真夜中の学校は不気味だ。懐中電灯を持っていたりなんて当然していない私は、現在自分の鞄を抱きしめながらおそるおそる階段を降りていた。なぜ下校時間が過ぎた夜遅くに校舎に残っているのかというと、それは全面的に自業自得である。授業をサボって屋上で昼寝をしていたところ、昼寝だけでは飽き足らずすっかり日が暮れ星が出てしまい、遂には夜中…というだけの。
当然親からの心配のメールが来ていたけど、うちは比較的放任主義だからきっとか外泊してんだろうなんて軽く考えているんじゃないか。その証拠に、メールの着信履歴を見れば"ゴムはつけなさい"なんて生々しいメッセージが残っている。
しかし生憎私には自分の純潔を捧げてもいいと思える人は見つかっておらず、彼氏いない歴は年の数と言った典型的な非リア充族で、こんなメールを受け取ったところでうちのかーさんまだまだ若いなぁくらいにしか感じないのだが。

…それにしても。冷んやりとした冷気を感じながらやっと階段を降り終えたころにはクタクタだった。何かでそうな雰囲気に気を張り詰めていたら自滅したというか…。すこしべたついた感のある手摺に縋り付きながら降りた階段を振り返ってほっと一息吐いた。
階数は一。あとは長い廊下さえ抜ければ直ぐに外に出ることができるから楽勝。そう思って再び少しだけ足を動かした瞬間、目の前の職員室に仄かに明かりが灯っていることに気が付いた。ドクンと心臓が一度だけ高鳴って息が止まるかと思ったが、よくよく考えたら仕事熱心な先生がまだ残っているだけかもしれないのだから慌てるのはまだ早い。
立ち止まってしまったせいでじわじわと広がってくる恐怖感を押さえつけるようにゆっくりと深呼吸を繰り返した私は、"仕事熱心な先生"に見つからないようにそろりそろりと動き出した。

…ーガラッ!

勢いよく、扉が開く音がした。






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