エイプリルフール(ディト葵)
4月1日、エイプリルフール。
それは嘘を吐いても良い日。
嘘とは言え好きな人を嫌いと言うのは、心が痛むけれど…他に思い浮かぶ嘘もないもので、試しに言ってみる。
「ねえねえ、言おうと思ってたんだけど、私透君の事大嫌いなんだ」
「へえ、俺もお前の事大嫌いだよ」
「そうなんだ」
「………」
「「本当は大好きなクセに」」
言ってみた。
サラリと返された。
言葉が被った。
いつも無表情な彼が、クスリと笑う。
そして、こう聞いてきた。
「俺の事どれぐらい嫌い?」
「怒りで死んじゃいそうな程嫌い!」
「へえ、じゃあ嬉しさで死にそうな程好きなんだな」
「……うん。透君は?」
「あ?まあ…思わず殺したくなる程嫌い」
「思わず殺したくなっちゃう程好きなんだ!」
ひどい事を言っているのに、何だか楽しい。
嘘を吐いてる筈なのに、こんなに素直に好きとか言ったり言われたの初めて。
あ、でも…そうだ、昔も透君に嫌いって言われた事あったんだ。
その時はエイプリルフールを知らなくて信じちゃって、悲しかったけど「嘘に決まってるだろ」なんて言われたんだっけ。
その後に「大好きだよ」って。
「何だ、随分楽しそうだな」
「透君もね」
エイプリルフールは、透君が素直になってくれる素敵な日だ。
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