ぱちぱちれんさい | ナノ
 大掃除のアルバム整理は諸刃の剣



「年末なんてキライ」


「天童、真面目に掃除をしろ」


「なんで部室の大掃除なんかしなきゃなんないのよ、毎日キレーに使ってるでしょーが」


「文句言うなよ。1年はこの寒いのにトイレやら玄関やらの掃除してるんだから、ヒーターのある部室で掃除できるだけ良しとしなさい」


「獅音、気合入ってんなー」


「今年こそ、この長らく放置状態の段ボールの山を整理する! 月刊バリボーの置き場がもうないんだよ」


「捨てりゃいーのに、大掃除なんだから」


「若利、ちょっとそこスペース空けて。よいしょっと!」ドサッ


「うわ、けむっ! 窓開けろ、窓!」


「ちょっとやめなさいよ寒いでしょーが! げほっげほっ」


「埃かぶってんな、いつからあるんだこれ?」


「少なくとも俺が中学の頃からあったな」


「どれどれ、中身は…ビデオ?」


「もしかして、昔の試合のビデオか? 春高のビデオとかあんじゃねえの? 見てー!」


「でもだいぶ古いビデオだぞ、見れんのか?」


「確か女子の部室にビデオデッキあったっけ? 中身確認して、見れないようだったら捨てよっか」









「すまない空知、わざわざデッキを持って来させて」


「ううん、みんなが部室に入るなり追い出しちゃったのはうちの部員だし…。ビデオ見るくらいだったら女子の部室でもいいのに」


「いや、さすがにそれは女子に悪いし、うちにうるせーのがいるからいいよ」


「ちょっと英太く〜ん、自虐ネタはやめなよ〜」


「お前のことだよ!!」


「でも白鳥沢の昔の試合のビデオなんて貴重だね。見れたら女子でも見たいな」


「まあ、とりあえず試してみようか。どれどれ…」ガチャッ








『オラ、しみったれたスパイク打ってんじゃねえぞテメーら!!!』


『『『はいっ!!』』』








「あれ監督か!? わけー!!」


「えーっと、12年前の映像みたいだね」


「様子からすると、練習中を撮ったのかな」








『じーじ、だっこ!』


『ん? …あとでいくらでもしてあげっから、あっちでお姉ちゃんと遊んでろ。な?』


『やだ! いま!』


『…しゃーねぇな。ほれ』


『きゃーっ! じーじだいすき!』








「…え、誰だあの子」


「あの監督がデレデレしてる…!?」


「…もしかして、あの子って巴じゃ…」


「「「な、何ぃ!?」」」









『巴、あれがヘタレたスパイクだ。あれがちょっとマシなスパイクだ』


『うん』


『そんじゃあ、あの木偶の坊が打ったのは?』


『へたれたすぱいく!』


『正解だ! テメーなんだそのスパイクは、5歳にもヘタレてんのが丸わかりだぞコノヤロー!! 気合い入れろや!!』


『はいっ! すいませんっ!』









「なんだあれ、巴が監督にべったべただぞ!? あと監督も孫バカ炸裂してんじゃねーか!!」


「ってかあのゴリラにも三つ編みおさげしてた時期があったことに驚きだよ。生まれた頃から今の猿みたいな髪型してんのかと思ってた」


「天童、また殴られるぞ。でも可愛いなー、小さい頃の巴」


「ほんと、可愛い…っ! あとでこれDVDに焼いてちょうだい!」


「空知、身を乗り出すな。画面が見えん」










『巴ちゃーん』


『はーい』


『じーじはお家でも怖いの?』


『うちではやさしい! バレーしてるときは、こわいけどすごい!』


『そうなんだ〜。じーじのこと好き?』


『だいすき! おおきくなったら、じーじみたいになりたい!』









「…あれ、なんでだろう…なぜか涙が…


「わ、私も泣けてきた…。巴、はやく鷲匠監督に素直になればいいのに…」


「うん、これは部室に置いておこう…。あの二人が今を良い思い出にできた頃にまた見ような…」


「こいつら反抗期の娘と父親のドラマとかで号泣するタイプだよな」


「試合の映像はないのか」


「さすがにこれ全部が鷲匠のビデオってことはないだろ…。こいつらほっといて確認しようぜ」










「は!? そんなのあったの!? やだ捨ててよそんなもん!!」


「なんでよ、いいじゃない! それにしても可愛かったなぁ、ちっちゃい頃の巴」


「やめてよ恥ずかしー! あの頃の写真とか自分で見ても、猿の子供にしか見えないんだから!」


「そんなことないよ、可愛いよ! 目がぱっちりしてて、三つ編みおさげで」


「うぅ〜…そんな姿を天童に見られたとか一生の恥だ…絶対次会ったらなんか言われる…」


「でも巴、今でも鷲匠監督のこと大好きでしょ?」


「ふぇっ!? な、なに藪から棒に!」


「だって巴、鷲匠監督が体育館に来るとわかりやすく気合入るんだもの」


「…だ、だってさ。凄い人なんだよ、うちのじーちゃん。じーちゃんの孫ってことで色々あったけど、でもやっぱり尊敬してるし、ああなりたいって昔っから思ってる。鷲匠の名前に恥じないような、そんな選手になりたい。…じーちゃんが自慢できるような選手に」


「巴…」ジーン


「な、内緒だよ! 特にじーちゃんと男バレの奴らには!」


「うん…でもいつかは自分から言ってあげなよ」


「あーはいはい! こういう時だけ小鳩、口うるさいんだから!」









「…」


「わ、鷲匠監督、大丈夫ですか?」


「今話しかけるな…歳とると色んなところが緩くなっていけねえな…」グスッ


(素直じゃないのは監督もだよなぁ…)



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