施設。
 真白の外壁と遊び気の無い外観は病院を思わせるが、信者が集団生活を営むそこの内装はホテルに近い。出入りする男女は揃って古代ギリシャのキトンを思わせる白い布を身体に巻いただけの格好で、挨拶代わりに幸福のサインと祝詞を交わす。
 バランスの良い食事と、規則正しい運動習慣を叶える設備、穏やかで和睦を尊ぶコミュニティ。それらは現代人の凝り固まった身体と精神を解し、新興の神を支持するに値する癒しと救いを与えていた。

 湯瀬は、施設の四階に部屋を貰って生活を営む信者の一人だった。伸びやかな躯体を膝丈の白布で覆った姿は、ギリシャ彫刻のように精悍だ。抜群の外見の通り娑婆には友人も多い男だが、今は単身で新興宗教に身を浸している。宗教にのめり込む程の悩みも無さそうな快活な男だが、夕食後の説法には毎回欠かさず参加しする熱心な信徒だ。寧ろ、新人にも親切で、幹部連中からの覚えもめでたい。此処では極めて模範的かつ優秀な信者であった。
 しかしそれはあくまで仮の姿。
「湯瀬くん、ライター目指してたのかァ」
いつものように夜の集会で教祖の説法を聞いた湯瀬は、神官と呼ばれる幹部に肩を叩かれ、地下へと連行された。幹部の手には、湯瀬が三日前に投函した筈の封筒があった。その中には、湯瀬が施設に潜入した記録が収められたUSBメモリが入っている。
 湯瀬はノンフィクション作家を目指し、この宗教に取り込まれて姿を消した人々を追って活動潜入を行っていたのだ。
「残念だったね。此処の最寄のポストに投函されたモノはね、一旦検閲してから俗世に配送されるようになってるんだよ」


 地下は、幹部や教祖も住む「より深い修行の場」であり、湯瀬のような背信者を折檻し更生させる施設でもあった。
 今まで地上部分にしか通された事のなかった湯瀬が其処を訪れるのは初めての事だった。

 たった布一枚だった衣服を剥がれ、X字の磔台に四肢を固定された湯瀬は不安に身を捩る。
 彼が連れ込まれたのは全面タイル張りの部屋だった。壁面にはモザイクタイルで構成された極彩色の曼荼羅が描かれ、床は白一色のタイルだが一箇所だけ排水口が備わっていた。湯瀬の脳裏に過ぎったのは、水責めの文字。
「や、やめ……もう止めるっ作家は諦める、デ、データも消すっだだ、だ、だから……」
助けてくれ、と湯瀬は叫んだ。けれど湯瀬を囲んだ男達は、薄笑いのまま彼の様子を伺っていた。愚かな若者の自滅は、彼等の格好の娯楽なのだ。
「そんな根性無しだから大成しないんだろうなァ」
「そんな度胸でよく潜入とか考えたな」
「危機管理も下手糞」
「基本考え無しなんだろ」
「交渉能力もゼロ」
「チンポは仮性包茎」
「チンカス溜まってるな、その顔で女日照りってどんな希少種だ?」
「趣味で溜めてんだろ」
神官達が、湯瀬を突き回して好き勝手批評する。恐怖に縮み上がった陰茎すら嘲笑の的にされるが、湯瀬は恐怖で反論の一つも用意できなかった。部屋の最奥に座す教祖は、怯える湯瀬を静かに見詰めている。一見、剃髪の中年男性だが、筋骨隆々の身体と嫌に艶の良い肌が正確な年齢を掴ませない。その顔には、説法の時と変わらぬ慈悲深さを感じさせる笑みが張り付いていた。
「私は許しましょう。君の顔と身体が好みだから」
教祖は部屋の隅々までに通る声で告げた。神官達の疎らな拍手が部屋に響く。

 教祖は緩慢に立ち上がり、湯瀬の前まで歩み寄った。
「しかし背信は重罪。厳しい再教育で信仰心を取り戻してもらう必要はあります」
教祖の節張った指が、湯瀬の割れた腹筋を辿る。性的な意図を含んだ触り方に、湯瀬の喉が嫌悪で引き攣る。
「お、男同士でしょ、俺達……」
顔と身体が好きだから、という突拍子も無い言葉を漸く正確に咀嚼できた湯瀬の眦に涙が滲む。
「法悦の前には矮小な事です。瑣末な事に囚われている魂は、さぞ不自由でしょう」
説法でもするかのように落ち着き払った教祖のテノール。その声音の重厚さと凄然とした態度は、男同士の悦楽を知らぬ湯瀬こそが無知で哀れで救い難い存在であると錯覚させる。
 この男は一種の魔性だ。人の心の操り方を知っている。

 「教祖様、これを」
若い神官が教祖に小さな墨壷と筆を差し出した。墨液は、ただ黒いと言うよりもやや赤みを帯びた色をしていた。むせ返るようなオリエンタルで甘い匂いもする。
「君が二度と我々の教えに背こうと思わぬよう、身体に説いて差し上げましょう」
墨壷に筆を浸し、教祖が祝詞を唱える。そして、湯瀬の臍の下に印を描いた。それは変化を示す梵字を左右対称に描いたようにも見えなくもないが、位置的に子宮あるいはハートを象ったものだと分かった。墨液に濡れた湯瀬の皮膚が粟立つ。そこから熱を発しているかのように、下腹が存在を主張する。
 何を、などと聞くまでもなく湯瀬の陰茎は甘く勃ち上がり始めていた。怖いのに、気持ち悪いのに、悍ましいのに。湯瀬の身体は気持ちを置き去りにして、興奮の兆しを見せていた。睾丸も張り詰める。湯瀬は股下に下がる質量が明らかに増した事を自覚して泣きたくなっていた。
「っひぃっ!」
神官が無言のままに湯瀬の陰茎に触れ、被ったままだった皮を引き降ろした。たったそれだけの接触で、湯瀬は嬌声を上げてしまった。手は直ぐに離れていったが、いつまでも接触の余韻を引きずって腰が阿呆のように揺れた。寧ろ、手が直ぐに離れていった事を惜む気持ちすら芽生えて、湯瀬は思わず首を振った。丸見えにされた亀頭を、異常に分泌されたカウパーがてらてらと光らせる。
「全く、堪え性の無い」
「教祖様の法力の前には素直にならざるを得んだろう」
「こんなに腰をヘコヘコ振って」
神官が湯瀬の無様を揶揄する。法力ではなく塗られた墨液の所為だろうと反論しようにも、湯瀬が醜態を晒している事実だけは変わりようがなかった。
「折角です、君に新しい悦びを教えて差し上げましょう。今の子は鞭より飴が沁みますからな」
教祖の言葉を合図に、神官の手が湯瀬へと伸びる。
「ああぁっ」
乳首の頂上に指先が触れる。それだけで湯瀬は酷く動揺した。触られてもいない陰茎がうんと硬さを増す。乳首の先端の刺激が背骨を通り、下腹まで降りていく感覚があまりに鮮烈だったのだ。
「や、やめっ、ひぃっ」
神官が無言のままに乳首を擦る。乳輪の輪郭を指の腹で確かめるようになぞる。ただそれだけの動きの筈だった。なのに湯瀬は喉を反らし、乳首を痛い程に勃起させて喘いでいた。学生の頃、当時付き合っていた彼女が戯れに触ってきた時は特に何の感慨も無かったのに。それが今は、まるで一等敏感な粘膜を触られているような感度だ。
 それでいて、もどかしい。乳首への刺激は痺れる程の快楽を脳に伝えるが、不慣れで処理しきれていないのだ。未知の感覚に逃げ出したい欲求を抱えながらも、もっと酷く追い詰めてほしいという矛盾した願望が芽生え始めていた。いっそもっと強く嬲ってくれたなら、理性から完全に遠のいて射精へと漕ぎ着けるような気がしていた。
「やだ……や、ああああっや、イきた、あ、あっ」
湯瀬の磔台に固定されて碌に動かぬ脚に、うんと力が入る。強い快感と射精欲に、睾丸が迫り上がる。爪の先で乳首の薄皮を柔く引っ掻かれて、漣のような快楽に頭が蝕まれる。乳首での達し方を知らない身体の戸惑いが、熱を蟠らせて湯瀬を苦しめていた。触られていない陰茎から湧き出る我慢汁が、ついに内腿にまで濡らしていた。イきたい、と頭を振って訴える湯瀬は神官の嘲笑の的だ。
「お゛ひっィイイッ!!」
神官が湯瀬の乳首を摘んだ。親指と人差し指に挟まれると、触れるだけのもどかしい刺激が可愛く感じられる程の痛烈な快感が襲う。男体故に未発達な乳腺が快楽に重く痺れて、呼吸が詰まる。湯瀬は浅い口呼吸に溺れる間抜け面のまま、尿道に精液が通っていくのを感じた。
 湯瀬の両足の間に、濃く粘性に満ちた白濁が落ちる。
 とうとう、胸への刺激だけで達してしまった。その衝撃に呆然とする余裕も無く、湯瀬は浅い呼吸を繰り返してた。


 そんな馬鹿な。自分は一体何をされているのか。誰か助けてくれ。射精後の冷静さは、湯瀬の自尊心を深く傷付ける事に寄与していた。
「どうです。教団の素晴らしさに気づけましたかな」
胸で息をする湯瀬を、教祖は何時もの笑みで伺っていた。教祖の慈悲すら浮かべた眼は、この強制的な快楽を素晴らしい体験と思わぬ方が異端なのだと湯瀬の心理に刷り込もうとする。
 湯瀬は今更ながら、この宗教に取り込まれて姿を消した人々が美男美女揃いだった事を思い出していた。だからこそ一層注目を集めるテーマになると踏んでいたのだが、まさか陵辱行為の対象にされていたからだとは。まさか、潜入した湯瀬自身までもが嬲られるとは。
「教祖様、まだ教育が足りませぬ」
興奮した神官の声。一人が意見したのを皮切りに、悍ましい提案が次々と飛び出してくる。
「そうだ、もっと悦びを教えてやろう」
「逃げたいなどと思わぬようになるぞ」
「チンポの皮を引き伸ばしてやろう」
「排泄の度にアクメしろ」
「ザーメン噴水にしよう」
彼等は人を玩具としか思っていないのは明らかで、湯瀬は身を強張らせた。けれど絶望的な事に、教祖に妙な紋様を描かれた下腹は未だ熱を持ち、陰茎も甘く滾ったままだった。一度出したにも関わらず重たいままの陰嚢が、厚顔にも射精欲を主張していた。
「ざ、ザーメン噴水、なんて……いやだ、そんなの……もう許してくれ……」
馬鹿みたいな語感だ。しかしそれだけに嫌悪も一際強い。絶対に嫌だ。けれど先程の異常な快楽と今猶張り詰めた睾丸が、実現し得る事だと告げていた。
「背信者が我儘を言うな!」
「っぎィっ!?」
神官が湯瀬のペニスを引っ叩いた。その衝撃で、湯瀬は射精した。尿道口から精液を滴らせる陰茎が、情けなくもぶらぶらと揺れた。
「こらこら、お止しなさい。こういう時こそ慈悲深い行いが必要なのです。我々の寛容さを知れば、自然と我が教団への忠誠を思い出せるでしょう」
教祖が神官の暴力を諌める。この場に似つかわしくない聖人君子の笑みが、今の湯瀬には何より恐ろしかった。
「今はまだ、沢山の悦びを教えて差し上げる時です」
弧を描いた教祖の唇から、白い歯が覗いていた。


 「やめ、も、ヤだっ、お゛ヒィッ!」
神官に乳首を抓まれた湯瀬は、情けない声をあげて喚いた。
「ほら、こっちのヨロコビも覚えろっ」
「ん゛イィ!!」
神官の一人が湯瀬のアナルを穿る。未通のそこも、いとも簡単に快楽を拾う。磔台に固定されていた湯瀬の右足は、神官達が尻を弄り易いよう高く上げられ、右腕と共に括られていた。湯瀬は舌を突き出して戦慄く事しかできない。幾度も快楽を極めた。けれど、湯瀬に許されたのは燻る事だけだ。射精はできなかった。
 湯瀬がザーメン噴水になりたくないと喚いたので、教祖が慈悲を与えて射精を出来ない身体にしてしまったのだ。詳しい理屈など湯瀬には見当も付かない。ただ、教祖が宣言した瞬間、どんなに刺激を与えられようと精液は一滴も出なくなってしまったのである。壊れた陰茎からは、滝のように我慢汁が滴るばかり。
 暗示にせよ超能力にせよ、教祖は湯瀬の身体を完全に掌握していた。本物の魔性なのだ。
「アクメしろっ」
「ぃぎゅっ、いぐっ、イっでぅのに!!」
尻孔を指で弄られたまま、亀頭を掌で撫で回される。多量の我慢汁に濡れた股間は、ローションを塗したのと変わらぬ淫猥さで神官の劣情を誘う。血管が浮く陰茎を扱かれ、持て余した皮に指を入れられ、尿道口まで穿られる。幾度と無く射精を伴わない絶頂を繰り返し、湯瀬が悲鳴を上げる。
「ヤだ、出したいっザーメっ、出すっ」
腰を突き出しヘコヘコと情けない前後運動を繰り返して射精を試みる湯瀬だが、勿論芳しい結果にはならない。
「お前がザーメン噴水は嫌って言ったんだろ」
「今はカウパー噴水ってとこか」
「教祖様はお優しいなァ」
神官達が嘲笑する。その間も誰一人として湯瀬を嬲る手を止めはしなかった。それどころか、指で散々広げられた肛門に男性器を模した玩具を捻じ込んで、一層の苦悶を与えていく。太いシリコン製の陰茎が抜き差しされる度に、蹂躙された肛門がグポッグポッと間抜けで卑猥な音をたてた。前立腺を圧迫される度に、陰嚢が迫り上がって熱の開放を強請る。
 カウパーをローション代わりに亀頭を激しく捏ね繰り回され、湯瀬は磔台が軋む程に身悶えた。臀部の筋肉が収縮して、アナルがより強く異物を食い締める。
「アッ、で、でるっでるっ、でてるぅああああっーー」
下腹にうんと力が入った弾みで、排泄欲は一層強くなる。遂に尿道に勢いのある物が通っていく感覚に恍惚を得て、射精の喜びに陶然とした。
「馬鹿だな、出てるのは尿だよ」
鼻に衝くアンモニアの臭いが立ち込める。勢い良く迸った小水が、湯瀬の足元で床を叩いて飛び散る。瞬く間に、黄金色がタイル張りの床に広がっていく。成人男性が失禁など恥かしいにも程がある。けれど湯瀬の身体は、当人の屈辱などまるで反映せず、贋物の射精に喜んで腰を揺らめかせていた。
「あは……おしっこ、きもぢいぃ……」
勢い良く噴き出す体液に尿道を擦られる感覚に、射精欲で馬鹿になった自我が屈服した。引き攣った頬を涙で濡らしながら笑う湯瀬に、神官達は愉悦の表情を浮かべていた。


 放尿での快楽を覚えた湯瀬は、できない射精の代わりに事ある毎に失禁した。
 神官に乳首を吸われ、潮と見紛う勢いで尿を噴く。小水は既に透明に近い色になってきていた。それでもなお尽きることは無かった。脱水で出なくなっては面白くないと、神官が湯瀬に口移しで水を摂らせるからだ。ついでに咥内をまさぐられて更に多幸感が押し寄せる。漏らしている最中も陰茎を扱かれて、あちらこちらに尿が飛ぶ。
 アナルを犯す玩具も、一回り太く長い物に挿し替えられた。神官が戯れに抜き差しする度に湯瀬は豚のように鳴いて排尿アクメを催したが、肉欲にひくつく尻孔は既に自ら玩具を食い締めて遊ぶ事まで覚えるようになっていた。
 すっかり神官の与える快楽の虜になった湯瀬に、教祖が穏やかな口調で問いかける。
「どうです湯瀬くん、教団に再び忠誠を誓う気になりましたか」
「ぇへ……おひっこ、きもひいい……」
湯瀬の快楽に疲弊した精神は、真っ当な受け答えが出来る状態になかった。神官達が湯瀬から手を放しても、彼は漏らしながら腰を振る事に夢中だった。最早、己が何故こんな目に遭っているのか覚えているかすら怪しい。
「教祖様、やはり再教育には鞭も必要では?」
「悲しい事ですが、そのようです」
教祖が印を結ぶ。湯瀬の射精を封じた時と同様に、その超常的な力を行使したのだ。
「君は今から、お尻で遊んでいる時にしか排尿ができなくなります」
そう宣言した教祖は、湯瀬の肛門を塞いでいた玩具を引き抜いた。すると、壊れた蛇口のように漏らし放題だった尿がピタリと止まった。
「あ、あっ!? どうしてっイきたい、イかせてっ」
開ききった肛門を開閉させながら、湯瀬は切羽詰った声で泣いた。
「教団への忠誠を思い出しましたか?」
「はい! はい! だからイかせて、おしっこ!」
湯瀬の変わりように神官達は笑っていた。しかし一切の動揺は無かった。再教育を受ける背信者は大抵このような色狂いに変わるのだと、既に皆は知っていたからだ。そして湯瀬も、最早正気には戻れないところまできていた。
「教団への忠誠があるなら、君の身体を私や幹部の玩具にしても構いませんね?」
教祖は長衣を寛げ、湯瀬のアナルに自身の陰茎を宛がった。赤黒い亀頭が、充血した肛門の縁を愉しむように潜っていく。教祖は筋骨隆々な身体に見合うだけの逞しい陰茎をもっていた。それを湯瀬が感じると同時に、止まっていた尿が再び噴き出した。
「君が敬虔な信者でいてくれたら、時々射精もさせてあげましょうかね」
教祖は湯瀬の処女を愉しみながら、彼を飼い殺す宣言をした。湯瀬は男の逞しい亀頭に前立腺を叩かれる悦びに浸りながら、それに頷いていた。
「あああぁ……ほんとに……教祖さま……」
排尿アクメに夢中な湯瀬は、最早ライターを志望していた時の彼ではなかった。ジャーナリズムなど遥か彼方、彼の興味はもう教祖の齎す性感にしか向いていなかった。



 湯瀬が地下で性的な折檻を受けて丸一年。世間では湯瀬も行方不明者の一人だが、彼は未だ教団の施設で暮らしていた。
 地上で一般の信者として生活する事が許されるようになっても、湯瀬は神官達に頻繁に地下へと呼び出された。
 表向きには呼び出しの理由を修行と称していたが、実態は勿論、彼等に身体を玩ばれているだけである。湯瀬は彼等の肉欲を慰める奴隷にされていた。そのように扱われる信者は湯瀬以外にも複数居て、時には彼等と乱交させられる事もあった。また、彼等は性奴隷を育成しては人身売買も行っているようで、地下で会う奴隷の面子の入れ替わりも多々見られた。お布施に執着する事も無い新興宗教の資金源は恐らくそれだろう。皮肉にも、湯瀬が教団の致命的な秘密を知ったのは、ジャーナリズムを捨てた後だった。

 湯瀬が呼び出された地下の全面タイル張りの部屋には、二人の神官と、湯瀬の隣室に住む友人の姿があった。
 アイドル系のルックスに人懐こい笑みが印象的な青年で、彼の姓は水城といった。それが今や不細工に顔を歪ませて、一糸纏わぬ姿で神官の陰茎を咥えさせられていた。彼の下腹部には湯瀬と同じ紋様が刻まれており、勃ち上がった陰茎は銀色のプラグで尿道を塞がれたまま健気に震えている。
 神官は陰茎をしゃぶる水城の頭を優越感たっぷりに撫でながら、湯瀬を見遣った。
「ああ、水城くん? 新入りだよ。隣で湯瀬くんが毎朝オナニーしてて煩いって相談に来たから、気にしなくても良いようにしてやった訳だ」
水城の肩が跳ねる。しかし、そんな微力な抵抗も許されず、彼は前髪を掴まれて陰茎をより深く咥え込まされた。そのまま頭を前後に揺すられて水城は嘔吐いたが、神官は構う事無く彼の喉奥へと射精した。

 もう一人の神官は、咳き込む水城には一瞥もくれずに白々しく聞き返した。彼等の可虐性は、湯瀬が人並の羞恥心を持つ事を許さない。
「はは、湯瀬くん部屋でオナニーしてるの?」
湯瀬は白布の端を握り締め、恥かしさに消え入りたい気持ちで答えた。答えねばより厄介な仕打ちを受けるだけだと、身を以って学習している湯瀬は従順だ。
「はい……毎朝……は、排便の時に、き、きもちよく、なってしまって……」
湯瀬の使い込まれたアナルは、自身の便でも感じるようになってしまっていた。しかも教祖から授けられた呪いは健在で、降りてきた便を異物と見なした身体が放尿を解禁してしまう為に、排便で絶頂すると射精代わりのお漏らしまでしてしまうのだった。
 そんな告白に、まだ奴隷にされて日の浅い水城が絶句していた。
 とはいえ、教団の奴隷にされた以上、水城が排泄で快感を得るようになるのも時間の問題だろう。そんな残酷な未来予想図を突きつけるべく、神官は湯瀬の白布を捲って彼の下腹部を晒した。一切の下着を付けていない下肢を露わにされ、湯瀬は膝を擦り合わせた。
「ほぉら、お揃いの淫紋だ」
下腹部には、水城と同じ紋様が火傷痕のように赤くはっきりと現れていた。墨液を洗い流したところで、この紋様は一生皮膚の上に残るのだ。この紋様は、湯瀬の性欲を強め、性感を異常に高める効能を持っていた。湯瀬が屈辱と気味の悪さを感じながらも神官や教祖に身体を好きにさせる日々を受け入れているのは、この紋の効能の所為かもしれない。今も、躾けられた身体を期待で昂ぶらせ、だらしない仮性包茎ペニスを勃ち上がらせていた。

 「あれ、湯瀬くんチンポの皮伸びた?」
神官は湯瀬のコンプレックスを揶揄して、皮を引き伸ばして亀頭や雁首を擦り上げた。神官達が挙って皮を玩ぶので、始めはただの仮性包茎だった湯瀬の其処は、勃起しても明らかに皮を余らせていた。皮の内側に溜まった我慢汁で、クチュクチュと淫猥な音が鳴る。
「もしかしてチンポが縮んでんじゃないの」
緩慢な動作で神官に陰茎を扱かれて、湯瀬は喉を反らして喘いだ。けれど皮越しの刺激は緩やかでもどかしい。精液も小水も出ない状態も相俟って、生殺しだ。
「ああ、最近ケツマンコばっかでチンポは使わせてやってないからなァ」
そろそろ使わせてやろう、と神官は示し合わせたように水城を一瞥した。友人の尻を犯すよう唆され、湯瀬は強く唇を噛んだ。しかし湯瀬にはもう、彼等に逆らえる甲斐性など残ってはいない。それどころか、湯瀬の張り詰めた睾丸は友情を裏切って質量を増すばかりだった。
「そんな! 湯瀬さんっ」
動揺を露わにする水城を、神官は逃さなかった。水城を後ろから抱き抱えると、神官は彼の両乳首をギュッと抓った。
「ンッ、ギひぃ〜〜ッ!」
そこが一等弱いらしく、水城は問答無用で絶頂させられた。途端に、水城の菊門は汚らしい音をたてて液体をぶちまけた。銀色のプラグで尿道を塞がれた彼の陰茎は、射精を封じられたまま苦しげに揺れる。
「ローション浣腸だよ。まあ媚薬も多少入ってるけど」
絶頂に痙攣する水城の足元に、粘性のある透明な液体が広がっていた。
「水城くんは、乳首でイかないと尻の中のモンが出せないよう教祖様の祝福を受けているんだったかな」
神官が彼の乳首を捏ね繰り回すのに合わせて、尻孔からコポコポと液体が溢れていく。水城が真赤な顔で首肯した。浣腸がそこまで透明になるには、湯瀬が来る前から排泄と浣腸が繰り返されていたのだろう。その度に射精をしていては体力が持ちそうにないからこそ、尿道を塞がれたのだろう。
「まだ一人でウンコできなくて、四日に一度は泣きながら浣腸を強請りにくるヒヨッコだ」
水城を背後から虐めていた神官が、彼を仰向けにして脚を広げさせた。快楽と羞恥で脱力気味の水城は、頬を涙で濡らしながらも従順に尻を掲げた。
「ほらセンパイ、ケツ使わせてもらえ」
もう一人の神官が湯瀬の尻を叩いて促した。無論、湯瀬にも水城にも拒否権は無い。

 「あああっ、ゆぜさ、ぁあっ」
「あぁっチンポっひさしぶりッ、イイよぉっ、チンポ悦い……」
湯瀬は温い穴に陰茎を包まれる感覚に、舌を出して喘いだ。余りにも久しい雄の悦びだった。張り詰めた睾丸を会陰に叩き付けるように、欲のままに腰を振ってしまう。
「お゛っそこっダメっおへっ」
湯瀬は、友人だった男の前立腺に雁首を擦り付けて快楽を貪った。次第に激しさを増していく湯瀬の抽挿に、水城もはしたない声をあげた。突かれる度に、プラグに塞がれたままの陰茎が揺れて水城の腹を叩いた。
 技巧も何も無い湯瀬の腰振りは、彼がお気に入りの場所を只管往復するばかりで独り善がりだ。前立腺の膨らみばかり執拗に穿たれて、水城は堪らず悲鳴をあげる。
「イくっ、イきたっお゛ひっソコばっか、ダメっ」
水城は自らの陰茎を触ろうとして、神官に腕を押さえられた。水城の足先に力が込められ、逃れ得ない快楽に指が固く丸められていく。
「出じだいっ出じたいよぉっ」
水城がプラグの嵌った陰茎を揺らして強請る。水城が射精欲に悶えると腹部に圧がかかって、搾り取るように締め付けられた湯瀬が獣じみた唸りをあげる。
「おれもっ出したい゛っ、も、出るぅっ」
射精を許されていない奴隷同士、情けなくも腰を振り合う。湯瀬も水城も、ドライで軽く何度か達した。けれど、それでは決して治められず、涎を垂らしたまま舌を吸い合う。盛りの付いた犬のようにピストン運動が終わらない。
「ぅあっ、ゆぜさ、ゆぜさっああああっイぐっイぎぅううっっ!」
「あああぁチンポっいいっ! チンポっ」
水城のアナルで陰茎を扱く事に夢中な湯瀬に、背後から神官が問う。
「ケツマンコ穿るのとチンポ扱くの、どっちが好きだ?」
「あへっ、チンポぉ、チンポっ!」
欲に蕩けた顔で湯瀬が即答した。
「本当かァ?」
「ヂン、お゛ぐぅウ!?」
雄の優越に酔っていた湯瀬のアナルに、神官の指が侵入した。奴隷の身体を知り尽くした支配者の指が、湯瀬の悦いところを正確に撫で回す。
「あ゛ああああっ!! イ、イいいぃぃっ悦いっおしりイイっ!」
湯瀬は数秒ともたずに掌を返す。尻に指を食まされた湯瀬は、そのまま水城の胎内に小水を放った。
「ゆぜさ、ヤだ、オシッコしないでぇっ熱いっあついぃっ」
すっかり射精の代替として根付いてしまった放尿は、水城が泣こうが止まらなかった。寧ろ尿を擦り込むように腰を揺らして快楽に耽る始末。一般的な信者として振舞う間は尻に異物など入れる訳にも行かず、日中は排尿をずっと我慢していた湯瀬。最早、排尿自体が身持ちよくて仕方がなくなっていた。
「あぁ、おもらしアクメさいこぉ……」
舌足らずに余韻を味わう湯瀬。
 神官はそんな小休止を許さず、脱力した湯瀬の腰を掴んで自身のペニスを捻じ込んだ。真珠の入った神官の陰茎は、丁度固い凹凸が湯瀬の前立腺に圧し当たる。その存在を感じただけで、湯瀬はまたも小水を漏らしてしまった。
「あっああぁ〜っおしっこ、きもちいいっ」
「ば、ばかっゆぜさ、おしっこ多いぃっ」
湯瀬は自ら腰を振って、神官の陰茎を自身の好いところに押し当てる。湯瀬が動けば、菊門に挿した陰茎の角度が変わって水城が鳴く。胎に溜められた尿を攪拌される苦しさと切なさに、水城は脂汗を流して悶えた。
「ゆぜさんばっか、だせてズルいぃ」
自棄糞気味に水城が訴えれば、神官は苦笑交じりに彼のプラグを取った。
「ああああっでりゅっ、で、あぁあっイイッ〜〜」
水城は濃厚な射精で湯瀬の腹を汚した。そして、長らく尿道を虐げられた弊害か、彼も小水を漏らした。勃起したまま尿を零す陰茎が跳ねて、湯瀬も水城も濡らした。
 壁にも床にも小水を撒き散らす獣のマーキングさながらの派手なアクメは、神官の支配欲を大いに満足させた。


 その後も乱交は続いた。水城が後ろから湯瀬を犯したり、神官に後ろから突かれながら兜合わせをさせられたり、散々に愉しんだ。
 何処から聞きつけたのか、次第に神官の数も増えた。中年の神官に跨って腰を振る湯瀬は、口をペニスで塞がれ、乳首や脇にも陰茎が擦り付けられる。隣の水城は神官の膝の上に乗せられて、再び尿道を穿られて泣いていた。その情けない顔は、神官達が小便や精液を引っ掛けて遊ぶ格好の的になっていた。
「おや、湯瀬くんと水城くんは本当に仲がよろしいようだ」
ついには教祖も顔を出し、湯瀬と水城を交互に犯した。教祖が奴隷に直接手を出す機会は、神官達に比べれば格段に乏しいが、その異能故に格段の存在感があった。湯瀬には、群の長に腹を晒して媚びる犬の気持ちが余りによく分かる。大勢居た神官達も、教祖が愉しんでいる時はその奴隷に手を付けない。絶対的な支配が其処にはあった。

 教祖が水城の乳首を捻り上げ、絶頂を強要して排泄させた。散々中に出された精液と小便を勢い良く床に広げながら、水城はガニ股で痙攣する。
 教祖に促され、湯瀬は水城の肛門に舌を這わせた。多数の精液と湯瀬の尿を滴らせる水城の腫れ上がった菊門に、湯瀬は陶然とむしゃぶり付いた。
「湯瀬くんはもうすっかり従順で敬虔な信者ですね」
湯瀬はその言葉に誇りすら感じて頷いた。
「お友達と一緒に悦びを分かち合うと殊更に気持ちいいでしょう」
「ふぁいぃ……」
湯瀬は水城の膚から唇を離さず返事をした。その従順さに気を良くした教祖が、湯瀬に射精を許す。湯瀬は久方振りの射精に、腰を大きく跳ねさせて呻いた。湯瀬にこの快楽を与えられるには教祖だけ。湯瀬は最早彼なくしては生きられない。その切実さが一層、湯瀬に快楽を深々と刻み付けた。
「して湯瀬くん、俗世にもお友達が居るでしょう。連れておいでなさい。この心地良い教義を沢山の友達に布教してあげようではありませんか」
 ああそんな、と水城が悲鳴じみた声を漏らす。しかし湯瀬には、これ以上無く素晴らしい提案として聞こえていた。

 教祖の描く未来予想図に、湯瀬は期待で胸を膨らませながら射精した。
series top




back
top
[bookmark]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -