満里奈1

「ねえ、満里奈お姉様。どうしてお姉様達と私や桜ちゃん達は名前が違うのでしょう」

「…は?」


天気の良い昼下がり、お茶を楽しんでいる満里奈へ、突然雛芥子がそんな事を言いだした。


「私もお姉様達みたいに「ま」から始まる名前が良いなあと思いまして」

「そしたら疑問になったの?」

「はい!だって真里亜ちゃんはそうなんですもの」


…成る程、と納得。
確かに真里亜は「ま」から始まっている。
今まで特に疑問には思わなかったが、気になってきた。
きっと、誰かしらは理由を知っている筈。


「ねえ、麻衣はどう思う。理由知ってるんじゃない?」

「プリン美味いぜ…」

「話聞いてたでしょ」


話から逃げようとしたと言う事は、知っているんだろう。
目を逸らす麻衣をじっと見る。
すると諦めたのか、溜め息を一つ吐きゆっくりと話始めた。


「母様の「ま」から始まる名前のレパートリーが、四つしかなかったんだよ…」

「……それだけ?」

「いえーす…」


…何だその理由は。
もっと深い理由があるのかと想像していたが、そんな事は全くない様だ。


「真里亜って名前が思い付く前に雛が生まれたから、雛は雛芥子って名前なのさ…」

「えー、残念ですわ…」

「……まあ、母様も大変だったろうし仕方ないか」


大切な子供、一人の名前ですら長時間悩むらしい。
それが一気に七人も出てきたら、そうなるのも無理はない気がした。
…うん、そう思っておこう。


「まあ、名前なんて良いじゃないか…雛が大事な家族なのは変わりないさね」

「!ああ、麻衣お姉様…!私お姉様の愛情に感動が止まりません!」


あれ、これ無理矢理感動方向に持っていってないだろうか。
…まあ、満足そうだし、ツッコむのも面倒だから放っておく事にする。


「…ケーキでも作ろ」


麻衣はプリンに戻り、雛芥子は自分の世界へ入ってしまった様だ。
これ以上時間を取られるのも、まあ嫌なので道具を手にキッチンへ逃走。
菓子でも作れば皆大人しくなるだろう。
あの二人だけでも疲れるのに、これがあと四人もいるのだからとても大変だ。
でも、そんな家族が何だかんだ好きではある。

………絶対に口には出さないけれど。
そんな事を、少し思った日。

[ 2/11 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -