変わり者の昔話
昔から、何かと面倒な事を背負いやすい。
いや、自分自身はそうは思わないけど。周りから見たらそうだと言う話。
例えば人間達の様子を探る事だったり、例えばどこに落としたのか大まかな場所すらも分からない探し物だったり。
悪魔何て自分勝手なのも多いから、まあ、当然か。
でも自分は皆の役に立つのが好きだから、本当に面倒だなんて思わないんだけどねえ。
取り敢えず今日も、屋敷の前に子供が座り込んでいたり。
「バカなんじゃないですか?子どもとは言え簡単に家に上げて」
「人ん家のご飯そんなに食べといて!」
「すみません、大食いな時は大食いなもので」
…で、座り込んでいた子供を取り敢えず家に入れてあげたんだけど、何だろう。
まあ確かに無警戒過ぎたと思うよ?思うけどそんな風に言われるとは思ってなかったかなーって。
名前すら語らないし、顔は大きなフードですっぽりと隠れて全く見えないし、うん、あの、お手伝いさんにも怒られたんだけどさ。
でもこんな小さな子供を放置するのも何か嫌だったしさー…。
「そんなに気になるなら聞けばいいじゃないですか、僕の事」
「…聞いたら教えてくれるの?」
「教えないけど」
「駄目じゃないの!きいっ!」
「女性みたいな口調ですね。うーん…ここに来た理由なら。あの大きい書庫が気になって、初めは忍び込んでみようかと思ったんだけど見つかったら面倒な事になりそうだなーと悩んでたら中に入れてもらえて」
「待って待って、やだそんな事堂々と明かされてどうしたら良いのかお兄さん分かんない」
「でも食べ物を頂いたからにはそんな事出来ないですよねえ…そうだなあ……。よし、おじさん」
「お兄さんね!何?」
「僕をここに置いてみませんか」
……無断で入り込もうとした子供を?
いやいやいくら無警戒だったとは言えそれは流石に。
子供でも立派な悪魔だろうしねえ
「おじさんの仕事お手伝いしますよ。確かに僕は子どもだけど、ここにいる誰よりも役に立つ自信があります」
「えー、凄い自信満々で来られた。手伝ってくれるのはありがたいけど…うーん…でもなあ」
確かに素質はある子なのかも知れないけど…さっきからちょいちょい心読んでくるし。
でもお手伝いさんの視線も痛いし、凄い一言も喋らないのに視線で全部伝わってくる。
それにやっぱり子供だから、放り出すのも危ないだろうけど連れ歩くのもね。
うーん…困ったな。
「睡眠や食事なんて適当、床でも良い、金銭も求めない。何か問題が起きても自分で責任を取ります」
「…えっとねえ。何か欲しいのがあるの?ここに」
「いえ、ただ書庫の本を見せてほしい。求めるのはそれだけ。僕はね、知識が欲しいんです。人間の魂よりも、知識を食べて生きたい。本当に、それだけですよ」
「………じゃあ、ここの皆と仲良く出来るなら良いよ。あとお兄さんって呼んで欲しいな」
「それはまあ、そちらの人がそうしてくれるならだけど。ありがとうございますおじさん」
「あれおかしいな最後の方スルーなの?」
…うん、もう何でも良いや。
そんな感じで、今回ばかりは確かに少し面倒かも知れないなあと思ったけど、結局この子供を拾う事にした。
何か皆と仲良く出来なそうだけど、ここの皆は自分の事理解してくれてると思うから多分数日経てば大丈夫じゃないかな。
それに、フードの奥から一瞬覗いた紅い瞳が嬉しそうに見えたから、良いかなって思った。
明日また面倒事で大変だなーとか笑われそうだけど気にしない。
「ま、まあこれからよろしくね。ところで…そろそろ名前ぐらい教えてくれないかな。ここに住むんだから」
「え、僕名前何てないですよ」
「えっ!?」
…まずは名前を付けてあげる事から始めよう。
この子は、どんな名前なら喜んでくれるかなあ。
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