トウヤくんは私のことが大嫌いなのだと、トウコちゃんから教えてもらった。わざわざ言われなくてもそんなこと知っていると思ったけれど、それをトウコちゃんが心底楽しそうに、笑いを堪えるように顔を歪ませながら言うものだから、黙っておいた。

最後にトウコちゃんは無表情の私に諦めれば良いのにと言って去っていった。一瞬の出来事だった。

どんどん遠ざかるトウコちゃんの後ろ姿を見つめながら、ぼーっと考えるのはトウヤくんのこと。今日は、どういう感じで告白しようか…なんてね。

私は知っている。大好きなトウヤくんに、私と同じように大好きな人がいることを。それがトウコちゃんなのか、それともベルちゃんなのか、はたまたチェレンくんなのか、ジムリーダーとかリーグの人なのか誰なのかは残念ながら分からないけど。

けれど、それを知ったからといって諦められるような軽い気持ちじゃなかったから、今日も私は彼に想いを伝えようと考えを巡らせる。

私のこういうところがきっと嫌われる理由なんじゃないかなと思ったけれど、そんなのどうでも良かった。私は、トウヤくんに想いを伝えるという行為に一種の義務的な何かを感じているのかもしれない。


「トウヤくん、好き」

偶然見かけたトウヤくんに後ろから忍び寄って手を掴んだ。バッと振り返ったトウヤくんは眉間に皺を寄せると私の手を振り払った。

何故こんなことをするのかというと、堂々と話し掛けようとすれば彼はレシラムという伝説のポケモンに乗って素早く飛んでいってしまうから。こうして忍び寄って手を掴んでしまえば、ある程度の足止めが出来ることに最近気が付いたのだ。

私は影が薄くて気配が読みにくいらしいから、気付かれずに近寄るなんて朝飯前。

トウヤくんは私に捕まったことが本当に嫌だったらしく、いつもより機嫌が悪い。いつもは何かしら直ぐに拒絶の言葉を吐くのに、今日は私を通り越した何処か遠くを睨んでいる。

「お前なんか、死ねば良いのに」

やっと吐き出された言葉はそれだった。彼からこんなに酷いことを言われたのは初めてだったから、私の視界は不安定にぶわりと歪んだ。

まあでも、そう言われても仕方がないことを私はしているのだからと気が付くと、その歪みは一瞬で引っ込んだ。

いつの間にかトウヤくんは居なくなっていて、空を見上げると黒い点が見えた。レシラムじゃない。何に乗っているんだろうか。

佇む私に道行く人は怪訝な表情を向ける。私はそんなこと気にせずに、ふと考えた。トウヤくんは私に死ねば良いのにと言った。…なら、本当に死んでしまおうか?

そうだ…手首を切ってしまえば良い。溢れ出る赤を眺めながら、そして自分が死んだ後には何が起こるか…なんて、妄想したりして。


いたかったのです/title 自慰




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