※風丸視点、腐向け要素あり、原作無視/夢主←吹雪/
あなた間違ってるとリンクして相変わらずお兄ちゃん苦労人。
妹の影響力というのは思っていたよりも凄まじいもので、昨日までは何とも思っていなかった一つ一つの皆の動きに可笑しなフィルターが掛かって見えてきたため俺は焦った。
いけない、いけない、こんなのじゃ部活に集中出来ない。柔軟しているだけだったりするのに昨日の影響故なのか気が付いたらこのペアだと基山×緑川で基緑か…とか考えちゃってたりする。自分が屈伸で背中を押されるときでも、ああそういえば俺が受けなんだっけ…今は何だろうみたいなことを考えてみたり。
ふとした瞬間に視界の端に映るグラウンドを囲んでいるフェンスに張り付いて自分の好きな部員を力一杯応援している女子の、群れ。その中に今俺と同じようなことを考えている奴がいるのかと思うと何だか背筋がゾッとして恐ろしくなってきた。
「風丸…?どうしたんだ?具合でも悪いのか?」
「っ、円堂。大丈夫だよ、ちょっとボーッとしててさ…」
「本当にそれだけか?」
遂に円堂にまで心配掛けてしまった…と思ったら、何故か全員が此方を向いていた。…訂正しよう、俺は円堂だけでなく遂に皆に心配を掛けたらしい。斜め後ろを見れば、ボールが静かに転がっていた。あー…、いつの間にパスされたんだろう。
それで漸く冷静になった俺は、やっと集中したプレーが出来るようになってきた。良かった、もうあれについて考えるのは止めよう。ボールを追い掛けながらそう固く決心した俺の決意が脆くも崩れ去るのはこの後すぐ。
「風丸くん!」
そうやって話し掛けて来たのは吹雪で、彼は先を歩く俺の隣に駆け足で並んだ。その表情は、相変わらずのおっとりとした笑みを浮かべている。
部活が終わった後のこの時刻は、もう8時前で辺りは真っ暗。街灯の光が少し目に眩しくて、その回りには蛾が集っていた。
「ん?」
「風丸くんの妹の…名前さん、結局どうなったの?」
「あー、そういえば。」
つい最近、名前はサッカーに目覚めただか何だか知らないが急にマネージャーになってみたいと零していた。そのせいか、1週間に二日は部活の見学にもしれっと来てみたりしていたりと割と真剣に入部を考えているらしい。
因みに名前が隠れるのが上手いのか、はたまた存在感が薄いのか…吹雪以外の部員は皆それに気付いてない。彼が何故そんな名前に気付いたかは知らないが、それから吹雪はちょこちょこ気に掛けてくれている。
「僕は、是非…彼女にサッカー部に来てほしいなあ」
穏やかな口調でそう言った吹雪があまりにも優しげな表情だから、俺は少しの好奇心で鎌をかけてみることにした。
「……吹雪、お前まさか名前のこと──」
す、と言う"つもり"のところで、途端に顔を赤くして俺の言葉を途切った吹雪に思わず顔がにやけそうに…というか、にやけた。
「へ…?あ、そういう好きなわけじゃなくて!僕はただ純粋にマネージャーになってほしいと思っただけ…って、何で笑ってるの風丸くん!」
「くくっ…、だって、俺は好きだなんて一言も言ってないからさ」
その途端、余計に顔を赤くした吹雪は信じられないとでも言うような表情をしたあと俺から視線を反らした。
「は、嵌めたの…!?」
「どうだろうな」
「酷いよ…!絶対言わないでね」
「さあ、どうし──」
「絶 対 だ か ら ね」
「…分かった。」
因みに、言われなくとも他人の恋路を邪魔するような野暮なことをするつもりはない。ただからかっただけだったのだが、吹雪の背後に何か恐ろしいものが見えた気がした俺は速答した。今、絶対にヤバかった。すると余裕を取り戻したのかいつも通りの笑みに戻った吹雪は自身の腕時計を見てから、さよならを告げて帰っていった。
まさか…本当にまさかだった。吹雪が名前を好きだなんて。しかし、それなら吹雪がただ一人名前を見つけたことも納得できた。
相手が吹雪だからか不思議と何の嫌悪感も沸かなくて、ただ普通に妹を好きになってもらえたことが自分の事のように嬉しかった。
そうこう考えているうちに気が付くと家の前で、上機嫌で扉を開けると丁度名前がいて、名前も俺と同じように機嫌が良いらしく鼻歌なんて歌いながら玄関の花瓶に花を生けている。
「ただいま、名前」
「あ、お兄ちゃん!おかえりー。聞いてよ、お兄ちゃん総受けも良いけど最近吹雪先輩総受けにも魅力を感じてねー…それも吹雪先輩のクラスの女子が染岡先輩と吹雪先輩が……で…だから、キャー!」
「……、そうか…。」
帰って早々その話か。しかも出て来たのは吹雪…さっきまでの上機嫌なんて直ぐに吹っ飛んでいき、俺は色んな意味で吹雪が可哀想になってきた。そうだ、そうだった。名前はこういう奴だった。言うもなにも、コレじゃ言えない。言えるわけがないだろ。
「ねーお兄ちゃん、ちょっと手始めに吹雪先輩押し倒してきてよ」
「…もう寧ろお前が押し倒したら」
そうすれば名前が望むように妄想なんかじゃなくて、本当の意味で風吹になるだろう。少し意味合いが違うが。風吹風になるだろうが。
取り敢えずすみません。完全なる私の趣味で出来上がってる話ですね…でも腐女子な風丸妹、私の友達は好きらしくて…恐れながらアップさせていただきました。