これは一刻も早く治って貰わないと私の肌の美容に悪影響極まりない、蕁麻疹半端ねえ。…美容なんて気にしたことないけど。
しかし詰め寄った医者が言うには記憶がいつ戻るか全く分からないのだと。てめえそれでも医者かよコノヤロー!
気持ちの悪いトウヤに取り敢えず私はあんたのお姉様なのよおほほって言ってみたら、奴はあろうことか、あーそうなんだ…似てない双子だね、特に頭の辺りが。なんて抜かしやがった。ナチュラルに馬鹿だと言われた。認めたくはないがまさにその通りであるのが憎たらしい。似てない、って、顔だけはほぼそっくりだと思う私は目が可笑しいのか。結果、少しだけ蕁麻疹が治まった。良かった良かった、記憶無くてもトウヤはトウヤなんだね、口の悪さとか。しかしあの張り付けたような笑みは何とかならないのかしら。
「トウコちゃん、林檎切ってくれる?」
トウコ、ちゃん。ぞわわわ、鳥肌が…。しかし聖母のように優しい私はふてぶてしい態度のトウヤには何も文句は言わないでおこう。言われたとおり林檎に包丁を滑らせる。危なっかしい手付きで何とか出来上がって、皿に載せてトウヤに渡すと何で兎じゃないんだと文句を言われた。お前は乙女か。
しのごの言いつつも結局は全部食べ終えたトウヤに、こいつは本当に記憶喪失なのかって少し疑念が沸きだす。だって、あんまりにも馴染み過ぎだと思わない?って。
チェレンとベルにそう言ってみたら、不思議そうな顔された。意味不明なんだけど。


「トウヤは、何か悩み事があるの」
ベッドの上で窓の外を見つめたままぴくりとも動かないトウヤがあまりにも不気味過ぎたのでおそるおそる話し掛けた。くるり、こちらを振り向いた。そして、差し出された手。私は目を見開いた。
傷がピーッとたくさんあったからである。よく見れば新しいのから古いの、大小まで種類豊富だった。これは、俗に言うリストカットというやつである。
私は、トウヤがそんなことをするまで精神的に追い詰められていたなんて全く知らなかったから兎に角言葉が出て来なかった。何も言わない私にトウヤはあろうことか微笑んだのである。
「気持ち悪いね」
何にも、言えなかった。


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