元気すぎる先輩
 


お昼ご飯を食べたあと、つまり午後の授業はとても眠い。
うん、でもたまに校庭に迷いこんでくる犬が元気に駆け回ってるし私も頑張るぞ!なんて思いながら窓を見ると


「うおおおおおお!!!!!」

「え…っ」


声とともに大きい火の玉が目の前を通過していった。
…さ、最近の火遊びは凄い危ないね。
下を見ると火の玉が落ちたと思う場所には真っ赤な髪の男子生徒。
顔を上げて教室の方を向くと真剣な表情でこう叫ぶ


「タナカちゃん!俺ゲーセン行きたいから帰るわ!」


何て凄い早退理由!
当然タナカちゃんと呼ばれた先生は怒っている。
あ…一階の教室って事はあの人先輩かあ。


「あ、あの!放課後になってからでもゲーセン行けるのでは!」


声をかけてみると先輩はこっちを見上げ、また真剣な表情…と言うか涙を浮かべて返事をする。


「普通ならそれで良い!だがしかし、今日は…今日は…」

「そんな大事な事が…?」

「今日はアプデで新キャラが追加されるんだ!!!!」

「………へ?」

「今までは会話シーンでちょいと出るかステージ背景にいる程度のサブキャラが!ついに!追加されるんだ!!!!」


……えっと、つまり…あの。
表情の真剣さと理由のギャップに混乱してしまった。
た、例えば今日だけでしかも何時から何時まで限定のイベント!とかならまだ納得いく訳で。
キャラクター追加は期間限定じゃないから放課後でも出来る訳で…つまり。


「ほ…放課後まで待ちましょうよ!!」


と言う答えしか言えない。


「フッ悪いな後輩。ここで出席日数がギリギリになろうと、赤点を取りに取って留年しようと…俺は俺の道を行く」

「いや留年はしちゃダメですって!」

「すまない後輩…あばよ」


しかし、私の説得虚しく先輩はゲーセンへと向かうのだった……。


「モミジそこ退いて」

「え?」

「ギャアッ!!」


と、思ったら小鳥遊君が投げたバケツによってそれは阻止されたみたい。
この距離から全力で投げられたら痛い、と言うか危ないよね…。
気絶した先輩はタナカ先生が保健室へ運んでいった。


「小鳥遊君随分遠慮なくやったけどあの先輩と知り合いなの?」

「中学ん時からあいつが先輩やってるけど馬鹿過ぎて先輩とは思わない。あと熱いしうるせえ」

「…えっと、何か先輩…可哀想だね!」

「全然。あ、多分放課後にあいつ来るからモミジに名前教えておくか。朱館 達毅(あけかた たつき)。ばかとでも呼べば良いよ」


それだけ言うと小鳥遊君は席に戻って突っ伏してしまう。
名前が分かったのは良いけど小鳥遊君、先輩の事嫌いなのかな?
それに放課後に来るって、もしかして喧嘩でもするのだろうか。


「…とにかく授業の準備しよう。…多分大丈夫だよね」

「平気だろ…あー、はらへったし眠い……」




放課後、小鳥遊君の言った通り復活した朱館先輩がやってきた。
内容は、バケツをぶつけた事は一緒にゲーセン行く事で水に流す。
喧嘩するのかと思っていた私の心配も杞憂だったみたい。


「バケツだけに水に」

「あー、あー、その先言わなくて良いわ。言ったら二度とお前とゲーセン行かねえ」

「おう、黙るわ…」

「先輩もう体は平気なんですか?」

「ん?おお!さっきの後輩!バッチリだぜ!そうだ、お前も一緒に行くか!」

「え」

「あーあ…話しかけるから」


…私も一緒に行く事に。
まあ、先輩明るくて楽しそうだし良いか!
了解の返事をすると先輩は先に行ってる!とテンション高く走っていった。





(ああー!何だこのトラップ!くっそ!)(いつもその罠かかってんだろ覚えろ)(た、小鳥遊君先輩には優しくね!)



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