ガタン、ゴトン。ゆっくりとゴンドラが上がっていき、それにつれ見える景色もどんどん拡がっていく。私は今、Nさんと2人きりで観覧車に乗っていた。心なしか何時もよりも明るい表情のNさんは、膝の上にまだ卵から生まれたばかりの私のゾロアを乗せながら外の景色を興味深そうに見つめていた。もう何度見たか分からないくらいの見慣れた景色であるはずなのに、彼はまるで初めて見たそれであるように楽しそうなのだ。

「Nさんは、何で観覧車が好きなんですか?」

Nさんの視線がゆっくりと此方を向いた。隣に座っているのではなくて、向かい合って座っているので、お互いの様子がとても分かりやすい。

「まず、キミはこの形がとても美しいものだとは思わないかい?」

数学の世界では、円形以上に美しい図形は存在しないのだとNさんは教えてくれた。そこからまあ何とも難しい話に突入し、如何に円が美しいかの数々の定理やら幾何学やら、加えて円運動のなんやらが飛び出してきたのだが生憎私はそんなものを理解できる程の頭脳を持っていないので分からない。

「………ボクの全身から溢れる観覧車へのラブ!」

取り敢えず何か喋ろうと思って適当にそう言うと、Nさんがクスクスと小さく笑った。

「…それはもしかしてボクの真似?」

もしかしなくても真似です。ちょうどその時やっと天辺に差し掛かったみたいで、地面は人間が豆粒に見えるくらいに遠くにある。少しだけ怖くなってさっと目を逸らすと、夕日に当てられて淡く浮かび上がるように綺麗なNさんの横顔。思わず見惚れてしまった。

「…綺麗」

気が付くとそう口に出ていて、ハッとして口に手を当てる。不思議そうな顔をしたNさんが私を見る。聞こえてなかったのかな、それとも自分に向かって言われたと思っていないのか。

「…やっぱりキミは、あのトレーナーに似ているよ」

そう言ったNさんの表情はなんとも曖昧で、いろんな感情がごちゃ混ぜになったような、なんとも言えない、妙に人間染みた表情だった。



爛れた花/title ドロシー











ボツったもの。取り敢えずNさん数学分かんないんで貴方書けません
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テーマ「人外ファンタジー」
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