人が気持ち良く寝ていたのに、いきなり叩き起こされたかと思えばあっというまに外に連れ出され、しかも結構な距離を移動するらしく半ば強制的にゼクロムを駆り出された。思わず理由を聞けば、7月7日だよ、星見なくちゃ!と名前から張り切ってそう言われたのだけど、残念なことに俺には何も思い当たる節が無かった。何だっけ…7月7日って、もしかして何かの記念日だった…?もしそうなら、覚えてない、なんて言えないし、先程理由を聞いたのもまずかったんじゃないかとどぎまぎ。
そんな俺の葛藤なんかには微塵にも気付いていないらしい名前は飛び跳ねるように空を指差して嬉しそうに声を上げた。
「ほらほら、上!すっごく綺麗…!」
言われて空を見上げれば、そこにはいっそ気持ち悪くなってしまうほどの星の群れ。まるでそこだけ別世界のように光輝いていて、目の前が妙にチカチカする。
「イッシュでは、こういう空見れないもんね」
唖然とする俺が可笑しかったのか、名前が小さく笑いながらそう言った。ん…?
「イッシュでは…って、けど此処イッシュだろ?」
「え?ゼクロム頑張ったから此処イッシュじゃないよ」
え…、嘘。つまり俺は航空中に眠気に逆らえず寝ていたらしい。ぽかんとした俺に、名前は一層笑いながらイッシュは都会だから光害で見れないの、と人差し指をピッと立てた。例えばヒウンシティとかライモンシティとか、ちょっと過剰に明る過ぎると思わない?そう少し不満げに言われ、俺自身は特にそんな風に思ったことはなかったけれど取り敢えず頷いておいた。思えば、その2つ以外にホドモエシティも近頃灯が増えたような。
「突然連れ出してごめんね、でも七夕は大事なイベントだし。それにせっかく天の川とか綺麗だから見なきゃ損だし…」
どうやら俺は七夕なるイベントのために貴重な睡眠時間を削って此処に立っているらしい。ふと、名前は何かに気付いたように此方を振り返った。もしかして、トウヤは七夕とか知らない…?おそるおそる聞かれたその言葉に、なんだか申し訳ないような気がしつつも頷くと勢いよく謝罪された。
うああ、ごめんね、説明きちんとすれば良かった…!そう後悔している名前に、まあ取り敢えず七夕って何?と聞くと、反省もそこそこに嬉々として説明しだした。
「天の神様には、織姫っていう娘がいたの。娘が年頃になって、天の神様は婿を迎えようと考えて、そして彦星っていう若者を娘に紹介したのね。2人は見目秀麗だったからお互いに一目惚れして見事結婚するんだけど、仲が良すぎて仕事をサボっちゃうようになったの。遂に天の神様はそんな2人を見兼ねて、離ればなれにして仕事に専念するようにさせたけれど、織姫があまりにも深く悲しむから一年に一度だけ会っても良いよって定めて、その日付が今日、7月7日ってわけ。…分かった?」
「へー…うん。分かった」
「良かった。」
名前が言うには、この日は短冊に夢や願い事を書いて葉竹に吊し、お祈りしたりもするらしい。残念ながら時間が無くてそれをすることは出来なかったらしいけど、俺は今さら神頼みするような願い事なんて生憎持ち合わせてないし、綺麗な星が見れただけで満足だし。
「あ、流れ星…!」
名前が空を指差した。つられてそちらを見るけれど、間に合わなかったのか何も見えなかった。しかし暫くすると再び星は流れて、白い光が尾を引くようにキラリと奔った。
「来年も、一緒に星見ようね」
此方に視線を向けた名前の見てないうちに、再び。三度目の流れ星が瞬いた。うん、勿論。


金平糖の流れ星/title 神葬
7/7は七夕!




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