茉莉子1

森の中にある小さな屋敷。
姉妹はこの屋敷に住んでいる。
彼女達は慣れたものだが、ここには不思議な事があった。


「んー…」


特徴である大きなアホ毛がぴょこりと揺れる。
茉莉子は数分間、玄関前でずっと悩んでいた。
扉の横に大量に積まれた箱があり、中には一ヶ月分程の食料。
畑等がある訳でもないので、姉妹は普段この食料達を頼りに生活していた。
野菜や果物も豊富で、好きなものを食べて過ごせるのだからありがたく、同時に甘やかされてるなあと思う。
…だがこの大量の箱、一体誰が、いつ置いているのか全く分からない。
食料が尽きそうになると、次の朝にはこうして大量に積まれている。
徹夜で張り込んでみた事もあったが、少し目を離した隙にはもうそこにあった。
そんな事を数回繰り返す内に、まあ困る訳じゃないし良いかと半分諦めていたのだが…。


「やっぱり気になる!」

「お肉だけ自給自足な所とか?」


後ろからひょいと、満里奈が現れる。
どうやら妹は、自分とは別の所が気になるらしい。


「それも気になるけど、甘えすぎは良くないだろうしそこは良いと思うの」

「でも麻衣はともかくあやねが捕ってくると生きてる時もあるし、雛はそう言うの苦手だから大変だよ」


…成る程。料理する側の疑問と言う事だろうか。
でも茉莉子が気になるのは、箱を置いている人物だ。
怪しいものが入っていた事はないしきっといい人だろう、お礼ぐらい言わせて欲しい。


「満里奈はもう気にしてないの?」

「そりゃ気になるけど、どうせ母さんじゃない?あの人そう言うの好きでしょ」

「でもお母さんあんなに重たいもの一人で運べるのかなあ」

「…茉莉子って変な所で普通の考えだね。空飛んでる奴の言う台詞じゃなさそう」

「う…」


確かに、娘である自分達を見ていると不可能ではないかも知れない。
それに母親は雰囲気の時点でかなり不思議な人だ。


「うーん、やっぱり諦めるしかないのかなあ」

「それか「いつもありがとう」とか書いた紙でも貼っておけば?方法は分からないけどここに置きに来るんだから見る可能性はあるよ」

「あ、それ良いかも。満里奈凄い」

「…こんな事で褒められたの初めてだよ」


満里奈は半分呆れ気味な表情をして裏の方へ歩いていく。
彼女を見ているとしっかりしているからか、本当は自分の方が妹なのではと思ってしまう。
まあ、今更実はそうでしたとなっても何も変わらないだろうけど。
…そうだ、そんな事よりメッセージだ。
どんな事を書こう。


「やっぱりシンプルなのが一番かな。あ、お返しにお花でも添えたら良い感じかも!」


自分は美味しい料理を作れる訳でもないし、きっとそれが良い。
意外とあっさり決定するもの。そうと決まったら暗くなる前に花を摘んでこなくては。
時計を確認すると、まだ急がなくても良さそうな時間。
…少し、お茶でも飲んでから行こう。

頼むついでに外出の許可を得る為、満里奈を追いかける事にする。
久しぶりに外へ出るので、それも少し楽しみでわくわくした。





(満里奈満里奈、お花を取りに行きたいの)(別に良いけど、食材昨日届いたばかりだし次回まで花もたないよ)(…あ)

[ 3/11 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -