開会式

 巨大なドームの天井に映し出された日本晴れと呼ぶに相応しい青空が、爽やかなスポーツの秋を演出していた。性奴隷を養成する学園であろうとも、体育祭は行われるのである。

 人工の空を掲げる校庭には、平時の破廉恥なセーラー服の姿は無い。この日の生徒達は皆、体操着を着用し、背には赤か白で縁取られたゼッケンを付けていた。
 ゼッケンには生徒の学籍番号と扶養者の有無が記載され、白い半袖と紺色のブルマは薄くタイトで、身体の形を余すところ無く伝えようとする意匠が露骨に淫靡だった。
 体育祭は扶養者の居ない生徒にとって、パフォーマンスを通して自身を売り込む場であり、良い買い手を付ける機会にもなっていた。学籍番号とは彼等性奴隷の商品番号でもあるのだ。


 既に買い手の付いている生徒達は、開会式の前に観戦に来た扶養者達へと挨拶に向かう。アキオもその中の一人だった。
「荻生様、本日はお忙しい中、ご出席頂き有難うございます」
仕立ての良いスーツの紳士の足元に跪き、アキオは口上を述べて靴先に接吻する。この学園に中等部から在籍している身となれば、人権を剥奪された者としての作法は概ね叩き込まれていた。
「畏まらないで良い。おいで」
主人の許しを得て、アキオは腰を上げた。薄手の体操着は腹筋の凹凸から乳首の尖りまで分かるもので、すぐに主人の手が伸びてくる。その隣の席では、赤組である事を示すゼッケンをした1年生が、老年の紳士の陰茎を口に含まされていた。
 人間を違法に扶養し教育できるだけあって、扶養者席は右を見ても左を見ても財政界の大物で埋まっている。

 アキオの主人は素直な奴隷には寛容で、よく可愛がるタイプの男だった。そして、周囲の扶養者達と比べると幾分か若い。若くして世界的に拠点を幾つも抱える有名企業の四代目として、財政界ではそこそこに有名な立場だが、アキオはそんな事情を全く把握してはいない。そもそも、学園の出資者達の素性に触れるのは御法度だった。此処では仮面舞踏会と同様に、権力者達が俗世の立場や柵を気にする事無く娯楽に興じるのである。
「んん、ふっ、んふっ荻生様……」
布越しに乳首を可愛がられ、アキオの鼻から甘えた声が抜けていく。尻のラインから睾丸や陰茎の膨らみまで隠さず伝えてしまう窮屈なブルマには、既にテントが張っていた。ブルマの下には何も穿いていない所為で、その先端部に濃いシミが広がり始めるのもあっと言う間だった。その反応の速さに、彼の主人は少々瞠目する。
「おや、既に何か仕込んでいるのか」
荻生の手が腰を撫で、尻の狭間に指を埋めた。ブルマ越しではあるが、肛門を占領する異物の硬い感触が彼の指先に伝わった。
「はい。球入れの籠役に抜擢されたので、沢山球が入るよう広げています」
アキオが尻をもじつかせながら午前中のプログラムそのような競技がある事を丁寧に説明する。この体育祭における競技は、全て性的なパフォーマンスを含んでいた。ここで言う球入れは、各組の生徒一人を籠に見立てて肛内に球を詰めていく競技である。因に、中心となる籠役は花形と言えた。尤も、一番辛い役目でもあるので志願する者などおらず、籤引きで決めるのが恒例だった。アキオは運が悪かったのである。
 尻の狭間に埋めたままの指は微動だにしないが、主人はそこに関心を示したようだった。主人が何も言わずとも、彼の所有物として躾られたアキオはどうすべきかを察してしまう。
「……ご覧になりますか?」

 主人の視線に負けて伺いを立ててしまったアキオは、手を使わず異物を排泄して見せるよう指示を受けた。
 主人に向かって尻を突き出し、アキオが直穿きのブルマを引き下ろせば、育ったペニスが勢い良く顔を出す。尻が食む異物は透明のディルドで、アキオの直腸が広がっている様子どころか、内壁の色までよく見せていた。
「んぐ、うぅぅ、んうう……」
アオキの吐く息に合わせて腹筋が戦慄き、陰茎が涙するように雫を滴らせた。排便のように息むと、火照った菊門が押し広げられていく。ディルドはミチミチと音を立てて腸壁を擦り上げ、前立腺を押し潰しながら、肛門の皺を伸ばしてゆっくりと全貌を顕わにしていった。それは子供の腕程もあろう太さを有していた。
「それで、練習では幾つ球が入ったんだ」
漸く半分程が露出したディルドを主人に掴まれ、悪戯に抜き差しされる。異物を押し出す為に狭まっていた無防備な直腸を弄ばれ、アキオの膝が揺れた。
「あひっああっ、なな、ななつっはいり、ましたぁ」
口を開いた為に異物を押し出そうとする腹の力が弱まれば、主人の手を借りたディルドはぬぷぬぷと侵入してくる。開発されたアキオのそこは親しんだ刺激を歓迎するように蠕動するが、快楽に流される事は許されず、歯を食い縛って息み直した。主人から命じられているのはあくまで排泄だからだ。腸内の異物を一層強く感じてしまう結果に身を震わせながらも、アキオは従順に振る舞った。
「そうか。では、本番の結果がそれを下回ったらお仕置きしなくてはならないね」
思案する隙も生じさせず取り決めた主人は、アキオを弄んでいたディルドを完全に引き抜いた。
 お仕置き。その響きに、アキオは恐れと期待を抱いて身を震わせた。閉じ切らず口を開けたままのアナルから、腸液が滴る。
「が、頑張らせて、いただきます……」
その後、アキオは激励と称して指で腸壁を散々に弄り倒された。射精に至りそうになる度に指を抜かれて焦らされる事を繰り返され、脚を伝う我慢汁の所為で彼のブルマは開会式が始まる前から余す所なく濡れそぼってしまった。


 校舎の壁に設置された時計が9時半を指す頃、開会式のアナウンスがかかる。
 生徒達は校庭の中央に招集されていた。
 2年で特別背が低いわけでも高いわけでもないアキオは、学年毎に整列すると隊列のほぼ中央の位置にする。開会式直前まで執拗に嬲られた肛門にディルドを押し戻された彼は、下腹にジンと甘く疼き続ける熱を持て余したままの直立を余儀無くされていた。学園の規則によって痴態を隠す事は許されていないからだ。殊に、目を楽しませに来ている扶養者達に失礼の無いよう背筋を伸ばして腕を体側に維持するようにと、事前訓練の段階から厳しく躾けられていた。体側に降ろした拳は掌に爪を食い込む程固く握られていた。その硬い両拳の間で我慢汁塗れのブルマを押し上げる陰茎を無様に主張させ続けるアキオは、誰が見ても悲しい程に滑稽だった。
 立っているだけで羞恥心に軽い眩暈を覚えるアキオだが、ブルマ越しの勃起を晒しているのは彼だけではなかった。扶養者が居る生徒達はそれぞれ悪戯を施された痕跡を残す者が多く、早々に扶養者の精液をブルマに付着させている者や、体操着越しから乳首にローターを付けられている事が確認できる者まで見受けられる始末。前後左右、発情していない生徒を見つけ出す方が難しい程だった。中には、恥ずかしい体操着姿を大勢に晒されているという状況そのものに性的興奮を覚えて勃起している者も居る。 
 ただ、誰も彼も手を握り締め、羞恥とそこに混ざる快楽をやり過ごす事で精一杯だった。頬を染めて荒い息を吐いているというのに規律正しく整然と並ぶ少年達からは、被虐的な官能の匂いが立ち込める。アキオの額も、じっとりと汗をかいていた。

 会式の言葉と共に、最上級生の中から選出された両組の代表選手が壇上に進み出て、厳かに応援旗を掲げた。
「宣誓ッ! 私達、性奴隷訓練生一同は、日頃の成果を十分に発揮し、これまで飼育して下さった扶養者様、これから飼育して下さる出資者様の目を全身全霊で楽しませる事を誓います!」
「ご指導ご鞭撻ご調教頂いた学校、共に励んだ級友達の期待に堪える為、正々堂々と競技を行い、全力を尽くす事を誓います!」 
選手宣誓の言葉を読み上げられると、観戦席から疎らな拍手が起こる。両名とも、成長期も終えたであろう背丈になってなお、中性的な魅力の損なわれない美しい男子生徒だった。
 次いで、参観に来た扶養者達に向けた校長の慇懃な挨拶が始まる。校長の話が退屈で長いのは、この学校でも例外ではない。
「この後は準備体操を行い、第1学年による陰茎相撲、第2学年による球入れ、第3学年による長距離百足競争、昼食と休憩を挟んで、被扶養生徒による借り物競争、第1学年による障害物競争、第2学年による浣腸リレー、第3学年による肛門綱引きを予定しております。どうぞ最後の閉会式までお付き合い下さい。なお、体育祭の映像はリアルタイムで配信しております」
学籍番号で個別の映像記録をご請求いただけます、と細々とした諸連絡に話が移る。この学園は支援者達の寄付金の他にも、こういった記録サービスを行ってデータ販売をする事でも収益を上げていた。その為、体育祭の練習は教師陣も力を入れてくるのである。アキオが開会式前から肛門を拡張していたのも、パフォーマンスの向上に燃える担任からの指示だった。

 漸く尻に食む異物に馴染み、アキオを苛む興奮が和らいできた頃、冗漫な校長の話が終わった。それは束の間の安寧であった。

 準備体操が始まれば、アキオは再び腸壁を擦られる感覚を絶え間無く味わわなくてはならなくなる。しかし、体育祭の進行を勤める体育科の教師は段取りに忠実だった。
「全隊、体操隊形に開けッ!」
体育教師の野太い号令が響けば、生徒は一斉に動き出す。
 放送席のオーディオを経由した軽快なピアノのメロディが校庭に響き始めると、アキオの陰鬱な気分は加速した。予想済みの困苦だが、決して楽でない事も分かりきっているからだ。
『腕を頭の後ろで組み、脚を大きく開いて、腰を前後に振る運動ー! イチ、ニ、サン、ヨン。ニ、ニ、サン……』
爽やかなメロディとは裏腹に、体育教師の号令が滑稽なポーズを要求する。この学園伝統の準備体操である。勿論、生徒達は指示通りにガニ股になって、腰を前後に振った。声が小さいぞォ、と担任達からの叱咤が聞こえるが、大抵の生徒は羞恥でそれどころではない。まして腹に長大な玩具を沈めたままのアキオは、腰を前に突き出す度に臀部の筋肉が締まってしまい、発声はほぼ喘ぎ声に変わっていた。
『次は、足を肩幅に開いて、膝を曲げ伸ばしする運動ー!』
スピーカー越しの音声が、ピアノの拍子に合わせて坦々とカウントをしていく。それに従って体勢を変える度、硬いディルドがアキオの内壁を擦り上げる。
「イチ、ニッ、サぁっ、ひっ、んんぁっ、ああっ、あああ……」
しゃがむ度、ディルドが出て行ってしまいそうになるのを窮屈なブルマが押し留める。パンパンに張った陰茎が締め付けられて苦しさを覚えるが、よく躾けられた身体にはその苦悶すらも快楽を貪る材料にしてしまう。
 ブルマに張ったテントの先から滴る我慢汁が、グラウンドの土を汚していく。

 「ニッ、ニィッ……ィイいッ! いぐウゥゥッ!!」
1年の列の前方で、しゃがみ込む動作をした生徒が一際大きな声で絶頂したのがアキオの視界の端に映った。快楽に支配されて痙攣するだけになった彼の身体は、尻を突き出した体勢のまま失禁した。数拍遅れて、脱糞のように肛門周りの薄布が隆起し、幾つものピンポン球がブルマの中に排泄されていく。
「はひ、も、やら、やらぁっ」
直ぐに複数人の教員がやってきて生徒を抑えると、異物を詰め直して彼を強引に立たせた。軽快なピアノメロディは、当たり前のように流れ続けていた。アキオを含む他の生徒達は、見ないふりをするまでもなく、己の体操を継続するだけで息も絶え絶えだった。
「ほら、訓練通り体操を続けなさい」
教員が尻を叩いて促しただけで、彼は二度目の絶頂を迎え、脚をバタつかせた。
「らって、こんらろ、やってな、うぇっやら……やらぁ……」
練習の時はこんなに大量の異物を尻に詰められることなどなかったのに、と呂律の回らない泣き言を漏らす生徒。まだ性奴隷になって日の浅い生徒によく見られる駄々の捏ね方だった。如何なる理不尽なれど、主人がした事ならば絶対。それが分からぬ生徒には、教員の指導も厳しくなる。
「やらっ、やらああああっ」
特別指導が必要だと断言した教員は、反抗を続ける未熟な生徒を隊列から引き摺っていく。
 そうして、体操が続く毎にまた1年生の隊列の中からひとりふたりと脱落し、時に特別指導へと強制連行されていった。

 『次は、胸を反らし、乳頭突起を摘まみ上げ、乳首の凝りを解す運動ー!イチ、ニ、サン、ヨン。ニ、ニ、サン……』
人工の晴天の下、軽快なピアノメロディーと坦々とした号令は、憐れな奴隷達の泣き言を無視して進行していく。八拍子の号令を追うように、生徒達の嬌声と啜り泣きが続いた。


 体操の終盤、ついにアキオも到底掛け声とは言い難い嬌声をあげて精を放ったが、彼が自身の射精に気付いたのは、準備体操が終わってからだった。


prev← →next




back
top
[bookmark]



×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -