晴れのち命乞いのち豪雨









緑間と高尾がシャワーに入ってから、その後にシャワーに入ると、黄瀬くんの入れてくれたらしいホットミルクがテーブルに出されていた。

部屋の中央に置かれた白いテーブルに向かって座りながら、何故かふくれている緑間に話しかけようか否か、ううん、と考えながらホットミルクを一口飲む。
おいしい。温かい。
ふ、と息をかけたりホットミルクに夢中になっていると、高尾が痺れを切らしたように、なあ、と呟いた。



「なんで二人、一緒に暮らしてるの?」


思わず黄瀬くんと顔を合わせて瞬いてしまった。
どうします、と目で訴えかけてみると、黄瀬くんは困ったように苦笑いでうん、と頷く。


事のあらましを全て、黄瀬くんが二人に丁寧に説明してくれた。
呆然とする二人、どうしようかとそわそわする自分。
ちらりと二人の顔を覗き、表情を窺ってから口を開こうかともじもじする。

しかし露知れず、高尾が先に口を開いた。


「…少女漫画かよ」

「わ、私も思った」


「…そういうこっちゃないのだよ」


呆れたような声音の緑間は、盛大なため息をついて私を睨む。
びくり、と肩が跳ね上がった。

ついに来たか、怒られるときが。
覚悟はできている。
震える手でマグカップをテーブルに起き、崩していた足を正座に戻した。

緑間はなんとなくこういうの絶対怒りそうだというのは重々承知している。
高尾も黄瀬くんも、どことなしにはらはらしているような表情で、私と緑間の様子を見ていた。



「何故、何も言わなかったのだよ」

「み、緑間、怒る、から」


「別に怒りはしない。お前と相手の事情だ。しかし、」


そこまで言って、緑間は口ごもる。
あ、う、と唸る緑間を見て、高尾は先ほどの表情を一変させてにやにやしていた。
ちらりと目の合った黄瀬くんでさえ苦笑いである。
どいうことだろう。

思わず、耐えきれなくなり、緑間になに、と尋ねると、ついに高尾が吹き出した。



「な、な、なんでもないのだよ!ただ次からはこういったことがあれば必ず伝えろ!いいか、分かったな!」

「あ、うん、ごめん」


び、びっくりした。
少し怒ってるじゃないか。
突如怒鳴りだした緑間に、体をのけぞらせつつも小さく返事をする。
ひーひー笑ってる高尾は緑間の肩をばしばし叩きながら真ちゃんの言いたいこと分かるよ、と最早殴る勢いの力でそれを続けていた。

ついに堪忍袋の緒が切れたらしい緑間は高尾の頬に思いきりビンタをかました。


「いってぇ!ごめんごめん、ちょっと笑いすぎた」

「ちょっとではないだろうが馬鹿め」


「ごめんって。でもあれじゃん、とりあえず相手が知り合いでよかったじゃん」

「…良い訳がないのだよ。こういう奴に限って逆に何するかわからん」


「でももしもの時シバきやすいだろ!」


また物騒な。
けらけら笑ってそんな様子とは裏腹に物騒なことを呟いた高尾にびく、と黄瀬くんが震え上がる。

そんなことないよ、という旨を伝えるべきかどうか。
未だけらけら笑っている高尾をとりあえずやめなさいという意味を込めてはたいた。


「黄瀬くんは、いい人だよ」


「だってさ真ちゃん」

「どうだかな」


あの、緑間のたまにする見下したような笑い方。
あれは正直ものすごく怖いというか、寒気が走るというか。
あれをやられると反論しにくくなっちゃうんだよなあ、どうにも。

黄瀬くんも黄瀬くんで、どう考えているのだろうか。
場合によっては私がフォローを入れねば。


「…もー、酷いっスよ緑間っち、中学からの仲じゃないスか」

「何の仲なのだよ、何の」


「ヒドッ。一緒に青春した仲じゃん!」

「気色の悪い言い方をするな」


まあ、大丈夫そう、なのかな。
よく分からないけど。
砕けた感じで話している二人を見つつ、そろそろ夕飯の準備をしなくては、とこっそり高尾に耳打ちをする。

それを聞いた高尾はお、と言って黄瀬くんと言い合いのようなことをしている緑間の肩を叩いた。



「真ちゃん真ちゃん。そんなに気になるなら今日一日泊めてもらおうよ、明日部活午後からだろ」


「は?」

「え、」


黄瀬くんと緑間が同時に振り向いて声を出す。
え、とあからさまに嫌そうな顔をした黄瀬くんはばっ、と私の顔を見てぶんぶんと首を横に振っていた。

ええ。
どうしよう。


「もう黄瀬クンの部屋着も借りちゃったし、ジャージも乾燥中だし。な、悪くないっしょ?」

「わ、私は別に、でも…」


「そ、そんな急だし、午後からと言えど部活もあるんなら今日は…」



「…名字が良いと言うなら泊まる」

「え、マジで!」


いやだ。
視線でそう訴えかけてくる黄瀬くんにごめんと思いつつも期待の眼差しを浮かべてくる二人にうん、いいよ、とつい二つ返事をしてしまった。
ご、ごめん黄瀬くん。


そうは思いつつも内心、はじめての経験に浮かれて呑気に夕飯の献立を考えていたり。


2012.1101
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