お互い、こんな関係になるつもりなんて全くと言って良いほど無かった。持っている感情といえば家族愛以外の何物でもなくて、純粋に笑いあえていたのに。つまり、極めて普通だった。

一体いつから、こうなった…?

ぐちゃぐちゃでどろどろ。どうして私達はこんなことをしているのか理解出来なくて、だけどそれは理解しようとする勇気さえないからかもしれない。

気が付いたら愛を囁いていて、気が付いたら簡単にベッドの上でイケナイコトをしていた。最中はもう頭の中いっぱいいっぱいで、一々いけないだとか許してだとか考えていられない。

ただその時の空気と気分に身を任せて喘いで、色んな部位が痛みだしたころ…全部終わって辺りが何とも言えない静寂に包まれたとき。死にたくなるほどの罪悪感に襲われる。

それで、もうこんなことやめようと、どちらからともなく呟くのだ。だけどそれは所詮口先だけというもので、また気が付いたら私はベッドの上。双子の弟とふたり。

そして、やっぱり罪悪感。どうしようもなく胸が苦しくて、疾しく穢れた体を清めたくて、お風呂場に駆け込む。

無我夢中。肌が赤くなって傷むくらいに擦って、それから蒸気で曇った鏡に映る首筋にちらりと赤い何かが散らばっているのに気が付いてそこを重点的に擦る。

目がじんわりと熱を持って、お湯じゃないまた別の液体が溢れるが、シャワーのせいでそれが頬を伝ったのかどうかは感覚的には正確に分からない。流れていく。止まらない涙は肌を擦る痛みからくるのか、胸の苦しさからくるのか…

泣くぐらいならこんなこと止めればいい、馬鹿らしい。頭では分かってる、でも出来ない。矛盾してる。麻薬と同じ、依存してる。

シャワーを終えて洗面所の鏡に映る私は疲れた顔をしていて、当たり前だけど赤い跡は消えていない。それどころか回りまで赤くなってしかも血が滲んでいるから余計に目立って見えた。

髪をパタパタと叩くように水分を拭き取りながら廊下を歩いて、トウヤと擦れ違う。一瞬目が合ったけど、首を見たトウヤは申し訳なさそうにごめんと呟くと足早に私がさっきまでいた洗面所に入っていく。


ベッドに入っても、寝れない。だから仕方なく旅のレポートでも開いて暇を潰そうと鞄を漁る。2年前だったかな、旅してたの。あの頃に戻りたい。凄く大変だったけど、今よりはましだと思うんだ。

暫くするとシャワーを浴び終えたらしいトウヤが小さくノックをしてきた。入れば、うん。ガチャリ、控えめに開かれたドアから覗くトウヤの顔は、鏡に映った私と同じ。疲れてる。

「ねぇ、もうやめようか。お互いのためにも」

ああ、またその言葉か。もう何回聞いたのか分からない。でも実現できない。ただ時間だけが無駄にハイスピードで過ぎ去っていく。
「そうしたいのは、山々だけどね」

嘲るように顔を歪ませてそう言うとこれからもこんな関係が続くような予感がした。というか、確信に近い。

結局私達は、引き返そうと身を動かすのが遅過ぎた。最早後戻り出来ない。はい、そうですか。と言って離れられるような柔な関係では無くなってしまった。

もう一度言う。その言葉は、所詮口先だけに過ぎないの。



















title 吐く声
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テーマ「人外ファンタジー」
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