過去拍手文(2017年春)
 


天気は良い、けれどやる気が出ない。
春と言うのは厄介だ。
しかし逆らうのも何だか違うので、眠気に任せて意識を投げ出そうかと思っていた時、足下に白い毛玉がいる事に気付いた。
よく目を凝らしてみるとそれは白い猫で、気持ち良さそうにごろごろりと転がったり、時々足にすり寄ってくる。
あまり動物には好かれにくいので、珍しいなあと観察する事数分。
…飽きたので、首根っこを掴んで持ち上げてみても白猫はされるがままで大人しい。
白猫は自分と違って人間が好きな様だ。
慣れ方から考えても恐らく捨て猫だと思うのに、捨てられてもなお人間を信じる姿はあの子を思い起こさせた。


「そうだ、キミの事見せたらどんな反応するだろう」


猫を連れて行けば喜ぶか、きっとないだろうけど仲良くしたら嫉妬でもしてくれないかなーなんて。
猫を抱いたまま、あっちで桜を眺めているであろうあの子の元へ向かった。


――――――


にぼし片手に猫と一緒に花見をするなんて、中々面白い光景なのですぐ分かる。
予想通り彼女は桜を眺めていた。
ただ、ボクが近付くと猫達は蜘蛛の子を散らす様に逃げて行ってしまった。
やはり普段は懐かれない、がまあどうでも良い。


「ねえ見て、白い猫」


腕の中で大人しく抱えられる猫を見て彼女も驚いたようだ。
暫くじっと見ていたが、その後自分の事の様に嬉しそうに「良かった」と笑った。
普段から彼女以外と交流を持たないボクを心配していた様なので、猫とは言え仲が良い事が嬉しいらしい。
…やっぱり嫉妬とかはしてくれないかあ。
まあ、良いけどね。
彼女は嬉しそうだし、猫は嫌いじゃないので猫に好かれるのはボクも悪くない。
この猫も一緒に花見をして良いか聞くと、先程よりも更に嬉しそうな顔をした。



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