河原のおじさん
最近近所の河原に謎のおじさんがいる。
見た目は二十代だけど、何でかおじさん。
アイリスちゃんに話したら、昼間からそんな所にいるのは大抵ニートでホームレスのクズだから近付いては駄目ですよ。何て言ってた。
凄い言い様だなあ。
そんな話をしたのは、昨日なんだけど。
「ど、どうしよう」
「はあー、枕…枕気持ちよくておじさん夢心地……」
そのおじさんに何でか抱きつかれています。
いつもは座ってお酒を飲んでたから、倒れてるのかと勘違いして近付いたら寝てただけだったみたい。
それで、寝惚けてかこんな事に…。
「あの、おじさん。おじさん」
「おなかいっぱいだー…」
うーん、寝言がベタだなあ。
誰かに見られたら困る気がするし、このままじゃ駄目だよね。
特に光咲ちゃんやアイリスちゃんの場合どんな事になるか…。
けど、そう思うと本当にそうなってしまうもの。
「センパイイイイイイイイイイ!!!!」
ほら、上空から光咲ちゃん。
凄い勢いでおじさんに飛び蹴りをする。
「いってええええええ!!!!」と叫びながら、思いきり吹っ飛ぶおじさん。
だ、大丈夫かな…。と言うか光咲ちゃん普通の人間なのに、すっごく強いね…。
「お、おじさん…何かした……?」
「このヘンタイ!ヘンタイ!!ヘンタイ!!!」
「初対面の女の子から変態扱い!?三連呼で!?どう言う事なの!?」
「よくもセンパイの純潔をおおおおおお…」
「いや、光咲ちゃん何もされてないから!」
光咲ちゃん、私の事心配してくれるのは良いけど初対面の人に厳しいからなあ。
ここは頑張って誤解を解いてあげないと!最悪の場合おじさんが死んじゃうかも知れない!
………とは言っても、私の話を聞いてくれるかどうか。
「お困りですか、クレハちゃん」
「うわあ!?ひ、緋桐さん」
考えてると、いきなりひょこっと背後から緋桐さんが出てきた。
この人はどこから来るのか本当に分からない。
うーん、不安はあるけど、私よりこう言うの得意そうだし、取り敢えず相談した方が良いかな…?
「おじさん、何もしてないんだけど光咲ちゃんが誤解しちゃって」
「成る程。それはおじさんも災難ですねえ。…君はその誤解を解いてあげたいんですか?」
「うん…っ!」
おお!こ、この流れはもしかしたら助けてくれるかも知れない!
そうだよね、緋桐さんも心の底から悪魔な訳ないよね!
ここは遠回しにでなく素直にお願いしてみよう!
「あの!緋桐さん良かったら光咲ちゃんに説得をお願いしたいです…!」
「良いですよ、暇だし」
そして、まさかの快諾!
良かった、これでおじさんも助か
「光咲ちゃん、そのおじさんは初対面の女子高生に突然抱きつき後輩に蹴り飛ばされても言い訳をして逃げる様な駄目人間なので、思う存分ボコボコにしてください」
ってええええええええええ!?!!???!!
緋桐さん違う!違うの!それだとおじさんが!おじさんの命が!
「よし、そう言う事だ変態…あたしは今からあんたを一週間は寝たきりになる程痛めつける」
「いや!ちょっと待って!違う!おじさん本当に違」
「問答無用!!」
「…誰かおじさんを助けてえええ!!」
………………。
その日、河原には悲鳴が響いた。
あの後聞いたけど、緋桐さんとおじさんは知り合いだったみたい。
な、何で助けてあげなかったんだろう…。
光咲ちゃんは、落ち着いた頃に私が話したら分かってくれて、おじさんにぺこぺこと謝ってた。
ボロボロだったけど笑って許してくれたし、おじさんいい人なのかも。
取り敢えずお詫びに今度お菓子でも持って行こう。
皆で食べて、話をすればきっと仲良くなれる。おじさんの事も知ってみたいし、楽しみだなあ…うん。
(ほんっとーに!すいませんでした!!)(いや、誤解してたなら仕方ないから良いよ。おじさん的には緋桐君が許せないからね)(え、俺ですか?酷いなあ)
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