好きな人がいるんだって笑った友達がいた。勇気を出して告白したらOKもらえたと笑った友達が、いた。今は、目の前に泣き崩れる友達がいる。
なんでだろう、あたしの、何がいけなかったの?悲痛な声色でそう言いながら、両手で顔を覆っている。目は見えないけど、隙間からキラリと光る涙が見える。
そう聞かれても振った当人じゃない私には勿論何も分からないから、当たり障りのない言葉で相槌を打ちながら聞くしか出来ない。
ああ、そう、うん、辛かったね、うん、私は分かるよ、あんなに好きだったもんね。適当にそう吐きながら、内心私の心は冷め切っていた。ほらね、だから告白なんてしなければよかったのにって。
今くらいの思春期の恋愛っていうのは、実際最後まで続くのは本当に稀である。中学生である私達は精々卒業、高校一年前半くらいまで付き合って別れることが関の山。これでも長いほうか、私が夢見がちなだけでもっと短いかも。
そんな曖昧な時期に、本気で恋愛なんて、出来るのか。確かにその時一瞬には本当に好きかもしれないけど、暫く時が経てばそれは急速に冷めて滞る。なんて馬鹿らしいんだろう。
「ね、好き。だから付き合って」
その日の放課後、帰宅途中にいきなり手首を掴まれた私は驚きのあまり躓きそうになってしまった。しかし、それが前のめりになっただけで済んだのは皮肉にも掴まれていたから。
振り返った私が見たのは、自信有り気な顔して微笑む例の友達の元彼だった。いくらなんでも、切り替わり早過ぎじゃない?その上、私は彼とは初対面である…嘗めてんのかな。
「はぁ…あんた何がしたいの?普通別れた直後二週間くらいはフリーを通すべきでしょ」
訝しげにそう言った私に、彼はさも当然とでも言いたげに悪怯れもせず口を開いた。
「…ああ。だって、あの子は名前の情報入手に手頃だっただけだし」
あの子、私の友達。つまり、彼女は利用されたというの?あんなに嬉しそうに事細かに私に報告してきた彼女…なのに。
「サイテー。信じらんない」
幻滅である。パシッと手を振り払ってさっさと歩きだした私に、彼は至極面白そうに笑いながら言った。
「…じゃあさ、二週間でお前のこと落とすから付き合って。そうすれば二週間フリーだろ?」
「…馬鹿馬鹿しい」
ふざけてる。
告白ごっこ/title 自慰