午後

 残すところ各学年1種目ずつとなった午後、アキオ達第2学年は第1学年の競技のアシスタントに借り出されていた。

 アキオの担当は、障害物競走の障害役だった。ゴール前100メートル地点に用意されたビニールシートの上で、アキオは最後の障害として彼等をスパンキングした後アナルにバイブを仕込んでやらなくてはならないのだ。

 競技者は、催淫作用のある白濁色のローションの中に沈んだ飴玉を手を使わずに探し当て、長大な張型がそそり立つサドルに座って三輪車を漕いで、息も絶え絶えになってアキオの元へとやってくる。競技は障害とは名ばかりの淫靡で加虐的な試練の連続だが、同情は禁物だ。アキオはタイトな体操服に「第3障害」と書かれた赤い腕章をして、走ってくる後輩を機械的に捌いていく事に努めた。 
「じゅーなーなっ」
ブルマを腿の半ばまで下げて四つ這いになった後輩の尻に、カウントと共にアキオが事務的な動作で腕を振り下ろす。
「ぎゃうっ」
バチンッと子気味良い音と共に尻に新たな手形を刻んだ第1学年の少年は、悲痛な悲鳴を上げた。未だ調教が進んでいないのか、既に痛みで萎縮した陰茎からは尿が断続的に滴り始めていた。アキオは後3回、彼を打ち据えなくてはならなかった。
「じゅー、はちっ」
「ぃぎぃいっ〜〜ッア、アアッ」
ついに完全決壊したらしく、少年の尿が勢い良く吹き出した。少年のブルマに真っ直ぐかかり、ビニールシートに水溜りを作っていく。ビニールシートの上に居るアキオも、脚が濡れてしまった。
「じゅー、くぅっ」
「ゃ、やめっェギィッ、イ痛……ぃたい……」
けれど、アキオにはスパンキングを中断する権限などなく、カウントを続行させた。ついに少年は弱音を吐いて泣き始めるが、そのリアクションは観客席を盛り上げるだけだった。それどころか、放送実況が嬉々としてお漏らしを喧伝し、縮み上がった情けない陰茎がスクリーンに大写しにされる始末。
 後輩を可哀想だと思いつつ、アキオはまた手を振り上げた。これが最後の1発と思うと、自然と声が大きくなった。
「にじゅうっ!」
叩かれる少年の悲鳴も、ひと際大きかった。まだゴールしていないというのに、観客は拍手を送っていた。

 アキオは崩れ落ちそうな少年の腰を支え、肛門を割り開く。腫れた尻を触られた少年が悲痛に呻くが、彼を解放する前にバイブを入れてやらねばならなかった。
 バイブはイボだらけの胴をうねらせながら先端が回転するだけでも凶悪だが、根元は犬の尻尾を模したアクセサリーが付いており、精神的にも生徒を辱める仕様だった。
「ふぎぃいっも、痛っおしりっいやっあああっ」
腫れた尻を押し開かれる痛みに悶絶する少年だったが、バイブが熟れた肉壁に沈んでいくと、痛みだけではない吐息が混じり始めた。苦痛を耐え忍び被虐の中に快楽を見出す事は未だ覚えていないが、尻のみの刺激で悦がる牝の性感はしっかり身に付いていたらしい。少年は電気を流された小動物のような声をあげ、腰を跳ね上げては尻から出た尻尾を無茶苦茶に揺らした。モーター仕掛けの機械に前立腺を容赦無く抉られて、強制的な快楽へと突き落とされているのだ。
「赤組ハルオ君、犬の分際で人語を喋りました。ペナルティとして、バイブの振動が1段階強くなります」
放送実況が、少年の悲鳴を咎めて罰則の付与を宣言した。その声が聞こえるが早いか、少年が尿に塗れたビニールシートに顔ごと突っ伏した。
「ひいいいっあっぎっ……わんっ、わんんっ……」
突き出した尻だけが、過ぎた快楽を処理できずにガクガクと揺れていた。相当答えたらしく、嬌声の後に怯えがちに犬の鳴き真似までし始める。
 惨めな負け犬そのものの姿で突っ伏す彼だが、ゴールまでこの格好のまま四つ這いで走らなくてはならない。アキオは彼を急っ突いて、ゴールに向かわせる。足を動かす度にバイブの存在感が増すのだろう、少年は少し進む度に崩れ落ちそうになっていた。

 公衆の面前で赤子のように尻を打たれ、犬の真似事をさせられ、人らしい尊厳など微塵も無い事を再確認させられる。これもある種の通過儀礼なのだ。自身を犬以下と自覚させられ、従順なペットとしての人格を作られる。
 アキオも昨年に同じ競技を体験している身として、この痛みと惨めさをよく知っていた。そして第2学年が今度はアシスタントとしてこの競技に関わるようになっているのは、その屈従の記憶を忘れさせない為なのだろう。感傷に呑まれつつあるアキオは、目頭を熱くしながら後輩がゴールテープを切る姿を見詰めていた。


 第1学年の競技が終われば、直ぐにビニールシートが新しい物に取り替えられ、第2学年の競技の準備が始まる。今度はアキオ達が協議を行う番である。

 アキオ達が行うのは、浣腸によるリレー競技だ。第1学年の競技で借り出されていた生徒達も、大慌てで尻を綺麗にして整列の隊形に加わる。
「たった今、各組の列の前にローションが入ったバケツが用意されました」
放送実況が、会場の準備が整った事を高らかに告げた。
「浣腸リレーのルールは単純です。最前列の生徒が注射器でローションを汲み上げて浣腸し、漏斗を使って後列の生徒のアナルへと移す事を繰り返して、列の後ろにあるバケツに移し変えるタイムを競います。バケツリレーと同じ要領です。ただし、途中で漏らしたり不正が行われたりした場合は、ペナルティとして輸送すべきローションの量を増やします」
勿論ローションに含有する媚薬の量も増えるのでお楽しみに、と悪趣味な放送実況が愉悦を隠さない口調でルールを説明した。

 号令に従って、生徒達が一斉にブルマを膝まで下ろす。
 アキオは列の半ばに居た。午前中に散々拡張されたアナルは耐久に不安があった。だから本当は最後尾か先頭にしてほしかったが、そこは尤も目立つポジションである為に扶養者が付いていない生徒に譲ってしまっていた。
 外気に触れるペニスは冷たく、緊張も相俟って萎縮してきた。待機用のテントからナツメがアキオに頑張ってというジェスチャーをしたのが見えたが、アキオは手を振り返す気分ではなかった。

 ピストルの合図と共に、先頭の生徒が注射器でバケツのローションを汲み上げ始める。
 注射器は漫画でしか見ないような巨大さで、針の付いていない注ぎ口は太く、ディルドのようにイボの付いている事からも特注品である事が伺えた。漏斗も注射器同様に、注ぎ口が強制的に性感を刺激するように設計された淫猥な形をしていた。それらを自ら使用して擬似的な排泄を繰り返さなくてはならないのだから、屈辱もひとしおである。これもまた、生徒の尊厳を叩き潰す通過儀礼なのだ。

 ローションで腹を膨らませた最前列の生徒が、尻から注射器を抜き終えるや否や、背後に待機していた生徒を振り返る。待機していた生徒は、すぐさまアナルに漏斗を挿して尻を掲げると、前列の生徒から排泄されたローションを肛内に受け止めた。そうして、尻を上げた体勢のまま漏斗を引き抜き、更に後ろに並んでいた生徒へと渡す。
「ンン、アナルあつい……」
漏斗を挟んで尻と尻を合わせた生徒達は、どんどん肛内に溜めたローションをリレーしていく。注射器は大きいが、受け渡しの際に溢さないよう気を使った量しか汲み上げない為にローションの減りは悪かった。尻を付き合わせながら入れては出してを繰り返すと、アナルを性器として調教されている生徒達は否が応でも快楽を敏感に拾うようになる。まして、ローションは媚薬入りだ。過剰に血の巡りがよくなったとアナルがジンと痺れて、人恋しさを訴えるのは早かった。
 ローションで腹が膨れている時間は僅かだが、腸内に残留した媚薬成分は生徒達を継続的に悶えさせた。
 最早、ローションを出し入れしない待機時間がもどかしい。アナルに指を入れて自慰に耽りたい。否、もっと太くて硬い物で掻き回されたい。競技を放り出してずっと漏斗を咥え込んでいたい。そんな欲求が頭を占め、何もない空に向かって半ば無意識に腰を揺する生徒達の隊列は異様な淫靡さを醸していた。

 アキオもその例外ではなく、疼くアナルを誤魔化すように膝を擦り合わせながらローションを注がれる順番が回ってくるのを待っていた。ペニスは既に冷たい外気に萎縮していた時の面影を完全に失い、硬く勃起してもどかしい刺激にカウパーの涙を垂らしていた。
 決定打に至らないもどかしさが続く事に耐えかねて、アキオの目の前に並ぶ生徒がついに自身のアナルに指を入れた。主人のいる生徒だが、主人から耐え性の無いはしたない生徒だと詰られるリスクよりも射精欲が勝ったらしい。
「ああ悦いっああ〜〜っ」
指を菊門に食ませて腸内に残留したローションを掻き出すようにクチュクチュと音を立てながら悦がる痴態が目の前で展開されると、アキオもそれに倣いたくなる。確かな快感を得て焦れったい感覚から逃れた彼が羨ましい。前立腺が触られたがって疼く。血を集めたまま射精に至らず勃起を継続しているペニスは痛い程に主張している。乳首すらも、体操着の上からでも鮮明に分かる程に硬く勃起して刺激を求めていた。
 アキオもついに、射精を求めてアナルに指を入れようとした。
「赤組ナズナ君、待機中に指をアナルへ入れました。不正に順ずる行為と見做し、ペナルティとして、ローションを追加します」
放送実況がペナルティのアナウンスをしたのは、その瞬間だった。今正に肛門での自慰を試みていたアキオの肩が跳ね上がる。もう少し自慰に踏み切るタイミングが早ければ、名を呼ばれていたのはアキオの方だっただろう。

 連帯責任として、アキオ達赤組の輸送すべきローションの量が増やされる。
 不正行為に対してペナルティがあるとは告知されていたものの具体的に何を不正と見做すかについては全く聞かされていなかった生徒達だが、怯えた顔で互いに顔を見合わせるのみで理不尽な罰則を静かに受け入れた。運営の曖昧さを批判したり抗議したりしても無意味であると彼等は既に経験則で知っているからだ。生意気な態度は教育不十分な生徒と見做されて更なる責め苦を味わう事に繋がる。だから生徒達は従順な態度を崩さぬよう唇を噛み締めたまま、競技の実施時間が延びた事を受け入れた。
「んんっ、んぅ、うう……」
アキオは尻に漏斗を挿し、前列の生徒が排泄したローションを受け取った。漏斗の太く長い管を挿す瞬間は、漸く痒い所に手が届いた感覚に幸福感すら覚える。けれど漏斗の管を伝って腸内にローションが緩慢に入っていく生温い感覚は、快楽と言うには余りに些細で曖昧で、アキオを射精に導くには貧弱過ぎた。
 名残惜しい思いのまま漏斗を引き抜き、アキオは後列に待機する生徒へと排泄する。排泄は原始的な快感を伴うが、やはりそれ以上のものは齎さない。ローションに含まれた媚薬成分によって肥大した性的欲求に対して、得られる快楽はどれも小さすぎて気が狂いそうだった。

 「白組ハルト君、待機中に指をアナルへ入れました。不正に順ずる行為と見做し、白組にもペナルティのローションが追加されます」
「白組の逃げ切りかと思われましたが、接戦になりましたね」
「やはり一切の刺激が無くなる待機中が苦しいようですね」
放送実況は相変わらず悪趣味で暢気だ。
「赤組ツグミ君、排泄だけで射精しました」
「ここまで敏感なアナルは類稀な才能ですよ」
「しかしローションを溢してしまいましたね。ペナルティで更にローションが増量されます」
観客席から哄笑が起こる。けれどアキオには、射精が叶ったという点だけで充分羨ましかった。

 「おっと、赤組……これはいけませんね」
苦笑交じりに生徒の行為を咎める実況が聞こえたのは、ペナルティの連続で競技の終焉が見失われ始めてきた頃だった。スクリーンに問題行為が大写しにされ、アキオもその実態を知った。前方の生徒が漏斗をアナルに挿したまま自慰に耽り、輸送を停滞させているのだ。
「どちらの組も感化されてしまったようです。これでは収拾が付きません」
箍が外れる瞬間は伝染する。スクリーンに写った生徒に感化されたのか、我慢を重ねる事に限界を迎えていた生徒達が、次々に自慰に手を染めていく。白組の最前列の生徒が注射器に陰茎を擦り付けて喘ぐ様子や、乳首を引っ張りながら腰を振る生徒の様子が、次々にスクリーンに映される。

 競技は両者敗北の引き分けとして片付けられた。
 アキオ達2学年は、連帯責任として全員が再調教とも呼ばれる補習を後日受講する事が決定した。


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