※中2くらい、パロ/手札に潜むQの続き/色々すみません


「私、Nのことが好き」

私が顔を真っ赤にして、必死の表情でこれを伝えてもNには本当の意味で伝わることがなかった。彼は顔を赤くした私を不思議そうに見てから、僕も好きだよと言ってくれるのだが、それは意味が全く別だった。

初めて会ったあの日の言葉通り私は毎日Nの部屋に遊びに行き、そして色々な話をした。私が話すのは外の世界についてだとかが主だったけれど、Nは動物についてや数学について…他には面白い雑学など様々な興味深い話を沢山してくれた。

年頃であることも相まってか日に日にNに惹かれていく私はある日重大な事に気が付いた。Nは恐ろしいほどに男女間の感情に疎かったのである。

異性の壁…なんて有って無いようなもので、唯一あるとしたら私が重いものを持ったりしたときにNが男だから手伝うだとかその程度である。

随分前に異性についてどう思うかと聞いたことがあるが、Nの返答は私の予想を遥か斜めを突っ走り、"異性体"という化合物について熱心に説かれてしまった。

まあその時科学の話をしていたこともあるのかと思うが、私はそんなものまだ習っていませんと全力で訴えたくなった。つまりはこれでNの異性に対する意識の低さを思い知ったのだった。

そんな彼が、ある時神妙な顔持ちで私に衝撃的な発言をした。

──子供はどうやって出来るのか。

思わず飲んでいたオレンジジュースを吹き出すかと思って、慌てて口を手で塞いだ。思春期真っ盛りの私には、そんな何でもないような話題でも結構な威力を与えた。しかも、そんな質問が好きな人…そういう方面に疎いNの口から飛び出てきたものだから余計にびっくりした。

「そ、そんなの動物と同じで…」

「僕、生物学は知らないんだ」

其処ではっとした。Nの本棚には、そういう性に纏わるような本は一切無いことに気が付いたのである。これでは何とも言えない。

「え、えーと…植物とも同じだよ」

好奇心旺盛なNは余計に興味をそそられたらしく、私に答えを聞き出そうとしてくる。遂に私は鸛が運んでくるんだよなんて今どき大人でもなかなか言わない言い訳をしてみるが敢えなく論破された。鸛は今は絶滅して稀にしか見られないだなんて初めて聞いた私は素直に感心。

暫くしてからどんなことを言っても通じないNに、次第に自分のやっていることが馬鹿らしくなってきた私はふと思い付いた。この状況を逆手に取ればいいではないかと。

そう思い立ったら行動するのは早くて、私は手に持っていたオレンジジュースの入ったコップを離れた場所に置いて、純粋な探求心に目を輝かせるNを押し倒した。

萌黄色の長髪がパサリと床に広がり、Nはいきなりのことに訳が分からないのか私の顔をきょとんとした表情で見つめるだけで何の抵抗もしない。

「…名前?どうかしたのかい」

張り詰めた雰囲気に恐怖を感じたのかNが不安そうに私の下で身動ぎをしたが、今の体勢に対しては何とも思わないようだった。所詮Nにとってこの態勢も犬猫の戯れのような感覚なのだろうか。

「…N、私が身を持って教えてあげるね」

「名前…?」

Nは瞬きを繰り返しながら、私の顔色を窺うようにして名前を呼ぶ。なんで私は今まで行動を起こさなかったのだろうか。手に入れようとすれば、こんなにも簡単だったなんて。

従兄弟だって、手を出しても罪にならないのだから、私達も作れるんだよなんて微笑みながらNに伝えてみた。



硫酸の海でKとシュガーが燃えている/title 吐く声






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