Nは本当に目が離せない人物だ。一緒に行動をしていても此方が少しでも目を離せばいつの間にかふらふらと何処かへ勝手に歩いて行って迷子になるし、かと思えばふとした瞬間にはとんでもない問題を引き連れてひょっこり戻ってきたりもする。
Nは小さい頃から変わった子供だったから、ただでさえ外見も普通とは全然違って他とは浮いているのに中身まで変わってるから余計手の施しようがないヤツで、他の幼い子供とはどうも馬が合わなかった。除け者にされるNと一緒にいるのは幼馴染であることも手伝ってかいつでも私で、気付けば私は別に変わり者のNとは違って至ってまともであるにも関わらず友達は一人も出来なかった。そのかわりNとはとっても仲良くなったけれど。
お互いに進学して中学生…つまり思春期真っ只中に突入してもこの関係は相変わらずで、一時期容姿端麗なNの隣にいるのが恥ずかしいと思う時期もあったけど、そんな私とは裏腹にNはまるでそういう方面の感情がごっそり欠如しているかの如く全く気にしてもいないらしくて、そのうち私も気にするのが馬鹿馬鹿しくなって開き直ってやっぱり一緒にいた。
そうして現在、高校生。私たちは仲良く過ごしています。もうこの時既に隣りにNがいることはある意味当たり前のような環境になっていて、逆にいない方が落ち着かないような…微妙に依存気味だったりする。今日はNがやけに饒舌な日で、今朝いつもより早くうちに迎えに来たかと唐突に円という図形の素晴らしさや円運動について延々と力説し始めた。しかし私は完全なる文系人間であるので、Nが爛々と目を輝かせて語っているのに申し訳ないが半分も理解できていない。というかこの人は理数系に関しては異常すぎる異常で、その知識は軽く大学生レベルかそれさえも超えているほどである。そんなものをペラペラと朝っぱらの、ただでさえ頭の回らない時間帯に話されてもふーんとかはーんしか言えないに決まってる。

「…、名前。…もう学校に着いたけどいいかげん目は覚めたかい?」

「…は」

つまりだ。Nは私が理解していない上に眠気と格闘中だったのを承知の上で話していたらしい。要は、取り敢えず誰かに話せればいいやみたいな。確かに顔を上げれば学校は目の前で、Nは一頻り話し終えて満足したのか清々しそうにしていた。

「…目は覚めた」

「そうかい」

Nはそれだけ言ってスタスタと早歩きで先へ進んでいく。私は長身でスタイルの良いNとは違って背も低いうえに足も短いから、その速度に着いていけなくて転けそうになる。さっきまで隣りで並んで歩いていたのにいきなりどうしたんだろうと疑問に思いながらも置いて行かれまいと先行くNの白くて綺麗な手を慌てながらもしっかりと掴んだ。

「歩くの早いよ。着いていけないじゃん」

きゅっと握った手からじんわりと熱が広がっていく。少し驚いた様子のNが、珍しくちょっとだけ嬉しそうに笑った。それがあまりに美しく儚げだったので、私は思わず赤面し顔を逸らしてしまった。


いつまでも初恋/title 自慰


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