茉莉子2
 


「はい、茉莉子にプレゼントだよ」


そう主から手渡されたのは、犬のぬいぐるみだった。
…かなり大きい。
座りポーズだと言うのに、少し高めに、しっかり抱えておかないと床に足がつきそうだ。
自分と同じぐらいの大きさかも知れない。


「あ…ありがとう、主。大事にする」

「うん、茉莉子が嬉しいと僕も嬉しいなあ」


まあ、ぬいぐるみは好きなので大きさを除けば良いのだが。
それに例えいらない物だとしても、そう言った雰囲気を少しでも出すと彼はすぐ機嫌を損ねるので元々選択肢はない。





「…どこに置こう」


部屋をぐるりと見渡す。
以前も何回かぬいぐるみをもらった事はある。
しかし、今回は棚の上等に置ける様な大きさではない。
ああ…抱っこをして寝たらかなり気持ち良さそうだ。
そんな事も思ったが、ベッドもそこまで広くない。
恐らく自分かぬいぐるみがベッドから落ちるだろう。
部屋の隅は置いたら埃が溜まりそうだ。
この大きさだと手入れは相当大変に違いない。
部屋自体の広さは問題ないのに、こんなにも悩む事になるとは。
無理だと言う事は分かっているのに、一度考えてしまった抱き枕案は未だに頭の中にあるし。
ここはやはりどうにかしても抱き枕にしたいところ。
もらったプレゼントの為に、更に物をねだるのは非常に申し訳なくはあるが…。


「大きいベッド、用意してもらおう」


物を作る事は好きな人なので、多分大丈夫だろう。
ぬいぐるみを大事にしたいと言う事をしっかりアピールすれば怒りはしない筈だ。
…取り敢えず今は寝ないのでぬいぐるみに場所を貸す。
改めて見てみると、やはり大きい。
ベッド分も追加され、今は自分よりも大きい。
ふわふわとして可愛いのに、どこか威圧感を感じる状況。
でも、その柔らかい体に思いきり飛び込んでみたい。
試しに軽く手を置いただけでも、その柔らかさに吸い込まれていく。
ああ、早く抱き枕にしたいものだ。


「ベッド、用意してもらえるか聞いてくる」


もふもふと少し堪能したあと、交渉をしに部屋を後にした。





(え、ぬいぐるみを抱いて寝たいからベッドを大きくしたい?別に良いけど)(本当?ありがとう主)(君が言うなら何でもしてあげるさ(もう少し小さいサイズのぬいぐるみにすればよかった))



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