ライブキャスターが煩く鳴り響いた。畜生、今厳選中だっていうのになんて非常識な奴なんだなんて。電話を掛けてきた相手には分かるはずがないであろう理不尽な理由で苛ついてみたりするのはもう私の中でお決まりだったりする。
あーはいもしもしって適当に言ったのに、なんと通話ボタンを押していなかったことに気が付いた。なんて馬鹿らしい。
少し恥ずかしくなって何度か咳払いして、今度こそ通話ボタンを押してライブキャスターに向かって話し掛けた。あー、誰だか見てないから知らないけど私今忙しいんだよね後にしてよって。
しかし私の言葉は相手の慌てたような声にかぶさって、ついには押し負けて聞こえなくなった。何なのこいつ…ああ、チェレンだった。やっと画面を確認すると、いつもの落ち着いた様子とは打って変わり血相を変えた彼が。
「トウヤが、記憶喪失みたいなんだ…!」
なん、です…と?



何それ何それ何それ、どういうこと。あんな、破壊光線…それどころがVジェネレード食らってもケロリとしてそうな奴が(正直それは言い過ぎかもしれないけど)、記憶が、そそそ喪失なんて、絶対に何かの間違いだと私は断言したい。というか、断言する。ええ、しますとも!
だから例え私が急いで病院に向かって、扉を開き、トウヤ何があったの!?って聞いても、奴はきっとああ医者の頭が可笑しかっただけで俺は何とも無いんだよねなんて爆弾を落としてくるに違いない。そう、あんなに慌てたチェレンだって…私を騙そうとしたんだな、それ以外に考え付かないし。あれ、今日エイプリルフールだったっけ。めっちゃ暑いけど。糞暑いけど。
というわけで私は憎たらしい奴の意表を付いて比較的ゆっくりと足を進めたのであった、まる



「ああ、こんにちは。君は僕の知り合いの人なのかな?ごめんね、今僕記憶が無くって…」

何これ何これ何これ何これ誰だよこれ気持ち悪いいいい。


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テーマ「人外ファンタジー」
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