私とトウヤは双子──言うまでもなく血が繋がっている。昔はそれがとても嬉しかったけれど、今では恨めしくて堪らない。絶対に恋愛感情を抱いてはいけない相手…それが、トウヤ。

しかし、頭の中でそれを理解しているのに私はトウヤを好きになってしまった。意志とは関係なく高鳴る心臓に戸惑いを隠せなくて、一時期周囲に八つ当たりしてしまったこともある。どうしようもない、諦めようと思っても出来ない。この想いが叶う事は永遠にない。

だから私はこの異常な感情を抑えるために、自分の為、トウヤの為に…彼に嫌われることにした。例えばベッドの中に蚣を入れてみたり、お気に入りのシャツを鋏で引き裂いたり、物を隠して勝手に捨てたり、嫌いだと宣言したり…まあもう数えきれないくらい色々。言えないくらい酷いこともした。

…お陰でトウヤは私のことをもう双子の姉だと言ってくれなくなった。いつも私を見ると顔を歪めて睨み、最近ではもう存在を無視される。幼なじみ達が私の話題を出すと不機嫌になる。トウコ、と親しげに呼んでくれていたのにいつしか、お前だとかコイツだとか…いや、それさえも言わないかもしれない。というか、こんな簡単なことも分からないくらいもう随分と会話してない。無視されているし、無視しているのだから。

それは勿論身を裂くように悲しくて辛いことだけど、でも良かった。私みたいなろくでもない女と付き合って、尚且つ世間から冷たい目で見られる…なんてことは少なくとも今後起こらないのだから。

幸せになってほしい。心から、そう思っていたのに…──

ねぇトウヤ…隣にいるその女は誰なの?

放課後見つけた学校の正門から出てきた、私と話すよりも数倍幸せそうにそれと話しているトウヤ。幸せ、そうに。

今まで沢山の人に告白されてきた私。イエスといえば何人とでも付き合えたのにそれが出来なかったのはやっぱりトウヤが好きだから。そうして片っ端から断り続けるうちに、気が付いたら高嶺の花、氷雪のマドンナだなんて大袈裟なあだ名も付いていた。

そんな私が、好きな人を譲る相手……それが、あの、隣で馬鹿みたいに笑ってる女だと言うのか。冴えない、代わり映えの無い只のブスじゃんか。言い過ぎじゃない。突如強い脱力感に襲われた。

よくドラマなんかで、好きな人が選んだ人ならきっと素敵な人だから諦められる…とかいう台詞があるが、これじゃあ無理。ベルみたいな本当に可愛い子と幸せになってくれるなら私も踏ん切りが付くというのに。認めることが、出来たのに。

──許せない。

ふと、私が見ていることに気が付いたらしいトウヤは急に不機嫌になってブスの手を引いてまるで私からソイツを守るかのように早歩きで去っていった。

引っ張られながら不思議そうにしているブスは、トウヤの機嫌が急降下しているのに気が付いていないみたいだ。ブスのくせ鈍いなんて救い様がない。そう思わない?

もう出来る限りの眼力でソイツを睨んでいると、ソイツは奇跡的にも私に気が付いた。私の表情にビクリと身体を震わせるとトウヤに引っ付きながら居なくなった。もう嫌だ。私って、何で報われないんだろう。泣きたくなる。

だけど、後日会ったベルは言った。トウヤの彼女、凄く可愛いよね、と。私の美的感覚はどうやら狂っているらしい。



そんな卑しい目で見ないでおくれよ/title 吐く声
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