ここ最近、ほぼ断続的にクラクラと目眩がする。調子が悪いのだろうか…そう思って薬を服用してみても一向に回復しない。心配する幼馴染や母親に勧められて医師に診てもらうが、原因不明だと告げられた。そして次につく台詞は、仕事によるストレスからくるものではないかということ。
しかしそんなことを言われても全く心当たりはなくて、むしろ目眩によって仕事に支障をきたすかもしれないという不安がストレスになっているくらいだった。思わず溜息が出る。

「…私の話、面白くなかったですか…?」

その時、女の子の不安そうな声が聞こえて思考の波から覚醒した。そうだ、今自分はこの目の前の女の子とカフェにいるんだった!しかも、この子は自分の大事なファンである。まだ俳優としてデビューして間も無いころから自分を応援してくれていた、数多く存在するファンの中でも最も特別に思っている子だ。

「…ごめん!そういうわけじゃないんだけど…ここのところ少し体調が悪くて」

苦笑混じりにそう言えば、女の子はとても心配そうに顔を歪めた。ああ、これは幼馴染や母親の反応と全く同じだ。この子は心から僕のことを心配してくれているんだな。同時に、有難いような申し訳ないような、複雑な気持ちになった。

「そうなんですか…。病院には行きました?」

「それが…、医者も原因が分からないって言うんだ。ストレスなんじゃないかって言われたんだけど、心当たりも無くて」

僕がそう言えば、女の子はますます心配そうな顔になった。この子は僕がどれだけやり甲斐を持って仕事をしているか知っている。だから、仕事がストレスなんじゃないかとか、そんなことは言わなかった。

テーブルの上には、すっかり冷め切った焦げ茶の液体がカップの中で照明に照らされながらゆらゆらと揺れている。そっと口に運んで口の中で転がしてみたれど、冷めているせいか余計に苦く感じた。役作りのためにコーヒーを頼んでみたけど、やっぱり僕の口には合わないみたいだ。
これ見よがしにあからさまに顔を歪めてみると、女の子は深刻そうな顔を一瞬で緩めておかしそうにクスクス笑った。それを見て僕も、クスリと笑った。



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